4.5 対策が必要な電子書籍の保存

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■印刷資料だけの保存では不十分

現在では紙の資料だけでは、時代の実相を知ることはできなくなっていることは明らかである。今日の図書館は印刷資料だけではなく、膨大な電子資料の収集を視野に入れる必要がある。

 

■CD-ROM等パッケージ系電子出版物の保存

 紙媒体の出版物の付属物としてのフロッピーディスクやCD-ROMなどや、電子媒体を主とするパッケージ系電子出版物の増加に伴い、2000年10月に国立国会図書館法の一部改正法によって従来の紙媒体などの出版物のほかに国内で発行されたパッケージ系電子出版物についても、納本制度により網羅的に収集することとなった。

 

■電子書籍の保存の現状

 本調査による出版社、コンテンツプロバイダー、携帯電話キャリアに対するインタビュー調査ならびにアンケート調査では、電子書籍の保存について体系的に現状把握するまでに至らなかった。出版社アンケートにおける保存についての設問に対しては、「外部保存」が69.4%、「内部保存」が26.4%と7割近くが外部保存を行っていることが判明しただけである。図書館情報学における資料保存の概念とは異なり、データの滅失や毀損に対しての安全性確保としての保存を想定していると考えられる。

 また「魔法のiらんど」のように、「どの時点で作品が完全に完結し、保存するべきかの判断は、作家であるユーザに一任している。」と、保存を行っていないと回答したコンテンツプロバイダーもある。

 

■電子書籍の保存の必要性と出版社への配慮

 電子媒体は網羅的に収集・保存しなければ紙媒体の資料よりもさらに散逸・滅失の危険性が高い。だが現在の電子書籍の発行者はその長期保存については関心が低いように思われる。図書館員は保存の重要性に気がついているものの、有効な対策はとられていない。電子媒体は網羅的に収集・保存しなければ紙媒体の資料よりもさらに散逸・滅失の危険性が高い。

 PCや読書専用端末など媒体そのものが違っていることがあり、PCだけをとってもデータフォーマットが統一されていない。だが媒体変換や長期保存の体制の確立などの問題点はまだ、充分に認識されているとはいえない。保存に対する注意の喚起が必要である。

 国立国会図書館職員のアンケート調査結果でも言及されているが、利用に関しては出版社の反発が強いことがすでに明らかになっており、法の整備も含め、著作権者や出版社に配慮した慎重な対応が求められる。