薬物使用の場として利用される米国の公共図書館(記事紹介)

2016年9月10日付のAP通信で、米国の公共図書館における利用者の薬物の使用が取り上げられています。

バージニア州ノーフォーク公共図書館スローバー館のトイレ内で、ヘロインの過剰摂取で2016年2月に47歳の男性が死亡したほか、国内のいくつもの図書館のトイレ内で、利用者が薬物を使用し、駆けつけた警察官に意識を蘇生される例があったことが報じられています。また、ミシガン州のアナーバー地域図書館では、コカインを隠せないようにし、また取引の温床にもならないようにするため、トイレの天井を取り除くなどの対策を行ったと報じられています。その他、マサチューセッツ州ボストンの図書館では、職員や住民に対して過剰摂取をしないようにするトレーニングを行っているほか、薬物に使用する針を廃棄するボックスも備えているとのことです。

記事では、レストランや病院など他の施設内でも薬物使用の例はあるものの、無料で、開かれており、長く居ることが歓迎され、コミュニケーションをとる必要もない、という性質から、公共図書館では、特に問題が放置されてしまっているということが指摘されています。また、薬物使用者などへの対応については研修を受けることを勧奨すると同時に、警察やソーシャルワーカーと連携することが重要である、という米国図書館協会(ALA)会長のJulie Todaro氏の言葉を紹介しています。

Checking out: Drug users take advantage of public libraries(Associated Press, 2016/9/10)
http://bigstory.ap.org/article/c9d6cb8b60524af6a76d61a9368278da/checking-out-drug-users-take-advantage-public-libraries

Norfolk man dies after heroin overdose inside Slover Library(The Virginian-Pilot, 2016/2/26)
http://pilotonline.com/news/local/crime/norfolk-man-dies-after-heroin-overdose-inside-slover-library/article_166b23ad-824e-5a87-841b-394bc8937bd8.html

参考:
図書館に注射針?
Posted 2006年1月13日
http://current.ndl.go.jp/node/3364

不快な薬物検査に抗議して図書館ボランティアが激減(米国)
Posted 2006年10月26日
http://current.ndl.go.jp/node/4817

麻薬常習者の破壊に耐えかねて図書館のトイレを閉鎖(英国)
Posted 2007年6月29日
http://current.ndl.go.jp/node/6082

ドラッグやアルコール等の情報提供に特化した図書館が開館(チリ)
Posted 2011年10月17日
http://current.ndl.go.jp/node/19325

反ドラッグのための図書館設置 ペルー国立図書館と国家委員会が協力協定を結ぶ
Posted 2013年2月25日
http://current.ndl.go.jp/node/22965

CA1157 – 問題利用者への対処 / 長崎洋
カレントアウェアネス No.219 1997.11.20
http://current.ndl.go.jp/ca1157

CA1809 – 動向レビュー:ホームレスを含むすべての人々の社会的包摂と公共図書館 / 松井祐次郎
カレントアウェアネス No.318 2013年12月20日
http://current.ndl.go.jp/ca1809