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No.338 (CA1939-CA1943) 2018.12.20

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No.338の 表紙 [1]と 奥付 [2](PDF)

CA1939 - 公共図書館の地域資料を活用した没年調査ソンのすすめ~福井県での事例から~ / 鷲山香織

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PDFファイル [3]

カレントアウェアネス
No.338 2018年12月20日

 

CA1939

 

 

公共図書館の地域資料を活用した没年調査ソンのすすめ
~福井県での事例から~

福井県立図書館:鷲山香織(わしやまかおり)

 

1. はじめに

 「没年調査ソン」は図書館資料等を使って著作者の没年をひたすら調べるイベントである(1)。2016 年、京都府で初めて開催され(E1847 [4]参照)、回を重ねている。福井県では京都府での取り組みを参考に、福井県立図書館(以下「当館」)を会場にして、2018年5月に初めて開催した。本稿では、没年調査ソンの概要と、福井県での成果を紹介することで、地域資料活用の裾野を広げたい多くの公共図書館に没年調査ソンの実施を勧めたい。
 

2. 没年調査ソンとは

 「没年調査ソン」は、著作者の没年調査とマラソンを掛け合わせた造語で、短時間で集中し、みんなで図書館資料等を用いて、著作者の没年を調べるワークショップである。2016年9月、京都府立図書館の自主学習グループ「ししょまろはん」(2)が企画し初めて開催され、その後、表のとおり開催されている。

 

表 没年調査ソンの開催一覧

開催日 イベント名 会場 没年判明数
2016年9月3日 没年調査ソンin京都 vol.1 京都府立図書館 16人
2017年9月23日 没年調査ソンin京都 vol.2 京都府立図書館 31人*
2018年5月26日 没年調査ソンin福井 福井県立図書館 32人
2018年9月22日 没年調査ソンin京都 vol.3 京都府立図書館 -

*後日1人追加。
出典:「 ししょまろはんラボ」ウェブサイト,「没年調査ソンin 福井(福井ウィキペディアタウンin足羽山前夜祭)」のFacebookページ

 

 さて、国立国会図書館は資料のデジタル化を進めているが、そのうち、著作権の保護期間が満了しているもの、または文化庁長官の裁定(E1785 [5]、CA1873 [6]参照)を受けたもの、著作権者の許諾を得たもの等、著作権処理の済んだ資料は、「国立国会図書館デジタルコレクション」(3)で本文の画像がインターネット公開されている。インターネット公開されていないものは、国立国会図書館の図書館向けデジタル化資料送信サービスの参加館内(CA1911 [7]参照)、または、国立国会図書館館内でのみ閲覧することができるが、この中には、著作者の没年が判明し著作権保護期間の満了が確認できれば、インターネット公開できるものが含まれている。国立国会図書館は、文化庁長官裁定を受けてインターネット公開を行っている資料について、著作権保護期間満了による公開や、著作権者の許諾による公開とできるよう、著作者/著作権者に関する公開調査を実施しており、公開調査対象の著作者は約4万9,000件(4)である。また、現在インターネット公開となっていない資料を公開するためにも担当係で著作者の没年調査を行っているとのことだが、とても調査しきれる分量ではないとのことである。一方、地域資料は国立国会図書館に所蔵がないものを、地域の図書館で所蔵していることも多い。そこで、地域にゆかりのある著作権者の没年調査に地域の図書館が協力することを、「ししょまろはん」は呼びかけている(5)。
 

3. 没年調査ソンin福井

 没年調査ソン in 福井は、当館・福井県文書館(以下「文書館」)・福井県ふるさと文学館主催の「福井ウィキペディアタウン in 足羽山」の前夜祭として、福井県庁職員の自主勉強会「チーム福井ウィキペディアタウン」の主催で開催した(6)。ウィキペディアタウン(CA1847 [8]参照)は、まち歩きをし、その際見たものを図書館等の資料で調べ、インターネット上のフリー百科事典Wikipediaに記事を作成するワークショップである。当館では、2017年11月に初めて開催し(7)、 2回目の開催であった。ウィキペディアタウンは調べることを通じて、参加者に図書館の機能を知ってもらう目的がある。図書館資料を紐解き、わかる楽しさ、知る喜びを体験することは、さらなる利用へとつながる。没年調査ソンにも、ウィキペディアタウンと同様に調べる楽しみを知るイベントになることを期待した。

 没年調査ソン in 福井は、翌日の福井ウィキペディアタウンの参加者を中心に図書館司書、学校司書、文書館職員、Wikipedia編集者など11人が参加した(8)。事前に国立国会図書館関西館電子図書館課著作権処理係(以下「著作権処理係」)から、調査対象として、福井県にゆかりのありそうな以下の2種類の著作者リストの提供を受けた。

  • 国立国会図書館の著作者情報公開調査ページから、肩書に「福井」または著作者の出版地に「福井」が入っている著者を抽出したリスト(以下「リスト1」。244人掲載。)
  • 国立国会図書館典拠データ検索・提供サービス(Web NDL Authorities:Web NDLA;E1198 [9]参照)(9)から、肩書に「福井」が入っている著者を抽出したリスト(以下「リスト2」。481人掲載。)

 2種類のリストを見ると、前者は、国立国会図書館が文化庁長官裁定を受けるための要件である名簿等での調査や外部機関への問い合わせ等を行っても没年が判明しなかった著作者であることもあり、初めて目にする人物ばかりで高い調査力が要ることがみてとれた。後者は基本的にまだ生没年調査を行っていない著作者であり、地元の筆者らから見ると簡単に没年が判明しそうな人物が散見され、難易度は低いと感じた。

 当日は、まず、「没年調査ソン in 京都 Vol.2」で著作権処理係の佐藤久美子氏が講師を務めたレクチャーのスライド「国立国会図書館の没年調査について」を用いて没年調査の方法や意義について学んだ。その後、当館の郷土資料コーナー、一般的な人名事典、当館ウェブサイトに公開されている人物文献索引「ふくいの人物について調べる」(10)等を使いながら各々の方法で没年調査を進めた。会場にはホワイトボードを用意し、没年が判明したら、ホワイトボードに書き出し、後で確認できるように根拠資料のコピーをとった。調査は2時間30分ほど行い、その後各々の調べ方と成果について共有する時間を持った。
 

図1 調査の様子

 

図2 没年が判明した著作者を書き出したホワイトボード

 

4. 没年の調べ方の共有から得られた知見

 調べ方は大きく分けると次の2通りであった。

  • 特定の人物を選び人名事典、書籍、インターネット等にて調査する方式(レファレンス方式)
  • 特定の人名事典、書籍等に掲載されている人物が調査対象リストに載っているかを調査する方式(照合方式)

 前者の方式は、リストから、各自の興味関心に基づき人物を選んで調査を進める。ある文書館職員は、リストにあった「石黒湖東」を元県知事・石黒務の雅号と推察し調査をはじめ、人名事典の記述により同定した。調査には、このほか、国立国会図書館デジタルコレクション、Googleブックス(11)、福井県文書館・図書館・ふるさと文学館デジタルアーカイブ(12)を検索し、調査の糸口を見つける参加者もあった。新聞記事データベース(以下「新聞記事DB」)や国立国会図書館のリサーチ・ナビに掲載の「目次データベース」(13)も有用である。当館では新聞記事DBは「日経テレコン」に限られるが、他の全国紙、地元紙等の新聞記事DBがあればもっと判明したはずだ。

 後者の方式は、郷土資料コーナーにある人名事典や人物が多数掲載された書籍から特定の1冊を用いて、その 1 冊の人名を、リスト2の人名と照合していく。ある参加者は、『福井県人物・人材情報リスト』(14)に掲載された人名を片っ端から黙々とリスト2と照合させ、多数の人物の没年を判明させた。なお、この方式では、リスト2に照合させる方法のほか、直接 Web NDLAにて、検索する方法をとった参加者もあった。リスト2は、Web NDLAから肩書に「福井」が含まれる著者を抽出したものであり、「福井」が含まれない著者は抽出されていない。データは書籍の奥付等を典拠としており、書籍には「福井」の記載はなくとも福井ゆかりの著作者もおり、Web NDLAを直接検索することで、より幅広い人物を対象に調べることができる。

 後者の方式は、地域資料になじみのない参加者であっても、没年をきっかけに、地域資料を読んでいき、いわばゲーム感覚で没年を見つける楽しさを体験できる。前者の方式で特定の人物を追求する場合、判明したときの喜びは大きいが、行き詰まる参加者も見受けられた。見つけることは純粋に楽しく、もっと見つけたいという気持ちが働く。特に調べることに不慣れな参加者には、後者の方式を体験できるよう主催者は準備したい。

 

5. 没年調査ソン in 福井の成果

 調査の結果、32人の没年が判明した。国立国会図書館による確認作業を経て、著作者情報公開調査のデータや典拠データに反映された。早いものでは即日反映されたものもあった。国立国会図書館デジタルコレクションでは、合計9点が保護期間満了として、パブリックドメイン(PD)に切り替えられ、その後追加調査したものも含め、Web NDLAへ37件が登録された。自分たちの調査の結果が国立国会図書館のデータに反映され、PDになるという目に見える成果が、参加者の喜びとなり、没年調査ソンが社会貢献につながる手応えを感じた。

 

6. おわりに

 公共図書館は、地域に関する資料を収集、保存、提供している。国立国会図書館、大学図書館、公共図書館など、図書館にはそれぞれの機能や役割があるが、公共図書館それぞれの館の特徴となる資料群は、地域資料である。図書館法第3条1項においても、公共図書館における地域資料(郷土資料)について、十分留意して収集し、一般公衆の利用に供すべき資料として挙げられている。地域資料は、地元の公共図書館こそが多く所蔵しており、インターネットにはない情報も数多い。一部の研究者や郷土史愛好家にはよく使われている地域資料を、もっと広く住民にアピールすることは公共図書館の日々の課題である。

 没年調査ソンは、公共図書館が収集している地域資料のアピールや、地域資料活用を体験する手段として、有効である。「ししょまろはん」は、一見地味な没年調査を、ネーミングもあいまって、参加型で楽しく魅力あるイベントに引き上げた。さらには、著作権の保護期間を確認するために没年調査を行うという側面から、著作権の周知にも使える。没年が判明することにより著作権の保護期間満了が確認されれば、インターネット公開になりオープンデータも増えるなど、一粒で幾度もおいしい企画である。本稿がより多くの公共図書館で没年調査ソンが広まる一助となれば幸いである。


(1)是住久美子. 没年調査ソン in 京都 Vol.1開催報告. ACADEMIC RESOURCE GUIDE. 2016, (611).
http://www.arg.ne.jp/node/8592 [10], (参照 2018-08-30).

(2)ししょまろはんラボ.
http://libmaro.kyoto.jp/ [11], (参照 2018-08-30).

(3)国立国会図書館. “国立国会図書館デジタルコレクション”.
http://dl.ndl.go.jp/ [12], (参照 2018-08-30).

(4)国立国会図書館. “著作者情報公開調査”. 国立国会図書館デジタルコレクション.
https://openinq.dl.ndl.go.jp/search [13], (参照 2018-08-30).
著作者情報公開調査の検索ページにおいて、何も入力せずに検索すると全件検索することができる。全件検索すると検索結果は4万9,430件(2018年8月30日現在)。

(5)是住久美子. 没年調査ソン in 京都 Vol.1開催報告. ACADEMIC RESOURCE GUIDE. 2016, (611).
http://www.arg.ne.jp/node/8592 [10], (参照 2018-08-30).
ししょまろはん. “Lodチャレンジ2017アイデア部門応募作品 没年調査ソン”. SlideShare.
https://www.slideshare.net/kumikokorezumi/lod2017 [14], (参照 2018-08-31).

(6)没年調査ソンin福井(福井ウィキペディアタウンin足羽山前夜祭).
https://www.facebook.com/events/388166654926400/ [15], (参照 2018-10-01).

(7)鷲山香織. “福井ウィキペディアタウンを開催して”.
ACADEMIC RESOURCE GUIDE. 2017, (673).
http://www.arg.ne.jp/node/9178 [16], (参照 2018-10-15).

(8)参加者のブログ記事に以下のものがある。
Asturio Cantabrio. “ 「没年調査ソンin福井」に参加する”. 振り返ればロバがいる. 2018-06-01.
http://ayc.hatenablog.com/entry/2018/06/01/170250 [17], (参照 2018-09-10).

(9)国立国会図書館. “国立国会図書館典拠データ検索・提供サービス(Web NDL Authorities)”.
https://id.ndl.go.jp/auth/ndla [18], (参照 2018-09-10).

(10)福井県立図書館. “ふくいの人物について調べる”. 福井県立図書館. https://www.library.pref.fukui.jp/winj/reference/search.do [19], (参照 2018-09-03).
URLは、2019年4月に変更予定。

(11)Google. “Googleブックス”.
https://books.google.co.jp/ [20], (参照 2018-09-10).

(12)“福井県文書館・図書館・ふるさと文学館デジタルアーカイブ”. 福井県文書館. http://www.archives.pref.fukui.jp/archive/search_keyword.do [21], (参照 2018-09-10).
URLは、2019年4月に変更予定。
文書館にある歴史的公文書、古文書等や当館保管の松平文庫等の目録を検索し、画像データがあれば、目録の検索結果からリンクして閲覧することができる。

(13)国立国会図書館. “目次データベース”. リサーチ・ナビ.
https://rnavi.ndl.go.jp/mokuji/ [22], (参照 2018-09-10).

(14)日外アソシエーツ編. 福井県人物・人材情報リスト2017. 日外アソシエーツ, 2016, 478p.

[受理:2018-10-31]

 


鷲山香織. 公共図書館の地域資料を活用した没年調査ソンのすすめ~福井県での事例から~. カレントアウェアネス. 2018, (338), CA1939, p. 2-4.
http://current.ndl.go.jp/ca1939 [23]
DOI:
https://doi.org/10.11501/11203355 [24]

Washiyama Kaori
“Botsunen Chosa-thon” (Public Event to Discover the Death Years of Local Writers Using Local Collections at Public Libraries)− How We Did This at Fukui Prefectural Library
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CA1940 - システムとしての国立国会図書館オンライン / 川瀬直人

  • 参照(3881)

PDFファイル [33]

カレントアウェアネス
No.338 2018年12月20日

 

CA1940

 

 

システムとしての国立国会図書館オンライン

電子情報部電子情報サービス課:川瀬直人(かわせなおと)

 

 国立国会図書館オンライン(NDLオンライン)は国立国会図書館蔵書検索・申込システム(NDL-OPAC)に代わる国立国会図書館(NDL)のサービスへの申込窓口として、2018年1月5日に稼働を開始した。これによってNDLのサービスや申込方法がどのように変わったかや、NDLオンラインの使い方については、小林や阿部による解説がある(1)(2)(3)。サービス面での解説はそちらに譲ることとし、本稿では、主にシステム的な観点からみたNDLオンラインのユーザインターフェースデザインやシステムの特徴について概説する。
 

ユーザインターフェースデザイン

 NDLオンラインは、そのデザインや機能の検討において従来の開発時よりも、図書館員ではなく、一般の利用者による利用を意識して開発している。そのため、全体としてはシンプルなデザインにするとともに、特に既にオンラインショップの利用等に慣れた多くの利用者にとっては、特に説明がなくとも利用可能なシステムとなることを意図している。画面は全体として配色をおさえたシンプルなデザインとなっている。このデザインは専門のウェブデザイナーが、ヒューリスティック評価(4)、過去の利用者アンケートの回答の分析等を行って、NDL-OPACの持っていた問題点を改善できるよう考えられたものである。例えば利用者が申し込むために押す必要があるボタンは、一つのエリアにまとめる、資料に対してどのような申込が可能かを予め表示して、ボタンのデザインで申込可否が判別できるようにし、申込ができない場合はその理由を表示する等の点でデザインによる改善を図っている。NDLオンライン全体のデザインコンセプトについては、小林(5)も参照いただきたい。ログインした後の画面上部には入館状態の表示に加え、現在の申込済み件数や申込カート、申込状況の確認画面へのリンクのある申込ステータスバー(図1)を設置し、現在の申込状況が常に確認しやすいようになっている。

 

図1 申込ステータスバー

 

 またスマートフォンからの利用に対応するため、レスポンシブウェブデザインを採用している。後述するようにCSSフレームワークには、AngularJS Material(6)を利用し、マテリアルデザイン(7)の考え方を取り入れている。スマートフォン版の画面でも、ほとんどの機能がPC版の画面と同様に利用できる。機械的なアクセスを除いた2018年7月のアクセス数を見ると、インターネットからのアクセスの内、約23%がスマートフォンからのアクセスであり、スマートフォンからの利用も進んでいることが見受けられる(8)。

 NDLオンラインのロゴに用いているアイコンも同じデザイナーによって提案されたものであり、東京本館の外観と本をめくる様子をモチーフにデザインされている(図2)。

 

図2 NDLオンラインのロゴとそのモチーフ

 

書誌データの収集と検索結果一覧での表示

 NDLオンラインで提供している書誌データは、NDLが収集した資料を整理する(申込や利用者情報を管理するシステムとはまた別の)内部の業務システムから出力される書誌データと、国立国会図書館デジタルコレクション(NDLデジタルコレクション)から収集したデータを用いている。これらは国立国会図書館サーチがそれぞれのシステムから収集したものをコピーして利用している。収集後の処理は国立国会図書館サーチとは別になるため、検索項目や検索時の挙動・表示などは国立国会図書館サーチとは異なっている。またリサーチ・ナビで提供している目次データベースに収録されている目次データもあわせて検索できるようにしている。これに加えてNDLで導入しているリンクリゾルバを活用して、NDLが契約している電子ジャーナルやオープンアクセスジャーナル等の書誌データも提供している。これによって契約ジャーナル等がNDLオンラインでの検索でヒットした場合にはリンクリゾルバを経由して利用することが可能となっている。このように従来の図書館資料(主として紙媒体)とデジタル化された資料を統合して提供している点も特徴の一つである。

 NDLの所蔵資料をデジタル化してNDLデジタルコレクションで提供しているものについては、業務システムとデジタルコレクションの双方にメタデータが存在する。NDLオンラインでは双方からデータを収集したうえで、それらをIDを用いて突合し、1対1で同じものと同定できた場合には、1件のデータに統合して見せている(書誌同定)(図3)。その場合、表示するアイコンも二つのアイコンを重ねたイメージとしている(図4)。

 

図3 同定された書誌情報の表示例

 

図4 冊子体のアイコン(左)とデジタル資料と同定された場合のアイコン(右)

 

 また電子ジャーナル書誌と冊子体のジャーナルの書誌を ISSN を用いて同定したり、雑誌記事索引とデジタルコレクション収録の目次情報との同定を行っている。これらについては、1件にまとめるのではなく、インデントをつけてまとまりのあるグループであることがわかるように表示している(図5)。(インデントをつけた表示は適合度順の場合のみとなっている。)

 こうした機能は、単に紙資料とデジタル資料を統合して検索・提供するだけでなく、できるだけわかりやすく短い手順でデジタル化された資料にナビゲートするために考えられたものである。

 NDLが作成した書誌データとNDLデジタルコレクションから収集するデータは週末を除いた日次での更新となっている。目次データや契約電子ジャーナル等の書誌データは必要に応じて更新が可能となっており、現在は年3・4回程度の頻度で更新を行っている。契約電子ジャーナル等のデータは更新の都度、全件を最新の情報に入れ替えるという運用となっている。

 

図5 インデントによるグループ表示例

 

書誌詳細画面のデザイン

 検索結果一覧から書誌詳細画面(図6)に遷移すると、画面上部に書誌データ、画面下部に当該の資料に関する所蔵一覧(アイテム情報)を表示している。書誌データは開閉式になっており、主要な項目のみをデフォルトで表示するようになっている。これはデザイン検討の結果であり、資料を特定し申し込むという用途においては、詳細な書誌データまで必要になる場合は少なく、所蔵一覧を確認しやすくする方が利用者の利便性に資するという考えによる。

 

図6 書誌詳細画面

 

 各種の申込は、所蔵一覧に表示される各アイテム情報を指定したうえで、提示されている申込メニューを選択して申込カートに一時保存して、申し込むことになる。NDL-OPACが1件ずつしか申込を行うことが出来なかったのに対し、NDLオンラインでは申込カートを使うことで、申込カートにアイテム情報を保存し、申込メニューごとにまとめて申し込むことを可能としている(図7)。このため、検索から申込の完了までを都度繰り返すのではなく、検索の結果申し込みたいものを申込カートに保存しておき、最後に申込カートから、申込件数の上限を超えない範囲でまとめて申込を行うことで、申込に関する操作の省力化を図ることができる。また申込カートへの保存まではいつでも可能であるため、来館前に検索・カートに保存して準備を行っておくことで、来館してから(閲覧等の)申込を迅速に行うことができるし、申込を完了させるまでの時間のない時でも申込カートへの保存を使うことで作業を容易に再開することが可能である。

 

図7 申込カート画面

 

システムアーキテクチャ

 NDLオンラインはJavaScriptを用いて構築されたSPA(Single Page Application)である(9)。SPAは従来のウェブページと異なり画面全体が遷移するのではなく、一枚のHTML上で画面の一部を書き換えることで画面を更新している。これによってパフォーマンスの向上やユーザエクスペリエンスの改善、開発コストの低減などを図っている。そのため画面描画や動作にはクライアント側の処理能力、特にブラウザのJavaScriptエンジンの処理能力が大きく影響しており、Internet ExplorerよりもFirefoxやGoogle Chromeを使う方が処理速度の観点からは適している。JavaScriptの開発フレームワークとしてはAngularJS(10)を採用している。CSSフレームワークもそれに合わせAngularJS Material(11)を用いている。また最近の動向を踏まえ、常時SSL化を実現している。

 書誌詳細画面(図6)で表示されるデータの内、書誌データは前述した通り、内部の業務システムで作成した書誌データをNDLオンラインに取り込み、検索・表示に用いているが、アイテム情報はNDLオンラインでは保持していない。アイテム情報や利用者の情報は、申込を処理する別の業務システムが保持しており、NDLオンラインは都度その業務システムのAPIに対しリクエストを投げることで、当該の資料に対して可能な申込メニュー、資料の状態や資料が利用中であるかどうか、ログインしている利用者の種別、入館状態などの情報を取得し、それぞれの状態に応じて申込メニューの表示やボタンの押下可否を制御している。例えば、閲覧申込はNDL館内で資料を出納し閲覧するための申込であるため、申込カートに保存しておくことは可能だが、入館した状態にならなければ申込はできない。NDLオンラインの画面上では、入館していない状態では(申込カート上の)閲覧申込ボタンは表示されているが押下できない(グレーアウトされている)状態になっており、それを見るだけで、館外からは閲覧申込は行えないことが直感的に理解できるようになっている。入館してから申込カートにアクセスすると、ボタンは押下可能となっており、申込手続きを進めることができる。申込が出来ない状態でもボタンを表示し、押下できない状態にする仕様となっているのは、その利用者・資料にとって利用できるメニューに何があるのかを予め提示することで、条件が揃えば利用可能となるサービスにどんなものがあるのかの全体像を、利用者に示すことを意図したデザイン上の工夫である。

 また、利用者のパスワードや認証、利用者情報の変更等も同様に内部の業務システムで管理されており(12)、APIを介して実現している。新規のインターネット限定利用者登録の登録時や、パスワードの変更時には確認のためのメールが送信されるが、このメール送信も NDLオンラインではなく、内部の業務システムが担っている。一方で、利用者が認証済みかどうかの情報については、NDLオンラインだけではなく、国立国会図書館サーチ、NDL内の利用者用端末の3者の間で共有されるようになっている。このため、来館した利用者が、利用者用端末に利用者カードを置いて端末にログインを行い、その端末のブラウザでNDLオンラインにアクセスすると、NDLオンラインでもログインした状態となる。

 従来のNDL-OPACが、統合図書館パッケージシステム(13)の一部として、全てを統合した一つのシステムの一機能であったのに対し、NDLオンラインは資料の検索と表示、申込カートまでを管理するシステムとなっている。別のシステムとAPIで連携することで、認証や申込、アイテム、利用者情報の変更等の機能を含めた全体のサービスを提供しているのが、特徴の一つである。図8はNDLオンラインとその他のシステムとの関係を概略として示したものである。

 

図8 システム間連携概要図

 

検索機能

 検索はオープンソースの検索エンジンであるApache Solr(14)をSolrCloudと呼ばれるクラスタリング構成で構築して行っている。一部の項目を除いて、形態素解析を用いたインデクスとn-gram(bi-gram)を用いたインデクスの両方を用意して使っている。また完全一致検索に使うためのインデクスも別に持っている。詳細検索画面をみるとわかるように、資料群で共通の検索項目の他、各資料群に独自の検索項目(例えば「地図」における「縮尺」、「博士論文」における「授与大学」等)がある。こうした多岐にわたる検索項目に対応した多数のインデクスを持っている。そのため、例えば簡易検索のように多数の検索項目を対象とする場合、単純に検索式を構築すると、多数のインデクスに対してOR検索を行う必要があるため、パフォーマンスの低下が懸念される。そこで、項目ごとのインデクスを集約したインデクスを作成し、それを検索に用いることでパフォーマンスの向上を図っている。

 例えば、タイトルという検索項目には本タイトルの他、タイトルよみ、部編名、部編名よみ、シリーズタイトル、シリーズタイトルよみ、内容細目、内容細目よみ等の多くのデータ項目が検索対象に含まれている。これらのそれぞれに形態素解析のインデクス、n-gramインデクス、また一部では完全一致用のインデクスも作成している。これを形態素解析のインデクス、n-gramインデクス、完全一致用インデクスの3つに集約したインデクスを作り、タイトルの検索ではこの3つのインデクスだけを見に行くことで、多数のデータ項目に対するOR検索を行うことによるパフォーマンスの劣化を防いでいる。

 いずれにしても、かなり多くの検索項目を簡易検索で検索可能となるように設定しており、多くの場合は詳細検索の項目を意識することなく、簡易検索のキーワード欄で検索し、必要に応じてファセットで絞り込んでいく使い方が可能である。

 

おわりに

 NDLオンラインは、資料の検索からサービスの申込までのインターフェースを担う、NDLにとっては最も重要なシステムである。今後もNDLのオンライン上の「顔」として活用が進むことを期待したい。

 

(1)小林芳幸. 新たな利用の窓口: 国立国会図書館オンライン. 参考書誌研究. 2018, (79), p. 3-14.
https://doi.org/10.11501/11064400 [34], (参照 2018-10-11).

(2)小林芳幸. 国立国会図書館オンライン, その新しいサービス. 図書館雑誌. 2018, 112(2), p. 96-97.

(3)阿部幸江. 国立国会図書館オンラインの目次データを使用した資料の検索方法. 参考書誌研究. 2018, (79), p. 15-59.
https://doi.org/10.11501/11064401 [35], (参照 2018-10-26).

(4)篠原稔和. ウェブ・ユーザビリティテスティングの実際. 情報の科学と技術. 2004, 54(8), p. 398-406.
https://doi.org/10.18919/jkg.54.8_398 [36], (参照2018-10-11).

(5)小林芳幸. 新たな利用の窓口: 国立国会図書館オンライン. 参考書誌研究. 2018, (79), p. 3-14.
https://doi.org/10.11501/11064400 [34], (参照 2018-10-11).

(6)AngularJS Material.
https://material.angularjs.org/ [37], (accessed 2018-09-20).

(7)2014年にGoogleが発表した、ユーザエクスペリエンスデザインに関する考え方。フラットデザインに対して、影や奥行、質量を取り入れることで利用者の操作性の改善を図っている。
“Material Design”. Google.
https://material.io/design/introduction/ [38], (accessed 2018-10-18).

(8)なおアクセス数は Logstash、Filebeat、Elasticsearch、Kibanaといったツールを用いて集計され、業務統計として数値が取得できるようになっている。

(9)鈴村幸太郎 . Single Page Application(SPA) サーバーで画面生成しない 応答と操作性が向上 . 日経 systems. 2015, (261), p. 30-35.

(10)AngularJS.
https://angularjs.org/ [39], (accessed 2018-09-20).

(11)AngularJS Material.
https://material.angularjs.org/ [37], (accessed 2018-09-20).

(12)稼働時に、移行したログインパスワードが大文字になっている点について注意喚起が行われたが、NDLオンラインが大文字でパスワードを保持しているわけではなく、内部システムに移行前の統合図書館パッケージシステムが、大文字でパスワードを保存していたことが理由である。NDLオンラインと利用者情報を管理している内部システムでは、従前よりも厳しいパスワードポリシーを設定しており、パスワード変更時にはこのポリシーが適用される。
“お知らせ”. 国立国会図書館オンライン.
https://ndlonline.ndl.go.jp/#!/static/info#2131 [40], (参照 2018-09-20).

(13)“Aleph”. Ex Libris.
https://www.exlibrisgroup.com/products/aleph-integrated-library-system/ [41], (accessed 2018-09-20).

(14)Apache Solr.
http://lucene.apache.org/solr/ [42], (accessed 2018-09-20).

[受理:2018-10-26]

 


川瀬直人. システムとしての国立国会図書館オンライン. カレントアウェアネス. 2018, (338), CA1940, p. 5-9.
http://current.ndl.go.jp/ca1940 [43]
DOI:
https://doi.org/10.11501/11203356 [44]

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CA1941 - 日本図書館協会建築賞について / 植松貞夫

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カレントアウェアネス
No.338 2018年12月20日

 

CA1941

 

 

日本図書館協会建築賞について

公益社団法人日本図書館協会図書館施設委員会:植松貞夫(うえまつさだお)

 

 日本図書館協会建築賞(以下「図書館建築賞」)は、1984年に、優れた図書館建築を顕彰し、これを広く世に知らせることによって、日本の図書館建築の水準の向上に寄与することを意図して創設された。

 発案者である協会内の施設委員会(現図書館施設委員会)において、1983年に公募から審査までの方法等について取りまとめられ、理事会等の承認を得て「協会の賞」として発足した。1984年度の第1回以降、若干の変更を加えながら毎年継続して実施し、現在第35回の募集を行っている。

 建築に関する学協会・業界が設けている賞(E1829 [51]参照)は、デザインの美しさ、新規性や、建築物としての品質を評価するものであることから、建築の用途を問わないのが主である。その点、特定用途の建築物ないし建築空間のみを対象とし、ソフトとハードの両面から評価する図書館建築賞は、ユニークな存在である。なお、一般社団法人日本医療福祉建築協会は、1991年より同様の趣旨で医療福祉建築賞(当初は病院建築賞)を設けている(1)。
 

優れた図書館建築とは

 優れた図書館建築とは、応募要項においては「建築としての質はもとより、そこで展開されるサービスもよく行われていることが条件となる。つまり、器(建築)と中身(サービス)が調和し、いずれにおいても優れていることを意味する」と表現している(2)。それを実現するためには、発注者である図書館やその設置主体と、設計者とが共通目標に向け協調的な関係を築くことが欠かせない。そのため、賞は図書館と建築設計者の両方に与えられる。また、応募資格は、図書館及び機関等に付随する図書館(室)、資料室とし、館種は問わず、単独館・複合館の別や新築・増改築の別も問わないが、中身の評価を行うことから、公募の前年度末までに開館(翌年の実地視察までには最短でも1年以上経過)したものとしている。
 

選考方法

 図書館施設委員会(以下「親委員会」)のもとに設ける選考専門委員会が候補館を選考し、親委員会での審議、常務理事会の承認を経て決定される。選考専門委員会は、現在は、親委員会の図書館員またはその経験をもつ委員(ソフト)と建築を専門とする委員(ハード)が同数ずつ、及び公益社団法人日本建築家協会よりの委嘱委員1名で構成している。委嘱委員を加える理由は、専門的な視点からの評価を得るためであり、一方で、図書館建築に理解と興味をもつ建築家が増えていくことを期待するからである。委嘱期間は2年を基本としており、2年目には専門委員会主査を務める。賞創設以来、建築家協会からは副会長レベルの経験豊富な建築家が派遣されている。また、具体的な審査は、提出された書類に基づく第一次審査、一次合格館に対する複数委員での実地視察に基づき総合判定を行う第二次審査の二段階方式である。
 

選考基準に関する議論

 館種、規模、地域、運営方針等が一つ一つ異なる図書館に対し、さまざまな図書館観・建築観をもつ委員が評価に当たることから、審査基準については、最も議論が重ねられ、外部からの意見も集中している。創設からの約20年間は審査基準は非公開とし、賞創設時に決めた「図書館建築賞運用心得」(施設委員会内規、1985年12月16日)の該当部分を参照しつつ、総合的な判定を行うことを、毎年度の選考専門委員会で確認する方式であった。しかし、本賞が社会的にも認知され、受賞が有形無形の効用を生むに従い、審査基準を明確化し公開すべきとの意見が寄せられるようになった。親委員会では4度にわたり審査基準に関する見解を説明してきたが、2003年の常務理事会における意見を受けて検討した結果、「日本図書館協会建築賞の選考のための評価項目(申合せ)」を原案作成、試行の後2005年8月に公表し、第21回(2005年)から適用している(3)(4)。これは、選考基準・評価の考え方を表記した上で、「全体の構成・内容」「建築計画・スペース」「サービスの提供・利用」「特徴となるポイント、新しい提案・試み」の4視点の計13項目について詳細な評価要素を列挙したものと、評価採点表とからなる。以降は、各年度の選考専門委員会の発足時に、この申合せに則して評価を行うことを確認している。しかし、同一年度における他の応募館との比較や、受賞館が後に続く館の計画・設計の範となることから、図書館建築の水準も年々上がっていくため、それまでの受賞館との比較も選考の基準となる。従って、視点と項目は同じであっても、一律の基準を継続して点数化することは適切ではなく、相対的・総合的に判定している。

 そして、賞創設時から一貫して、顕彰された図書館の長所・短所を含む詳細な講評と、選考経過及び応募館全体への短評(これも常務理事会の承認事項)を毎年『図書館雑誌』で示すことで、審査の透明性を担保するとともに、新たに計画する図書館関係者にとって参考に資することを意図している(5)。
 

審査料の導入等応募要項の変更

 現地審査の交通費など選考経費確保のため、応募要項において、第18回(2002年)より「応募料(1作品につき5万円)を応募時に納入」とした。しかし、第一次審査で選外となる応募館からの徴収には異議が呈され、第28回(2012年)より、「第二次審査の対象館は審査料(前記同額)を納入」に改めた。審査料徴収には、本賞の目的、顕彰制度の趣旨に照らしての批判や、会計制度上応募料を支出できない館があり、応募館が減少する恐れがあるなど批判が寄せられたが、(1)前記の医療福祉建築賞を含め多くの建築賞は応募料を徴収している、(2)応募は設計者でもできる、(3)設計者では、受賞が設計競技などへの応募資格要件とされる事例が増加するなど、営業上の効果をもたらしていること、などから有料化は問題ないと認識している。とはいえ、2000年以降新設図書館数が減少傾向にあるとはいうものの、第17回(2001年)の計13館(公共図書館12館)から有料化開始の第18回は9館(同7館)と減少し、以降も応募館数は減少傾向にある。また、同じく第28回から、応募要項の公表段階で選考専門委員の氏名を明らかにしている。
 

応募館数と顕彰館数

 第1回より第34回(2018年)までの応募館の総数は416館(公共331、大学・短大71、その他(国立、学校、法人)14)であり、受賞館の総数は83館(応募数に対し20%)、内訳は公共62館(同18.7%)、大学・短大18館(25.4%)、その他3館(21.4%)である。なお、本賞は第10回(1994年)まで、全体的に優れている「優秀賞」と、多少の欠点はあっても特定の部分について奨励するに値するものについてその理由を付して顕彰する「特定賞」を選定していた。前記の受賞館には特定賞を含む。また、第11回以降は特定賞を廃し「建築賞」で統一している(6)。
 

近年の状況と課題

 35回を数えるに至り、本顕彰事業は定着したといえる状況にある。主な課題を挙げれば以下である。

(1)応募館の減少傾向

 2016年1年間で新たに建設された公共図書館が38館あるのに対し、応募館は9館と少ない(7)。第6回(1990年)から応募を待つだけでなく、会員からの推薦を呼び掛けているが、事例はごくわずかにとどまる。設計者には応募に熱心な者、そうでない者、賞の存在を知らない者があることから、周知方法に改善を要する。

(2)開館後の年数

 開館後1年以上を応募資格としているが、多くの場合、開館後1年間程度は活況が続くものであり、それが継続するかの判定は難しい。開館後の年数を延長すべしとの意見もある。

(3)施設整備への関与者の増加に伴うプロセスの変容

 市民参加によって案が練られていく例、首長部局主導で進行する例、コンサルタント会社、PFIや指定管理者予定事業者が先導する例など、計画・設計プロセスへの関与者が多様化している。図書館員と図書館長(候補者)の関与を重視する考え方も見直す必要があるといえる。

 筆者は、賞創設以来、くり返し選考専門委員を務めている。意欲と工夫に富む設計と運営の図書館を、深くかかわった人々から、直接説明を受けながら拝見できるのは委員の特権である。近年の応募館からは、取り巻く環境の変化を読み取ることができる。盛り込まれた創意や、新しいサービス、利用行動は、次のそして今後の図書館像を考える種である。読者各位には複数の受賞館の視察を推奨するとともに、大幅な増改築により一新された館、既存他用途施設を転用した館、全く新しい発想のもとで蘇った館など、多様な図書館の応募を待ちたい。

 

(1)“医療福祉建築賞”. 一般社団法人日本医療福祉建築協会.
https://www.jiha.jp/awards/architectureaward [52], (参照2018-10-16).

(2)“日本図書館協会 建築賞”. 日本図書館協会.
http://www.jla.or.jp/Default.aspx?TabId=699 [53], (参照2018-10-25).

(3)評価基準を明確にすべしとの意見に対し施設委員会では、以下の4つを発表している。
栗原嘉一郎. 日本図書館協会建築賞について. 現代の図書館. 1989, 27(3), p. 167-173.
関根達雄. 日本図書館協会建築賞における評価と最近の特徴. 図書館雑誌. 1994, 88(2), p. 100-102.
JLA施設委員会. 日本図書館協会建築賞の概要. 図書館雑誌. 1996, 90(8), p. 569-571.
JLA施設委員会. 日本図書館協会建築賞に関する評議員会での質疑について施設委員会の見解. 図書館雑誌. 2003, 97(1), p. 39-41.

(4)JLA施設委員会. 日本図書館協会建築賞の選考のための評価項目について. 図書館雑誌. 2005, 99(8), p. 519.
日本図書館協会施設委員会. 日本図書館協会「図書館建築賞」の評価項目について(申合せ). 図書館雑誌. 2005, 99(8), p. 520-521.

(5)選考経過、受賞館の講評などは、『図書館雑誌』毎年度8月号に掲載されている。また、次年度の応募要項は同じく8月号の折り込みにて公表している。

(6)第1回から第22回(2006年)までの受賞70館については作品集にまとめられている。
社団法人日本図書館協会施設委員会図書館建築図集編集委員会. 日本図書館協会建築賞作品集1985-2006. 社団法人日本図書館協会, 2007, 210p.

(7)植松貞夫. 図書館の施設と設備. 図書館年鑑2017. 2017, p. 113-116.

[受理:2018-11-07]

 


植松貞夫. 日本図書館協会建築賞について. カレントアウェアネス. 2018, (338), CA1941, p. 10-11.
http://current.ndl.go.jp/ca1941 [54]
DOI:
https://doi.org/10.11501/11203357 [55]

Uematsu Sadao
About the Japan Library Association Library Architecture Award

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図書館建築 [56]
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JLA(日本図書館協会) [57]

CA1942 - 動向レビュー:学校と公立図書館との複合施設 / 長澤 悟

PDFファイル [58]

カレントアウェアネス
No.338 2018年12月20日

 

CA1942

動向レビュー

 

学校と公立図書館との複合施設

株式会社教育環境研究所:長澤 悟(ながさわさとる)

 

1. 学校と地域の関り

 図書館と学校との複合について考えるに当たって、はじめに学校と地域の関りの変遷をたどってみたい。明治維新により近代学校がスタートした時、校舎建設は地域が担った。「おらが学校」とは「おらたちが作った学校」だったと言えるだろう。学校は単に教育施設という枠を超えて、地域の未来とともに捉えられてきた。学校が地域を支え、地域から頼られる存在となっているのは、日本がつくり上げてきた学校文化ということができる。

 戦後に目を転じると、学校施設の地域に対するあり方には年代による変遷がみられる。1954年に起きた都心の小学校内で女児が殺害されるという事件で管理責任が問われてから、学校は閉鎖化に向かうようになった。文部省(当時)も学校施設は学校教育目的にしぼって施設整備を進めた。これに対して1960年代から都市化が進むと、子どもの遊び場開放として屋外運動場の開放が始まり、1970年代になると勤労青少年の健全育成、社会教育と教育の連携を図るために体育館や校舎等の施設開放が見られるようになった。1970年代前半にコミュニティ形成が課題となり、コミュニティセンターという新たな建物種別が生まれたが、その動きとともに、学校施設の可能性が注目され、学校開放事業の先駆的な取組が始まった。当初は施設整備の遅れに対する間に合わせ策という捉え方もあったが、意義や効果が認められるようになり、1976年には文部省が社会体育の振興のため体育館施設開放事業を制度化するなど、学校施設の地域利用が積極的に行われるようになった。

 

2. 地域に開かれた学校図書館

 学校図書館法第4条第2項には「学校図書館は、その目的を達成するのに支障のない限度において、一般公衆に利用させることができる」とある。上記の動きの中で学校図書館の地域開放が始まった(1)。先駆的な例が、神戸市が1969年に学校公園構想と共に始めた市民図書室である。学校の図書室を生かして地域の図書室、勉強室をつくることとしたものである。1973年に設置された高倉台小学校は、ニュータウンの核となるよう学校と公民館を合築し、公民館の中心に学校図書館を配置している。直接利用できるようにその出入口は校門の外に顔を出し、図書館の管理者が置かれた。ラベルの色で学校図書と地域住民対象の図書を区分し、児童と住民利用者が一緒の空間で過ごす様子が見られた。兵庫県明石市では1972年以降、市のコミュニティセンター構想に基づき、中央公民館を中心に市内の全中学校にコミュニティセンター(通称コミセン)が設置された。これには体育館を重層化して1階部分に設けたものと、独立した建物としたものがあり、運営委員会が組織されて運営に当たった。その中に図書室が設けられている。1977年に東京都練馬区は学校開放を従来の遊びから知的教育の側面を加えて充実を図ることとした。そして、重要な文化施設の開放という観点から、児童・生徒を中心とした地域住民の余暇善用と情操育成、豊かな人間関係づくりを目的として図書館開放を始めている。1978年に札幌市、1980年には横浜市と、大都市で同様の事業が始まった。いずれも管理者、司書、相談員等を配置し、図書購入費が用意された。図書館整備の遅れに対応する面もあったが、意義も広く認められてスタートしたものである。

 しかし既存の学校図書館を利用する場合、管理区分を明確にするのが難しく、また、大人にとって魅力のある蔵書の構築、管理者だけでなく司書の配置の必要性、市の図書館ネットワークへの組み込み等が課題として指摘されるようになった。学校図書館の開放は校庭や体育館の開放と違い、単にスペースの利用だけではなく、本来の図書館機能を充実する必要があったのである。

 

3. 学校施設の変革と学校図書館

 戦後、RC造校舎の標準設計により画一化した学校建築は1970年代後半に変化を始め、1985年前後にそれは本格化する。戦後の量的整備が一段落し、次代を見据えた学校施設のあり方として、多様な教育方法に対応する教育空間、豊かな生活環境、地域に開かれた学校という3点から施設計画の目標が示された。

 学校図書館については、教育活動面から読書や学習の場としての拡充、学校生活の中での居場所として豊かな空間が求められた。また、地域利用や地域との連携という点から、配置や計画のあり方が問い直された。例えば最上階の廊下の突き当りにあって、目が届かないためにいつも鍵がかかっているようなそれまでの学校図書館の状態が見直され、学校の中心あるいは昇降口に面するなど移動動線上に置き、利用しやすく、常にその存在が意識されるようにすることが重視されるようになった。常に目の届く位置に開放的な図書ラウンジとして計画する例や、さらには学校全体を図書館と捉え、教室まわりのオープンスペースに図書を分散配置する例も現れた。これらを経て、司書の配置、図書の管理、地域開放等、総合的な観点から学校図書館を捉え直し、充実を図ることが意識されるようになった。

 

4. 地域の核となる学校づくりと学校図書館

 昭和から平成に移る1990年頃、高齢化、情報化の進行に対して生涯学習が目標とされ、そのための社会基盤整備が課題となった。学校も生涯学習機関の一つとされる中、文部省は「文教施設のインテリジェント化について−21世紀に向けた新たな学習環境の創造」(2)と題する調査研究報告書をまとめ、学校と他の文教施設との複合化を積極的に推し進めるようになった。その後、福祉施設との複合も含め、従来の学校建築のイメージを破った複合化の実例が相次いで誕生した。

 図書館については学社連携、学地連携さらには学社融合を目標に掲げ、公民館や地域図書館と積極的に複合する例や、子供たちの地域の中の居場所として学校図書館の開放や地域図書館との複合、融合の例が生まれた。これらの運営には司書の指導の下、地域の人々やPTAが図書館ボランティアとして活躍する例も見られる。

 

5. 学校と公立図書館の複合事例

 学校と図書館の連携や複合事例は、学校図書館開放、学校と図書室・図書館を含む公民館やコミュニティセンターとの複合・合築、学校と地域図書館との複合・合築というタイプに分けられる。また、学校図書館と地域図書館との機能連携や位置関係については、地域図書館の併設、平面的な隣接や断面的な重合、一体的空間とする融合というバリエーションが見られ、目的、運営、利用状況等に違いがある。

 

(1)学校図書館開放

 長野県浪合村立浪合小中学校(現阿智村立浪合小学校、1989年)は「村民全ての浪合学校」として、住民が検討を重ねて地域の誰もが利用できる学校づくりを目標として実現された。校舎は小学校、中学校、小中共用3棟からなり、共用棟には地域活動の場として音楽室、食堂、調理教室等が設けられ、その中央に小中交流の場ともなる図書館が置かれている。図書館は地域の人々の利用が想定され、一角には掘りごたつのある畳コーナーがあるなど、「みんなの学校」のシンボルともなるよう計画されている。

 愛知県旭町(現豊田市)立旭中学校(1996年)は町内の2校を1校に統合する計画である。各中学校区の人々が学校に足を運ぶ機会を用意することにより、統合校が双方にとって自分たちの学校という意識を持てるように施設計画がなされた。学校図書館はその中心施設として地域利用を想定して昇降口に面する位置に、学校の周囲の自然景観が見えるように設けられている。

 東京都青ヶ島村立青ヶ島小・中学校(1997年)は人口約200人の離島の学校改築計画である。校地は役場を含む公共施設群と道路を挟む位置にあり、道路をまたいだ役場側の一角に、地域利用を想定して特別教室・ランチルーム・学校図書館棟を建設し、学校図書館は道路に面して専用の出入口を持ち、村民の図書館として利用できるようにしている。

 一方、都心部の東京都武蔵野市立千川小学校(1997年)は、ホールと体育館からなる地域利用施設と向かい合う位置に、地域利用を想定して独立した出入口を持ち、広さを確保した学校図書館を設けている。

 また、福岡市立博多小学校(2001年)では、統合小学校、公民館、幼稚園が複合し、学校図書館は地域利用を想定した大空間として計画された。

 

(2)地域図書館と学校図書館との融合

 福岡県山田市(現嘉麻市)立下山田小学校(1999年)は、新たなまちづくりに向けて学校に本格的なホールを含むコミュニティ施設機能を持たせ、学童保育室から成る複合施設として計画することになった。基本構想策定委員会の下、5つの部会・小委員会を設け、幅広く地域住民、教職員、行政職員が一緒に議論して計画を立案した。学校の中心部に学校図書館を配置し、住民と子どもが触れ合う場として地域図書館機能を持たせ、司書が図書館の環境構成や利用の活性化の役割を担った。管理区分のため独立した出入口を設けている。

 山口県豊北町(現下関市)立豊北中学校(2005年)は、町の生涯学習の拠点として、学校全体が地域の人を迎え入れるたたずまいをもつ。学校の中心、昇降口の正面に広がる吹抜けのホールに中学校の図書館と市立図書館の分室である豊北図書室が融合して置かれている。図書館と特別教室や体育館を合わせた地域開放ゾーンと教室ゾーンとの間には明確な仕切りはないが、職員室、司書室から昇降口までのアプローチ路とホール全体が見渡せ、セキュリティを確保している。

 山口県田万川町(現萩市)立田万川中学校(2005年)は2校の統合計画である。地域の人々の集まりや活動の場となるよう計画され、地域ラウンジをもつ特別教室棟と教科教室棟とをつなぐ学校の中心部に吹抜けの図書館が学校図書館と融合して設けられている。2つの棟を結ぶ廊下が図書館上部を通り、教室棟とは明確に管理区分しながら、視覚的な一体感を持たせている。図書館は専用の出入口を持ち、司書が置かれる。

 東京都千代田区立昌平小学校(昌平童夢館、1996年)は都心にあって、学校図書館と一体の空間に、エリアを分けて地域利用のまちかど図書館を設けており、周辺で働くサラリーマンが昼休みに読書する姿が見られる。司書が全体の管理だけでなく、児童の対応も行い、学校図書館機能を高める役割を果たしている。

 

(3)地域図書館と学校図書館の隣接

 福島県西会津町立西会津中学校(2002年)は、教室棟の中央部から突き出た形で図書館棟を設け、1階を町立図書館、2階を学校図書館としている。一般利用者は1階のみ、中学生は全体が利用でき、学校図書館では、休日にも生徒が一人であるいは友達と一緒に学習したり読書したりする姿が見られる。

 青森県名川町(現南部町)立名川中学校(2005年)は、伝統芸能を鑑賞できるホールと町民図書館がほしいという旧町民の長年の悲願を、中学校の統合計画の際に、財政的にこれが最後のチャンスとして、複合化して実現したものである。地域開放ゾーンに面した1階に町民図書館、それを吹抜けから見下ろす2階に学校図書館を配置し、一体感を持たせながら管理区分を明確にし、司書が配置されている。

 埼玉県和光市立下新倉小学校(2016年)は新設小学校に児童館と図書館を複合する構想の下、教職員、PTA、市民に市立図書館の館長も加わったワークショップで複合のあり方や運営方法まで検討が重ねられた。図書館は和光市図書館下新倉分館として、校舎の中心となる2階に置かれた学校図書館と隣接して配置された。体育館、地域開放される特別教室、児童館とともに交流テラスを囲む一体感のある配置で、樹木や草花の散策路を通って専用入口に導かれる。小学校図書館とはガラス面で仕切られ、児童は直接利用もできる。

 

(4)公民館・地域図書館と学校図書館との複合・融合

 富山県利賀村(現南砺市)立利賀小学校・中学校(1998年)は、当時人口1,000人の村の拠点となるよう校舎と一体に公民館を複合した計画である。公民館図書室を公民館入口から教室ゾーンを通り抜けずに行けるように校舎の中に埋め込まれ、中学校のラーニングリソースセンターにもなっている。

 埼玉県志木市立志木小学校(2003年)は市が掲げる学社融合の教育を目指し、コミュニティ・センター(いろは遊学館)と地域図書館(いろは遊学図書館)が複合化され、教室棟と連続的な位置に管理区分を明確にして配置している。地域図書館は学校図書館の役割を兼ね、司書が学校時間内外とも児童の対応をしている。

 東京都立川市立第一小学校(2015年)は、別敷地にあり共に老朽化した学校と公民館の建て替えを学校敷地に複合化して計画したものである。道路を挟んだ敷地の一方に小学校、他方に公民館の研修室・ホール・管理室を置き、道路上空のブリッジでつないでいる。公民館にあった図書室を学校敷地側1階に学校図書館とエリアを分けながら一体に配置し、専用の出入口を持つ地域図書館とした。運用開始後、利用者からの声に応えて遮音のための間仕切りが設けられている。

 

(5)地域図書館と学校図書館との併設

 東京都調布市立調和小学校(1999年)は国内初のPFI事業による学校建設例である。地域利用される屋内運動場、温水プールと共に、学童保育用の施設、地域図書館が明確な管理区分のもとに複合化されている。

 

6. 複合化とセキュリティの確保

 「地域に開かれた学校」は、学校改革の主要テーマであった。その考え方や取組に冷水を浴びせたのが2001年6月の大阪教育大学附属池田小学校で起きた児童殺傷事件である。当初、開かれた学校が事件を招いたという批判や、高い塀で囲い、校門を施錠することが必要という意見も強かった。しかし、閉鎖的な学校環境は学校と地域の関係を分断してしまう。学校には開いて守るという学校の守り方がある。そもそも開かれた学校とは不審者が入りやすい無防備な施設という意味ではない。学校と地域の関りについて本来の理念、趣旨はしっかりと保った上で、学校ごと、地域ごとの施設も含めた防犯の仕組みを整え、地域と共に守ることが大切である(3)。防犯環境設計(CPTED)の3原則、すなわち第一に守る範囲すなわち警戒線を明確にし、第二にそこへの出入りをしっかり管理し、第三にその範囲全体に目が届くようにすることが基本となる。囲障は侵入しにくくするだけでなく、守る範囲を明確にするものである。目が届かないところには高い塀を設ける、錠をかける、防犯カメラを設置すること等が必要となる。警戒線は通常学校敷地境界となるが、校庭は開放し建物周囲あるいは建物に設定することも考えられる。それぞれ出入り管理を明確にし、その中にいる人が不審者でないことをお互いに確認しあうことが大切である。学校図書館の開放や学校と図書館を複合する場合にも、この原則に当てはめて考えればよい。司書のいることは最大の強味と言える。

 

7. 学校施設の複合計画の新たな課題と図書館の関係に向けて

(1)復興の核となる学校づくり

 学校施設は大災害が起こるたびに避難場所となり、地域の安全・安心のための最後の砦としての役割を果たしてきた。2011年の東日本大震災では学校自体が津波被害を受け、その復興が課題となった。新しい土地で地域そのものの復興が必要とされる中、地域づくりの核として期待されたのが学校である。多くの学校計画で地域の人々が日常的に、自由に立ち寄れる場として学校図書館が位置づけられている。岩手県大船渡市立赤崎小学校(2017年)、岩手県陸前高田市立高田東中学校(2016年)、宮城県東松島市立宮野森小学校(2016年)等は、屋外運動場や公道に面した場所に、独立性の感じられる姿で学校図書館が復興住宅地の顔となるよう配置されている。

 

(2)小中一貫教育と複合

 9年間を見通した小中一貫教育が課題となり、2016 年には9年制の義務教育学校が法制化された。小中一貫教育は地域ぐるみの教育、社会総がかりの教育を理念としており、施設一体型で地域施設と複合した計画が多く見られる。一例として、ニュータウンに建設された千葉県流山市立おおたかの森小・中学校(2015年)は地域の交流センター、こども図書館、学童保育所と複合し、こども図書館は学校図書館に併設する形で設けられている(E1829 [51]参照)。蔵書数1万冊程で、目の前を子どもが行き来するのが見えるので、就学前の幼児と親たちが学校という空間にごく自然に馴染む効果も期待されている。

 

(3)公共施設マネジメントと複合

 今日、学校施設・公共施設整備の最大の問題は、膨大な量の施設の老朽化対策である。財政的に厳しい状況の中でこれを進めるには、既存施設の長寿命化とともに、少子化を視野に入れ、地域生活を維持するための公共施設機能は維持しつつ施設総量を減らす公共施設マネジメントが課題となっている。新しい地域像を描き、学校を核とした複合施設のありようを地域ごとに描くことが求められる。

 

8. 地域の参加による計画プロセス

 学校施設の計画においては、地域の人々が参加する計画プロセスが定着してきた。本稿で紹介した学校と図書館の複合事例も、話し合いを重ねて実現されている。複合化は地域のための施設として、どこをどう使うか、使えるかということが検討課題となり、運営方法や施設管理も含め、地域の状況を踏まえて個々に答を見出す必要がある(4)。屋内運動場の地域利用は災害時の避難場所としての利用も含め、一般的だが、一方、校舎について要望が出され、あるいは思いつきやすいのが学校図書館の地域利用である。その要望に応えるために学校図書館の面積や設備の充実が図られる様子も見られる。しかし、本来の図書館機能を果たすためには、完成後の人的配置や運営体制まで含めて検討することが不可欠である。第 2 章で述べたように、初期の学校図書館開放が魅力を失ったのと同じ道をたどることのないよう、蔵書の充実、司書によるレファレンスサービス、図書館ネットワークへの位置づけ等が必要とされる。将来の地域利用を想定して計画しておくことも大切である。

 誰もが足を向けやすく、豊かな時間を過ごせる場として学校図書館開放、学校と地域図書館との複合は、今後、一層大きな課題となるだろう。司書配置、新規購入費用の確保、開館時間帯等の運営体制、単独施設では得にくいスペースの充実や交流の創出、安全確保のための管理区分、上下足の区分等の施設計画、図書館ネットワークへの位置づけ等、その意義と効果を高めるための検討が必要とされる。

 

(1)長澤悟. わが国における学校体育施設の開放<現状と課題>. 月刊体育施設. 1980, (111), p. 23-36.

(2)文教施設のインテリジェント化に関する調査研究協力者会議[編]. 文教施設のインテリジェント化について―21世紀に向けた新たな学習環境の創造. 文部省, 1990, 68p.

(3)学校施設の防犯対策について. 学校施設の安全管理に関する調査研究協力者会議, 2002, 30p.
http://www.mext.go.jp/a_menu/shisetu/shuppan/04091401.htm [59], (参照 2018-11-09).

(4)参考文献としては例えば次のようなものがある。
文部省. 学校開放のための施設・環境づくり. 文教施設協会, 1995, 75p.
文部省教育助成局. 子ども達の未来を拓く学校施設~地域の風がいきかう学校:学校週5日制時代の公立学校施設に関する調査研究協力者会議報告. 文部省教育助成局, 1999, 36p.
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Nagasawa Satoru
Complex Facilities with Schools and Public Libraries

  • 参照(3648)
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CA1943 - 動向レビュー:デジタルアーカイブコンテンツの児童・生徒向け教育への活用をめぐって:米国・欧州の動向を中心に / 古賀 崇

PDFファイル [70]

カレントアウェアネス
No.338 2018年12月20日

 

CA1943

動向レビュー

 

デジタルアーカイブコンテンツの児童・生徒向け教育への活用をめぐって:
米国・欧州の動向を中心に

天理大学人間学部総合教育研究センター(図書館司書課程):古賀 崇(こがたかし)

 

1. はじめに

 日本において、デジタルアーカイブを学校の児童・生徒向け教育に活用する取り組みはさまざまな形で見られるものの、個々の館やプロジェクトのレベルでの取り組みにとどまっている印象が強い(1)。一方、米国・欧州では、米国デジタル公共図書館(DPLA;CA1857 [71]参照)(2)、Europeana(CA1785 [72]、CA1863 [73]参照)(3)という、それぞれの包括的ポータルサイトにおいて、児童・生徒向け教育を体系的に展開しようとする取り組みが認められる。本稿では、日本の関係方面への参考として、こうした米国・欧州の取り組みを紹介したい。

 なお、米国では上記の取り組みの背景に、米国アーキビスト協会(SAA)などによる「一次資料を用いた、あるいは一次資料に関する教育(Teaching with/ about Primary Sources:TPS)」の推進活動が存在する。本稿ではTPSについても、最初に触れておきたい。本稿でいう一次資料は、出版のために編集される前段階の、当時の出来事をそのまま記録した、文書、書簡、写真、動画などを指す。

 また、本稿は2018年9月時点での動向をまとめたものだが、米国・欧州とも取り組みが活発で、これ以降も新たな動きが生じる可能性が高い。最新の動向、および、本稿に収録できなかった実践事例などについては、カレントアウェアネス・ポータルなどをご参照いただきたい。

 

2. 米国の動向

2.1. 一次資料を用いた、あるいは一次資料に関する教育(TPS)

 TPSについては、SAAが2010年より、「一次資料を用いた、あるいは一次資料利用に関する教育についての委員会(Teaching with/about Primary Sources Committee)」を設置し、TPSに関する実践記録などの文献リストをウェブ上で提供するなどの取り組みを行っている(4)。また、SAAは2016年にテキストブックを刊行し、TPSに関する米国での歴史的経緯や、実践事例などをまとめている(5)。この中には、米国議会図書館(LC)の「アメリカン・メモリー」をはじめとする、1990 年代からの先駆的なデジタルアーカイブ、あるいは「オンライン上の一次資料」が、学校教員にとってTPSを促す契機のひとつになった、との記述も見られる(6)(7)。このほか、米国大学・研究図書館協会(ACRL)や、K-12を含めた児童・生徒・学生を教える教員が関与する、TPSの事例集なども刊行されてきた(8)。なお、これらの動向については、鎌田の論稿もあわせてご参照いただきたい(9)。

 TPSに関する最近の到達点として、「一次資料リテラシーのためのガイドライン(Guidelines for Primary Source Literacy)」の策定がある(10)。これは、ACRLの貴重書・手稿部会(RBMS)とSAAの合同タスクフォースが策定に当たり、2018年にACRL・SAAの各理事会の承認により、両団体による公式なガイドラインと位置づけられた。このガイドラインは、大学生相手に仕事をする図書館員、アーキビスト、教員などを主な利用者として想定している一方、K-12の児童・生徒や一般市民も利用できるように柔軟に書かれている、としている。内容は「(1)序文」「(2)中核的思想」「(3)学習目標」「(4)付録」の4部構成をとり、(2)では分析・倫理・理論に関する概念と、実践上の留意点を、ガイドラインの基盤として挙げる。その上で、(3)では「概念化」「発見とアクセス」「読解、理解、要約」「解釈、分析、評価」「利用と[引用・参照としての]取り入れ」の5点にわたり、一次資料を用いる学習者にとっての学習目標を掲げている。なお、このガイドラインは、ACRLが2015年に策定した「高等教育のための情報リテラシーの枠組み」(CA1870 [74]参照)の理念の上に成り立っている、とも記している。

 

2.2. 米国デジタル公共図書館(DPLA)での教育活動

 2013年4月に公開されたDPLAは、教育諮問委員会(Education Advisory Commmittee)(11)が、「オンライン上の一次資料」の項目と教材・指導案を取りまとめて公開する「一次資料セット(Primary Source Sets)」(12)の構築・改訂に当たるほか、外部資金を受けつつ、教育活動を展開している(13)。

 「一次資料セット」は、2018年9月時点で141の項目を収録しており、各項目にはテーマに即したDPLA内の複数の一次資料と、Wikipediaを含めた外部の関連資料、そして指導案として質問項目や課題の事例、およびTPSのための留意点などが掲載されている。「一次資料セット」の対象時期は、米国建国に先立つ「アメリカ大陸の探検(Exploration of the Americas)」から、「1980年代の保守主義の高まり(Rise of Conservatism in the 1980s)」などの直近の事柄まで幅広く、また主題面でも政治・経済・社会のみならず文学・文化の領域をも対象としている。「1980年代の保守主義の高まり」の項目を例にとると(14)、レーガン政権期の戦略防衛構想(SDI)を記した政策文書や、当時の政権高官へのインタビューなどの動画、政権批判の風刺画などが一次資料として収録されている。また、この項目の指導案では、一次資料をもとに当時の外交政策、都市政策、薬物対策などを児童・生徒に考えてもらう質問・課題の例が提示されている。

 2018年9月には、DPLA内に「DPLA教育ガイド(Education Guide to DPLA)」のページが新設された(15)。ここでは、上述の「一次資料セット」のほか、オンライン展示、利用者がDPLAで発見したアイテムのリスト作成機能、低所得層の子どもを対象に電子書籍を提供するOpen eBooksなど、DPLAを児童・生徒向けの教育に活用するためのコンテンツや機能が紹介されている。

 

3. 欧州の動向:EuropeanaとHistoriana

 一方、2008年11月公開のβ版に端を発するEuropeanaはもともと、EUでの文化・文化遺産に関する政策やプロジェクトを基盤としつつ、欧州での図書館・文書館・博物館等がもつウェブ上のデジタルコンテンツを一括して検索できるようなしくみとして、構築・運営されてきた(CA1863 [73]参照)(16)。

 2017 年に入り、Europeanaは収録コンテンツの利用に関する重点領域を、学校教育から生涯教育までにわたる教育と定め、同年 3 月に教育活動に特化したウェブページ“Education”を、専門家向けサイト“Europeana Pro”の中に立ち上げた(17)。ここでの取り組みのひとつとして、教育利用のための Europeana利用ガイドの作成・公開が挙げられる(18)。本稿執筆時点で公開されている 2017 年版では、Europeanaの検索・利用方法の解説のほか、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスなど「再利用可能なコンテンツ」の探し方、出典表記の仕方の説明に分量を割いていることが特色と言える。またEuropeanaが提供するAPIの説明が、このガイドや、Europeana Pro内の教育ページに加えられている。ただし、米国でのTPSに相応する取り組みは、これらにおいて確認できない。このほか、フランスでのEuropeana活用のための「シナリオ」をまとめた報告書なども、このEuropeana Proの教育ページで紹介されている(19)。ただし総じて、Europeanaの直接の関心は、TPSのような取り組みよりも、API活用も含めた教材開発のほうに向けられていると、筆者は考える。

 TPSのような、デジタルアーカイブないし「オンラインの一次資料」を用いて「何を、いかに教えるか」を提示する取り組みは、Europeanaと協力関係を結びつつ、実際に教育に携わる人々やその団体に委ねられているのが、欧州の現状と言える。その一例が Historianaというウェブサイトであり(20)、これは Europeanaとの協力のもと、欧州歴史教育者協会(EUROCLIO)と、システム開発企業たるWebtic社(オランダ・アムステルダム)が運営主体となっている。

 Historiana は主に以下のようなコンテンツから構成されている。

  • 歴史的コンテンツ(Historical Content):Europeana を通じ欧州の各機関からアクセスできるデジタルアーカイブのコンテンツをトピックごとにまとめた項目や、第1次・第2次世界大戦、冷戦といった主題ごとにEuropeanaやWikimedia Commons上の画像等を用いつつ、歴史的事柄を解説した文章などが含まれる。
  • 教授と学習(Teaching & Learning):トピックごとの教材や指導案。DPLAの「一次資料セット」のように、テーマに対応する一次資料をもとに学習を進めるための指導案もあれば、外交問題など児童・生徒のロールプレイを通じて、歴史や交渉力を理解させるための指導案も見られる。
  • 資料の検索(Search Sources):Europeanaの検索機能のほか、Historianaと提携する図書館・博物館等からのデジタルアーカイブ資料の紹介、またそれぞれのデジタルアーカイブの検索機能を提供する。

 Historianaのウェブサイトでは、EUROCLIOがEuropeanaと協働して作成した「教員研修者向けガイド:歴史的思考力を高めるために、オンライン上のツールをいかに使うか(Teacher Training Guide: How to use online tools to promote historical thinking?)」も公開しており、HistorianaやEuropeanaを児童・生徒向けの歴史教育・学習に活用するための要点・実例や情報源、およびその基盤となる「高い質を伴う歴史教育のための基本的考え方」を提示している(21)。すなわち、「証拠に基づく討議」「歴史の多様性」「現状が過去(への認識)に影響を与えることの自覚」などの点が「基本的考え方」に含まれ、それがEUROCLIOの活動や、Historianaの内容に反映されている、と言えよう。

 

4. おわりに

 本稿は、DPLAを中心とする米国の取り組みと、Europeanaを中心とする欧州の取り組みを解説したが、教育面での運営方針や活動についてはそれぞれ対照的な姿勢を取っていることが確認できた。つまり、DPLAは運営の面で教育の専門家をまじえた諮問委員会を置き、TPSを意識した一次資料活用のための指導法まで自ら発信している。一方、Europeanaはコンテンツの権利に関する表示やAPIの構築も含め、自らをあくまで「教材などの新たなコンテンツを他の関係者や企業等が開発するためのインフラストラクチャー」と位置づけているようにうかがえる。

 このような、米国・欧州でのデジタルアーカイブの教育活用への取り組みや教材・指導案等の作成などの実践以上に、日本では米国のTPSや、EUROCLIOでの「高い質を伴う歴史教育のための基本的考え方」のような、「歴史資料となり得るものを教育・学習に活用するための基本的考え方や思想」に学ぶ面が多いはず、と筆者は考えたい。つまり、公文書管理をめぐる問題が頻発する日本の現状では、デジタル技術の活用以前に、一次資料や証拠の成り立ち・形状・出所から考えつつ学習を進める、という取り組みこそが、さまざまな人々との討論・交渉を進め、よりよい意思決定を行うために、必要となるはずである(22)。

※本稿は JSPS 科研費 JP16K00454 による成果の一部である。
 

(1)日本での例として下記を参照。
“社会科授業用資料リスト”. アジア歴史資料センター.
https://www.jacar.go.jp/siryolist/index.html [75], (参照2018-09-14).
“学校向けアーカイブズガイド”. 福井県文書館.
http://www.library-archives.pref.fukui.jp/?page_id=912 [76], (参照2018-09-14).

(2)Digital Public Library of America.
https://dp.la/ [77], (accessed 2018-09-14).

(3)Euroepana Collections.
https://www.europeana.eu/portal/en [78], (accessed 2018-09-14).

(4)“Teaching with Primary Sources – Bibliography”. Society of American Archivists.
https://www2.archivists.org/groups/reference-access-and-outreach-section/teaching-with-primary-sources-bibliography [79], (accessed 2018-09-14).

(5)Prom, Christopher J.; Hinchliffe, Lisa Janicke, eds. Teaching with Primary Sources. Society of American Archivists, 2016, 204p.

(6)Ibid. p. 43-45.

(7)米国議会図書館でもTPSを含めた学校教員向けの活動を行っており、2008年から2016年にかけて、Teaching with Primary Sources Journalと題する雑誌を15号まで発行した。
“Teachers”. Library of Congress.
http://www.loc.gov/teachers/ [80], (accessed 2018-09-14).

(8)例として下記を参照。
Mitchell, Eleanor, et al., eds. Past or Portal?: Enhancing Undergraduate Learning through Special Collections and Archives. Association of College and Research Libraries, 2012, 320p.
Bahde, Anne, et al., eds. Using Primary Sources: Hands-on Instructional Exercises. Libraries Unlimited, 2014, 170p.

(9)鎌田均. 一次資料の利用と情報リテラシー:米国大学におけるアーカイブ, 特殊資料コレクションの教育的役割から見て. 同志社図書館情報学. 2013, (23), p. 1-15.
https://doi.org/10.14988/pa.2017.0000014206 [81], (参照 2018-09-14).
鎌田均. 米国の高等教育におけるアーカイブズの教育活動.アーカイブズ学研究. 2016, (24), p. 86-91.

(10)“Guidelines for Primary Source Literacy”. Society of American Archivists.
https://www2.archivists.org/standards/guidelines-for-primary-source-literacy/ [82], (accessed 2018-09-14).

(11)“Education Advisory Committee”. DPLA Pro.
https://pro.dp.la/education/education-advisory-committee/ [83], (accessed 2018-09-14).

(12)“Primary Source Sets”. Digital Public Library of America.
https://dp.la/primary-source-sets/ [84], (accessed 2018-09-14).

(13)“Educational Uses”. DPLA Pro.
https://pro.dp.la/projects/educational-uses/ [85], (accessed 2018-09-14).

(14)“Rise of Conservatism in the 1980s”. Primary Source Sets, Digital Public Library of America.
https://dp.la/primary-source-sets/rise-of-conservatism-in-the-1980s/ [86], (accessed 2018-09-14).

(15)“The Education Guide to DPLA”. Digital Public Library of America.
https://dp.la/guides/the-education-guide-to-dpla/ [87], (accessed 2018-09-14).
下記もあわせて参照。
Gibson, Samantha. Teaching and Learning with DPLA. DPLA News, 2018-09-05.
https://dp.la/news/teaching-and-learning-with-dpla/ [88], (accessed 2018-09-14).

(16)Europeanaの概要や政策的背景を述べた例として、下記を参照。
菅野育子. “米国・欧州の政策と実践から見たMLA連携”. 図書館・博物館・文書館の連携. 日本図書館情報学会研究委員会編. 勉誠出版, 2010, p. 25-42.

(17)“Education”. Europeana Pro.
https://pro.europeana.eu/what-we-do/education [89], (accessed 2018-09-14).
下記もあわせて参照。
McNeilly, Nicole. “Help shape inspiring education: join us as we launch Europeana4Education!.” Europeana Pro, 2017-03-22.
https://pro.europeana.eu/post/help-shape-inspiring-education-join-us-as-we-launch-europeana4education [90], (accessed 2018-09-14).
Crespo, Isabel. “Europeana Education: bringing Europe’s cultural and scientific heritage to teachers, students and lifelong learners”. School Education Gateway, 2018-01-10.
https://www.schooleducationgateway.eu/en/pub/latest/news/europeana-education.htm [91], (accessed 2018-09-14).

(18)EUROPEANA4EDUCATION: A guide to using Europeana for education. Europeana Pro, 2017-03-13, 17p.
https://pro.europeana.eu/files/Europeana_Professional/Use_your_data/Europeanaforeducation/Resources/a-guide-to-using-europeana-for-education-march-2017.pdf [92], (accessed 2018-09-14).

(19)Crespo, Isabel. “Learning scenarios with Europeana content”. Europeana Pro. 2018-08-29.
https://pro.europeana.eu/post/french-learning-scenarios [93], (accessed 2018-09-14).

(20)Historiana.
https://historiana.eu [94], (accessed 2018-09-14).

(21)Stegers, Steven; Snelson, Helen. Teacher Training Guide: How to use online tools to promote historical thinking?. European Association of History Educators, n.d., 46p.
https://euroclio.eu/wp-content/uploads/2018/09/TeacherTraining Package-Europeana DSI3.docx [95], (accessed 2018-09-14).

(22)一次資料や証拠の重要性については、記録管理の国際標準ISO 15489-1「情報及びドキュメンテーション―記録管理―第1部:概念及び原理」(2001年制定、2016年改訂)が優れた記録管理の利点として掲げる「透明性及び責任説明の向上」「確かな情報に基づく意思決定」などとも結びつけて認識する必要がある、というのが筆者の考えである。なお、ISO 15489-1(改定前の物を含め)の意義については、例として下記を参照。
小谷允志. 文書と記録のはざまで:最良の文書・記録管理を求めて. 日外アソシエーツ, 2013, 334p.
中島康比古. 記録管理の国際標準ISO15489-1の改定について. アーカイブズ. 2016, (61).
http://www.archives.go.jp/publication/archives/no061/5131 [96],(参照 2018-09-14).

[受理:2018-10-29]

 


米国. デジタルアーカイブコンテンツの児童・生徒向け教育への活用をめぐって:米国・欧州の動向を中心に. カレントアウェアネス. 2018, (338), CA1943, p. 16-18.
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Koga Takashi
A Review on Educational Use of Digital Archives Contents for Students: Putting Emphasis on Current Activities in the US and EU

  • 参照(4171)
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米国 [100]
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[90] https://pro.europeana.eu/post/help-shape-inspiring-education-join-us-as-we-launch-europeana4education
[91] https://www.schooleducationgateway.eu/en/pub/latest/news/europeana-education.htm
[92] https://pro.europeana.eu/files/Europeana_Professional/Use_your_data/Europeanaforeducation/Resources/a-guide-to-using-europeana-for-education-march-2017.pdf
[93] https://pro.europeana.eu/post/french-learning-scenarios
[94] https://historiana.eu
[95] https://euroclio.eu/wp-content/uploads/2018/09/Teacher%20Training%20Package%20-%20Europeana%20DSI3.docx
[96] http://www.archives.go.jp/publication/archives/no061/5131
[97] http://current.ndl.go.jp/ca1943
[98] https://doi.org/10.11501/11203359
[99] http://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/363
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[101] http://current.ndl.go.jp/taxonomy/term/230