Elsevier社、同社のオンラインでのピアレビュー方式について米国の特許を取得:EFFなどが否定的なコメント(記事紹介)

2016年8月30日、Elsevier社は、オンラインのピアレビューのシステム及び方式(Online peer review system and method)について、米国の特許(No. 9430468)を取得しました。2012年6月28日に申請していたものです。

これに対し、8月31日、米国・電子フロンティア財団(EFF)は、この特許は実際問題として効力を発揮することは無いであろうとし、「ばかげた特許」(Stupid Patent)としてブログで取りあげてコメントしています。

EFFは、なぜElsevierがピアレビューの方法について政府から特許を得ようと考えたかということについて、

(1)大学は、高いパッケージ購読料と論文を執筆する研究者、ピアレビューのレフェリーを行う研究者に給料を支払う必要があり、Elsevierのビジネスモデルは、さながら客が材料を持ちこんで自分で料理をしてお金を請求するレストランのようであった

(2)米国において、研究を助成する連邦機関に対してパブリックアクセス方針の制定を義務付けるFASTR法(Fair Access to Science and Technology Research Act)や、各大学でのオープンアクセス(OA)方針の策定

(3)(2)の情勢を受けて、Elsevierは出版をコントロールし、研究者に機関リポジトリでの著者原稿の共有を止めさせようとしている

などといった背景にふれ、バージニア大学図書館のBrandon Butler氏のツイートを紹介しながら、2016年5月に社会科学分野の主題リポジトリであるSSRN(Social Science Research Network)とともに、これはElsevierの新たな戦略であると論じています。

また、“The Chronicle of Higher Education”でも、このニュースを受けての人々のTwitter上の反応などに触れ、Elsevierがついに最終形態を表した:科学的なピアレビューを破壊するパテント・トロールであるといったツイートを取りあげています。さらに、Elsevierが、OA、オープンソースのジャーナルが同社と類似のピアレビューの方法を用いることができないようにすることが懸念される、という意見も紹介しています。

United States Patent: 9430468
http://patft.uspto.gov/netacgi/nph-Parser?Sect1=PTO1&Sect2=HITOFF&d=PALL&p=1&u=%2Fnetahtml%2FPTO%2Fsrchnum.htm&r=1&f=G&l=50&s1=9,430,468.PN.&OS=PN/9,430,468&RS=PN/9,430,468

Stupid Patent of the Month: Elsevier Patents Online Peer Review(EFF, 2016/8/31)
https://www.eff.org/deeplinks/2016/08/stupid-patent-month-elsevier-patents-online-peer-review

Elsevier’s New Patent for Online Peer Review Throws a Scare Into Open-Source Advocates(The Chronicle of Higher Education, 2016/9/1)
http://www.chronicle.com/article/Elsevier-s-New-Patent-for/237656?cid=trend_right

Twitter(bc_butler, 2016/8/30)
https://twitter.com/bc_butler/status/770659927618625536

参考:
米SPARCが、FASTR法案の米国議会への再提出について歓迎の意を表明
Posted 2015年3月20日
http://current.ndl.go.jp/node/28198

米下院にNSFなど連邦政府4機関にパブリック・アクセスを義務付ける法案”PAPS ACT”提出
Posted 2013年9月24日
http://current.ndl.go.jp/node/24429

Elsevierが社会科学分野の主題リポジトリSSRNを買収
Posted 2016年5月17日
http://current.ndl.go.jp/node/31613

※タイトルの誤植を修正しました(2016/9/1)