4. おわりに

4.おわりに

 これまで各章ごとにパッケージ系電子出版物に関する平成15年度調査、平成16年度調査について、それぞれ述べてきた。平成15年度の利用可能性調査では相当数の電子資料の利用に問題があることが明らかになった。その結果を受けた平成16年度の調査では、長期保存のための手法といわれるマイグレーションとエミュレーションが必ずしも現時点での実際的な対策ではないことも明らかになった。しかしこれらの手法は調査環境に大きく依存するため、パッケージ系電子出版物の長期的な保存と利用に有効ではないと結論付けることは早急であり、更なる調査研究が必要である。


 電子情報にはパッケージ系電子出版物のほか、ウェブ情報に代表されるインターネット情報などもあり、長期的な保存や利用にあたっては同様の問題や課題を抱えている。


 これらの電子情報を長期的に保存し将来的な利用を保証するためには、データそのものを保存するとともに、再生環境(再生用アプリケーション・ソフトウェア、OS、再生機器など)もセットで長期的に維持管理していく必要がある。それぞれの電子情報に最適な再生環境を包括的に収集し維持していくことも考えられるが、媒体や再生機器が短寿命であることから、これでは短期的な対策と言わざるを得ない。また再生環境が多種、多様で、媒体などの規格の移り変わりが激しい電子情報の長期保存の手法としては、やはりマイグレーションやエミュレーションは不可欠のものである。

 加えて、再生環境(あるいはエミュレーションされた環境)を維持していくためには、電子情報の属性情報、すなわち電子情報のファイル形式やその再生環境に関するメタデータの付与・維持管理が必須となる。


 一方で電子情報の長期保存の問題は、保存機関だけで対応できない問題でもある。先に述べたメタデータの維持管理・標準化やファイル形式の標準化・規格化などの課題は、国・学術機関、情報通信技術関連企業、アーカイブ機関などの関係機関や、製作者などの関係者や関係団体と連携・協力して取り組まなければ解決できない。さらにこれらの問題以外にも、著作権の問題など制度の整備も重要である。


 国立国会図書館ではこれまでの調査研究を踏まえ、平成17年度から電子情報の長期的な保存と利用のために、NDLデジタルアーカイブシステムの開発に着手した。これは国際標準であるOAISに準拠した長期保存システムを構築し、利用に不可欠な各種メタデータスキーマの設計を行い、永続的なストレージに電子情報を保存していこうというものである。

 電子情報の長期的な保存と利用を実現していくためには、このNDLデジタルアーカイブシステムの開発とともに、関係機関との連携・協力体制の構築など喫緊の対応が求められている。