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電子書籍に関する調査“Digital Census2015”からうかがえる5つの重要な所見(英国)

2015年10月29日付の、英国の出版業界誌The Bookseller誌で、2015年に実施した“Digital Census ”における5つの重要な所見を以下の通り発表しています。

1.デバイスの選択として、モバイル端末がタブレットや電子書籍専用端末を上回る

スマートフォンの技術の進展(画面サイズの拡大や解像度)、電子書籍専用端末の魅力の減少やマルチユースデバイスへの嗜好などが原因としてあげられるとのことです。ただし、Kindleの魅力が減少しているのではなく、Kindleを提供するAmazonの電子書籍の購入は77.1%もあるとのことです。

2.電子書籍書籍の売り上げは伸びているが緩やかである

68.2%の出版社が、総売り上げの10%を電子書籍の売り上げが占めると述べているとのことです(昨年の調査では50%)。また、41.1%の出版社では、総売り上げの20パーセント以上を占めているとのことです。

37.7%の出版社が、デジタル形態の出版が、2020年までに出版社の売り上げの21~50%を占めると答えており、また、21.1%の出版社は売り上げの半分を超えるだろうと回答しているとのことです。

また、アプリの減少とマルチメディアコンテンツの増加が指摘され、出版業界におけるアプリの開発は昨年の50.8%から落ち込んで46.2%となっている一方、オーディオコンテンツの割合は39.3%から47.5%に上昇しているとのことです。

3.自費出版への情熱の減少

電子書籍で自費出版を行なった著者の満足度は10点満点中で6.7点で、伝統的な出版の著者の満足度5.7点よりは高いが、昨年の調査の7.1点よりは減少しているとのことです。電子書籍の著者の50.9%は1,000冊以下しか売れておらず、5万部以上売れているのは12.4%の著者にすぎないとのことです。

4.デジタルの問題について出版業界では意見が分かれている

1つ目は価格の問題で、3分の2の出版社が、紙媒体より低価格で販売するべきと答える一方、4分の1の出版社は紙媒体とコストは変わらないので希望小売価格や末端価格で販売するべきと答えているとのことです。また、低価格販売のリスクがあり、52.5%の回答者は電子書籍は現在はあまりにも低価格で販売されていると答えているとのことです。

2つ目は印税で、48.6%の回答者が、電子書籍の印税は紙媒体と同じにすべきと答えている一方、髙くあるべきと答えたのが34.7%、低くあるべきと答えたのが13.9%、他の方式を好むと答えたのが2.8%とのことです。

3つ目はエージェンシーモデルで、45.1%の回答者が市場での価値を保つ賢い手だてと回答し、38.2%が選択肢がないので遺憾に思うと答え、16.7%がとても厄介であると答えているとのことです。

最後はDRMで、42.7%の回答者が出版社が電子書籍からDRMを取り除くべきと答えているとのことです。

5.来たるべき自体に出版業界は準備できていないと信じられている

出版業界は、変化へ適応するための、革新と訓練への投資が十分に行なわれていないことが心配されており、49.7%がデジタル革命に対して準備ができていないと回答しているとのことです。

しかし、楽観的なのには理由があり、66.9%の回答者が、電子書籍の売り上げの成長は書籍市場を拡大させると考えており、また、消費者が多くの気晴らしの材料を持っているにも関わらず、48.4%の回答者が電子書籍を購入するようになって以来よく本を読むと答えているとのことです。

結局のところ、少なくとも出版業界の調査の中では、未来は楽観視されており、51.4%は次世代での読書や学習については楽観的であり、悲観的なのは5.7%に過ぎないとのことです。

Digital Census 2015: five key findings(The Bookseller,2015/10/29)
http://www.thebookseller.com/insight/digital-census-2015-five-key-findings-315594

参考:
スマートフォンの所有率が上昇:Pew Research Centerの各種情報端末の所有率調査より(米国)
Posted 2015年10月30日
http://current.ndl.go.jp/node/29819

英国での電子書籍端末の保有率は28%
Posted 2015年8月7日
http://current.ndl.go.jp/node/29112