出版へのプレッシャーが科学の質を下げる 生産性をもっと下げよう(記事紹介)

2016年5月12日発行のNature誌に、「出版へのプレッシャーが科学の質を下げる」(”The pressure to publish pushes down quality”)と題し、科学者に対してもっと論文執筆を控えるよう呼びかけるコラムが掲載されています(オンラインでの記事公開は2016年5月11日)。著者はアリゾナ州立大学Consortium for Science, Policy and OutcomesのDaniel Sarewitz氏です。

Sarewitz氏は世界で出版される学術論文の数が著しく増加し、また論文が引用される回数も増加してきている現状を紹介した上で、過剰な論文数の増加は質の低い論文の増加ももたらしていると指摘します。例として、がん研究におけるコンタミネーションに基づいた論文の増加について紹介しており、1,000以上の論文で乳がんの細胞株として用いられていたものが、実は別の細胞株であった事件が紹介され、これらの誤った論文を引用している論文については年間10,000本程度にものぼっただろうと推測しています。また、論文数の多さによって、どんな内容の主張であってもそれを支持する論文が見つかるともしており、それが政策議論の停滞につながると指摘しています。

Sarewitz氏は科学の質を向上させるためには、科学の効率性・生産性を下げる必要があり、より出版する論文の数を絞っていくべきであるとしてコラムを締めくくっています。

The pressure to publish pushes down quality(Nature、2016/5/11付け)
http://www.nature.com/news/the-pressure-to-publish-pushes-down-quality-1.19887

参考:
CA1829 – 査読をめぐる新たな問題 / 佐藤 翔
http://current.ndl.go.jp/ca1829