3.1.3 流通の担い手、ステークホルダー

 PDF版はこちら

 

 電子書籍の担い手は大きくわけて以下4つの領域がある。すなわちコンテンツ領域、フォーマット領域、デリバリー領域、ハード領域である。

 コンテンツの領域とは、現状では主に、既存メディアでのコンテンツホルダーである出版社や映画会社、テレビ局が支配している。フォーマット領域は、ビューア、制作ツールを担っており、ソフトウェア開発部分といえる。デリバリー領域は、携帯電話では配信に関わる通信事業者キャリアが独占している世界であり、そしてまたPCにおいては豊富なコンテンツを揃える大手取次や大書店が占有する世界である。ハードの領域は代表的な大企業メーカーが担っている。

 これらを前提とすると、電子書籍流通に関係する担い手は、主にコンテンツ領域とデリバリー領域にある出版社、印刷系取次・書店、ベンチャー系取次・書店、それにキャリアの4者に代表されると言えるであろう。以下個別に分析する。

 

3.1.3.1 通信事業者(キャリア)

 

 極めて限定された流通の担い手であり、特定が可能である。日本では現在、以下の5社が該当する。なおカッコ内は展開しているブランド名である。

  • エヌ・ティ・ティ・ドコモ(docomo)
  • KDDI(au)
  • ソフトバンクモバイル(SoftBank)
  • ウィルコム(WILLCOM)
  • イー・モバイル(EMOBILE)。

 日本の場合「公式サイト」と呼ばれる、キャリアが直接運営する強力なコンテンツの流通の仕組みがあり、キャリアはここでコンテンツの流通とともに、ユーザーへの課金を代行する役割をも果たしている。しかし前出のiPhoneの例にあるように、コンテンツ配信にあたってキャリアは配信経路としてのネットワークの提供に徹し、コンテンツへの課金はあくまでも販売サイト・書店が行う方式が現れてきている。この傾向はAndroid OS搭載の機種、そしてまたKindleのような新たな読書専用端末の日本への上陸によってますます普及浸透していくことだろう。

 

3.1.3.2 出版社

 

 電子書籍のコンテンツを供給する大きな源となるのは、既存メディアでコンテンツとして定評を獲得しているものであるといえる。その意味では現在、本という既存メディアにおいて人気を得てきた漫画やノベルを大量に保持する出版社の存在は、極めて大きい影響力をもっている。従って最も積極的に電子書籍コンテンツに関わっているのは、漫画コンテンツの大手である小学館、集英社、講談社、角川書店、双葉社、秋田書店、白泉社、少年画報社、リイド社などの出版社である。これらの出版社はコンテンツの配信にあたり、より多くの販売展開を願っており、複数の電子書籍取次を通じた、ネット上の多店舗への流通を基本スタンスとしている。さらに、電子的な流通の非地域性、非距離性という特徴を生かす形で自社独自の専用サイトを構え、売上に直結させる意図も明らかで、これを強化する傾向にある。これは、潜在的に多くの顧客を想定できる今後のネット社会を考えると、自社のコントロール下においてコンテンツ販売のトータルなプロモーションを画策する意味もある。売上向上や販売促進の観点から、独自の自社専用サイトの存在は無視できないものとなっている。

 

3.1.3.3 電子書籍の「取次」

 

 書籍流通を仕切ってきた大手の取次は、電子書籍の流通に関して積極的な姿勢を示してこなかった。基本的に書店に対して「モノ」としての本を流通してきた書籍取次にとって、書店を介さずにユーザーがネットワーク経由で直接コンテンツを取得する方法は、書店の利益からもっともかけ離れたビジネスのスタイルであった。従って書籍取次は、パッケージ化された電子書籍コンテンツ以外の流通に、積極的な対応を行うことはなかった。

 その一方で、電子書籍コンテンツの流通にいち早く目をつけたのは、印刷工程に位置し、書籍の制作を担う企業だった。彼らは本の印刷という生産過程においていち早く電子化技術を取り入れ、工程の効率化を図った人々でもあった。すなわち自身の経験から、電子化の及ぼす影響力と将来生じるであろう紙媒体の伸び率の限界を察知できる立場であったとも言えよう。巨大サーバを構築してネット配信する新しい取次は、こうして印刷会社を基盤として、あるいは印刷企業の資本参加によって生まれていった。

 電子書籍取次の大手であるビットウェイ(BitWay)は凸版印刷との間で、資本背景を有している。同様にモバイルブック・ジェーピー(MBJ)は大日本印刷系、デジタルカタパルトは共同印刷系と、それぞれ資本背景をもつ。

 印刷系の企業は当然にも出版社との結びつきを強く持っている。出版社のコンテンツを紙媒体に印刷する工程で、効率化に向けた電子化の動きは早くから浸透してきた。ここで生まれる電子データを新しい媒体に転用・応用することは、コスト面での大きな武器となり、出版社、印刷会社の双方に利益を見込めるものであった。このように電子書籍においても、両者の結びつきは深まり、印刷系の企業が印刷という生産過程での役割から、配信流通までをも担う立場にも、進出するようになったのである。

 

3.1.3.4 ベンチャー系の電子書籍書店、版元

 

 代表的な書店・版元として、NTTソルマーレ、ビービーエムエフ(Bbmf)、パピレス、イーブックイニシアチブジャパン(EBI)、Yahooコミックなどが挙げられる。

 いづれの各社も、他社に先行して電子書籍ビジネスに参入し、成功を収めるとともに、積極的な事業拡大を進めている。多くの電子書籍コンテンツを集め、充実した「書店」形成によって集客力を増すと同時に、新しいコンテンツ創造という企画力を保持している。そのために書店・コンテンツ流通という役割以上に、自社内にコンテンツ制作できる生産システムを持ち、出版版元としてクリエイターを集め、電子媒体における生産・販売流通・宣伝を一貫して担う新しい出版社へと成長する姿勢を示している。

 その意味においては、コンテンツ創出のための作家を育ててきた出版社と、紙媒体と電子の両分野に渡って生産を一手に引き受けてきた印刷会社との関係の間に割り込んできた新勢力だということができる。作家を取り合うという面においては、既存出版社とは対立することになるが、販売力という面においては既存出版社もこれを利用する関係となる。生産力という観点からは、コスト削減の強化を打ち出し、中国をはじめとする、人件費の低廉なアジア諸国に制作拠点を設けている。早く安くものを仕上げる能力を保持しており、既に電子化されたデータを持ち優位に立っていた印刷会社の立場を揺るがす勢いだといえる。

 

 上記してきたキャリア、出版社、取次、書店等の電子書籍流通の運営にあたっては、サーバ運営、決済・課金、売上管理をはじめとするさまざまな情報管理を受持つ業務分野があり、これに特化した担い手が大きな事業会社として存在する。但しこれは電子書籍に限った仕事とはいえず、広くネットビジネスに介在する業務部門であるために、ここでは除外して触れていない。

 

参照ウェブサイト

“iNeo”. http://i-neo.jp/, (参照 2009-02-11).

“iPhone3G”. Apple. http://www.apple.com/jp/iphone/, (参照 2009-02-11).

“App Store”. Apple. http://www.apple.com/jp/iphone/appstore/, (参照 2009-02-11).

“Android”. Google. http://www.android.com/, (accessed 2009-02-11).

“Android Market”. Google. http://www.android.com/market/, (accessed 2009-02-11).

“eBook Japan”. イーブックイニシアティブジャパン. http://www.ebookjapan.jp/shop/, (参照 2009-02-11).

“EMOBILE”. http://emobile.jp/, (参照 2009-02-11).

“WILLCOM”. http://www.willcom-inc.com/ja/index.html, (参照 2009-02-11).

“Xbox.com”. マイクロソフト. http://www.xbox.com/ja-jp/, (参照 2009-02-11).

“NTTソルマーレ”. http://www.nttsolmare.com/, (参照 2009-02-11).

“NTT docomo”. http://www.nttdocomo.co.jp/, (参照 2009-02-11).

“au by KDDI”. KDDI. http://au.kddi.com/, (参照 2009-02-11).

“Kirtas”. http://www.kirtas.com/, (accessed 2009-02-11).

“Kindle Store”. Amazon.com. http://www.amazon.com/kindle-store-ebooks-magazines-blogs-newspapers/b?node=133141011, (accessed 2009-02-11).

“講談社コミックプラス”. http://kc.kodansha.co.jp/, (参照 2009-02-11).

“集英社”. http://www.shueisha.co.jp/, (参照 2009-02-11).

“集英社マンガカプセル”. http://mangacapsule.jp/, (参照 2009-02-11).

“小学館オンライン”. 小学館. http://www.shogakukan.co.jp/, (参照 2009-02-11).

“セルシス”. http://www.celsys.co.jp/, (参照 2009-02-11).

ソニー・コンピュータエンターテイメント. “「プレイステーション・ポータブル」情報”. PlayStation.com(Japan). http://www.jp.playstation.com/psp/, (参照 2009-02-11).

“SoftBank”. ソフトバンクモバイル. http://mb.softbank.jp/mb/, (参照 2009-02-11).

“DSVision.jp”. am3. http://www.dsvision.jp/, (参照 2009-02-11).

“電子書店パピレス”. http://www.papy.co.jp/, (参照 2009-02-11).

“ニンテンドーDSi”. 任天堂. http://www.nintendo.co.jp/ds/series/dsi/index.html,(参照 2009-02-11).

“PHP Book-Chase Digital”. PHP研究所. http://www.book-chase.com/DIGITAL/index.html, (参照 2009-02-11).

“Bbmf”. ビービーエムエフ. http://www.bbmf.co.jp/, (参照 2009-02-11).

“Bitway”. ビットウェイ. http://www.bitway.co.jp/, (参照 2009-02-11).

“魔法のiらんど”. http://ip.tosp.co.jp/, (参照 2009-02-11).

“マンガ「MiChao!(ミチャオ)」”. 講談社[モウラ]. http://moura.jp/manga/, (参照 2009-02-11).

“MobileBook.jp”. モバイルブックジェーピー. http://www.mobilebook.jp/, (参照 2009-02-11).

“モバゲーTOWN”. DeNA. http://www.mbga.jp/, (参照 2009-02-11).

“Yahoo!コミック”. ヤフージャパン. http://comics.yahoo.co.jp/, (参照 2009-02-11).

“リブリカ”. http://www.librica.co.jp/, (参照 2009-02-11).