AIがあなたの論文の草稿を書いてくれるソフトウェアがリリースされる 何がまずいのか?(記事紹介)

2017年11月9日付けのRetraction Watch記事で、フリーの電子研究ノートサービス”sciNote”に導入された、”Manuscript Writer”機能に関して取り上げられています。

”Manuscript Writer”は研究データ・結果等を登録すれば、AIが論文の「はじめに」部分等の草稿を作成してくれるという機能です。ただし、「考察」等のオリジナリティの高い部分は研究者自身が書かねばならず、作成できるのはデータや研究ノートから機械的に生成できる「手法」や「研究材料」等についてと、先行研究等を関連ワードから特定し、そのうちオープンアクセス文献等の内容をまとめることで生成される「はじめに」の部分のみになります。

Retraction Watchの記事ではsciNote社の広報のほか、ニューヨーク大学でジャーナリズムを研究しているCharles Seife教授など、このトピックに詳しいと考えられる研究者へのインタビューを掲載しています。Seife教授は一部で”paper mills”(製紙工場)と呼ばれる、論文をほとんど同じフォーマットで、用語のみ変更して機械的に生産する集団について調査していた経験を持ちます。

Seife教授は実際に使ったわけではないのでわからないとは前置きしつつも、「はじめに」を完全にオリジナルな形で執筆するのはAIには不可能であり、先行研究等を自動的にまとめるとすれば、剽窃や「製紙工場」と同じ問題が発生するのではないかと懸念を述べています。一方、sciNote社の広報はあくまで作成されるのは論文草稿であり、研究者自身が見直すことが前提であると述べています。

Newly released AI software writes papers for you — what could go wrong?(Retraction Watch、2017/11/9付け)
http://retractionwatch.com/2017/11/09/newly-released-ai-software-writes-papers-go-wrong/

sciNote
https://scinote.net/

参考:
CA1829 – 査読をめぐる新たな問題 / 佐藤 翔 カレントアウェアネス No.321 2014年9月20日
http://current.ndl.go.jp/ca1829

SpringerとIEEE、機械生成されたでたらめな論文120本以上をプラットフォームから削除
Posted 2014年2月25日
http://current.ndl.go.jp/node/25553

Springerらが自動生成論文を検出するオープンソースソフトウェアSciDetectを開発
Posted 2015年3月24日
http://current.ndl.go.jp/node/28213