「語り部」が記憶する部族の系譜や伝承を記録し保存する取組(アフリカ):系図記録を収集・保存する米国の非営利団体FamilySearchによる事業(文献紹介)

2019年8月にギリシャのアテネで開催される第85回世界図書館情報会議(WLIC)・国際図書館連盟(IFLA)年次大会での発表資料として、系図記録を収集・保存する米国の非営利団体FamilySearchのブッシュ(Cherie Bush)氏・リンチ(Russell S. Lynch)氏による“Oral Genealogy in Africa: Preserving Critical Knowledge”と題する文献が公開されています。

アフリカの部族では、指名された「語り部」が、6世代から30世代前に及ぶ先祖の名前や部族の伝承を記憶し口承する伝統がありますが、「語り部」の高齢化、若者の離村、自然災害、戦争等により消失の恐れがあることから、FamilySearchでは、2004年から、人々が自身のルーツをたどり、また、研究者が検索できるようすることを目的に、アフリカにおいて、オーラル・ヒストリーの手法で系譜情報を記録化するプロジェクトを開始しました。

同プロジェクトでは、部族・村・氏族の長と交渉・調整し、150を超すアフリカの協力団体と連携して「語り部」を訪問し、記憶している系譜や伝承を記録化しています。

現在、15か国(アンゴラ、ベニン、カメルーン、コンゴ、コートジボワール、コンゴ民主共和国、ガーナ、ケニア、リベリア、ナイジェリア、シエラレオネ、南アフリカ、トーゴ、ウガンダ、ジンバブエ)で実施しており、2024年までに50万件以上のインタビューを実施し、1億9,000万件以上の系譜記録を作成する計画としています。

同プロジェクトでは、口承記録以外にも、系譜における重要資料である国勢調査・出生証明書・結婚証明書・死亡証明書等のデジタル化作業も、各国の政府・公文書館や教会と連携して実施しています。

Oral Genealogy in Africa: Preserving Critical Knowledge(IFLA Library)
http://library.ifla.org/id/eprint/2463

Oral Genealogy in Africa: Preserving Critical Knowledge [PDF:6ページ]
http://library.ifla.org/2463/1/271-bush-en.pdf

参考:
米国デジタル公共図書館とFamilySearchが連携協定を締結:FamilySearchのデジタルコレクションがDPLAから検索可能に
Posted 2016年6月23日
http://current.ndl.go.jp/node/31866

米国国立公文書館(NARA)、FamilySearch及びAncestry.comとのデジタル化の連携協定を更新
Posted 2015年10月15日
http://current.ndl.go.jp/node/29654

FamilySearch、4億6200万以上の記録と画像を追加したことを発表
Posted 2014年10月28日
http://current.ndl.go.jp/node/27313

OCLCとFamilySearchが系譜研究の向上にむけてデータ共有
Posted 2014年3月6日
http://current.ndl.go.jp/node/25645