「今までにない、驚くべき、革新的な」等のポジティブな表現が科学論文中で増加(記事紹介)

2015年12月14日付けのNature誌ニュース記事で、2015年11月にBMJ誌に掲載された論文” Use of positive and negative words in scientific PubMed abstracts between 1974 and 2014: retrospective analysis”が紹介されています。

BMJ誌掲載論文はオランダ・ユトレヒト大学のChristiaan H. Vinkers氏らによるものです。Vinkers氏らは1974年から2014年に出版された科学論文で、PubMedに収録されているもの全ての抄録を対象に、「たしかな」(”robust”)、「今までにない」(”novel”)、「革新的な」(”innovative”)などポジティブな結果を強調する単語25語と、ネガティブな結果を強調する単語25語、中立的な表現を示す単語25語を選定し、その出現回数の推移を集計しました。また、比較のためランダムに選んだ単語100語の出現回数や、各単語のGoogle Books Ngram Viewerでの出現回数(図書における出現回数)の変化も分析しています。

分析の結果、ポジティブな単語の出現頻度は1974~1980年に比べて2014年には約9倍に増えていたとのことです。ネガティブな単語の出現回数も増えているものの、3倍未満とポジティブな単語の増加ほどではなく、中立的な単語・ランダムに選んだ単語の出現回数や、各単語の図書中での出現回数は増えていませんでした。

この結果について、Nature誌のインタビューに応えたVinkers氏は、研究者は論文を出版するために、自身の研究成果は特別でユニークなものであると強調する必要に駆られているとコメントしています。特に”novel”という語は現在ではPubMed収録論文のうち7%のタイトルもしくは抄録に出現するようになっており、このペースでいけば2123年には全ての論文で使われるようになるのでは、と冗談交じりに述べられています。

Nature誌記事ではVinkers氏らの研究は一部の単語を調査したものに過ぎないので注意が必要であるとするコンピュータ科学者のコメントも紹介されていますが、Vinkers氏は今回の結果だけでも現状には問題があることが示されており、科学論文中での単語の選び方が内容に基づくものではなくなっていると指摘しています。

‘Novel, amazing, innovative’: positive words on the rise in science papers(Nature、2015/12/14付け)
http://www.nature.com/news/novel-amazing-innovative-positive-words-on-the-rise-in-science-papers-1.19024

Vinkers Christiaan H, Tijdink Joeri K, Otte Willem M. Use of positive and negative words in scientific PubMed abstracts between 1974 and 2014: retrospective analysis BMJ 2015; 351 :h6467
http://www.bmj.com/content/351/bmj.h6467

参考:
学術論文はめったに否定的に引用されない 批判を目的とする引用は2.4%(記事紹介)
Posted 2015年10月27日
http://current.ndl.go.jp/node/29785