4.3 OCLCの動向

PDF版はこちら

慶應義塾大学文学部  原田 隆史(はらだ たかし)

(1) 概要と歴史

 OCLC(Online Computer Library Center, Inc.)は、世界最大のオンラインで図書館の分担目録作業を行うシステム(書誌ユーティリティ)である。現在では、その活動は分担目録にとどまらず、データベースの提供や図書館に関わる研究開発など多岐にわたっている。本部はアメリカ合衆国のオハイオ州郊外のダブリン(Dublin, OH)におかれている。

 1967年にオハイオ州立大学を中心とするオハイオ州内の54の大学図書館の情報資源の共有と図書館費用の削減を目的としたコンピュータネットワーク(共同利用機関)“Ohio College Library Center”として設立された。

 初代のディレクターであるキルゴア(Frederic Gridley Kilgour)の方針もあり、1977年にはオハイオ州外の図書館もメンバーとして参加できるように大幅な組織改革が行われ、アメリカ国内はもとより世界中の図書館が参加し、加盟館が増加した(1)。現在では世界112の国または地域にある57,000館以上(2007年2月現在)の図書館が参加している世界最大の組織となっている(2)。また、1981年には実態に合わせて法人名をOhio College Library CenterからOnline Computer Library Center, Inc.へと変更した(3)

(2) OCLCの活動

 OCLCが提供するサービスは、目録データベース“WorldCat”を中心としたサービス、書誌データベースや電子ジャーナルなどを中心としたサービスなどを中心に多岐にわたる。以下に、代表的なサービスを紹介する。

 1) 目録作成サービス“OCLC Connexion”

 各図書館が行う図書の目録作成を支援するサービス。OCLCは参加館が共同で作成する書誌データベースWorldCatを維持管理している。参加館はOCLC Connexionを使ってWorldCatにビルトインアクセスし、書誌・典拠レコードの作成・修正を行うことができる。オリジナルな目録作成を行うことができるだけでなく、既存のデータを自館のデータベースにコピーすることで必要な目録を簡単に作成することもできる(4)。WorldCatには、2007年2月17日現在で76,012,240の書誌レコード、1,110,394,813件の所蔵レコードが蓄積されており、世界最大の文献データベースとなっている(5)

 図書館がWorldCatに接続して目録を作成するシステムは、従来は“Passport”という名前のシステムが使用されていたが、2005年5月にOCLC Connexionに置き換えられた。インタフェースとしては、専用のクライアントソフトウェア“Connexion client”経由だけではなくWebブラウザを用いてアクセスすることも可能となっている。

 2) OCLC ILL

 OCLCでは参加館同士のILLを実現するシステムを提供している。近年では、ILLの支援を行うためのソフトウェアとして“ILLiad Resource Sharing Management”が開発され、ILLリクエストの作成支援、所蔵館への連絡、結果の追跡などを容易に行うことができる環境も提供されてきている(6)

 3) Open WorldCat

 2003年にOCLCはWordlCat中のデータの一部を一般公開するOpen WorldCatプログラムを開始した。Open WorldCatプログラムは、Google、Yahoo!、Windows Liveなどにデータを提供するもので、これによって検索エンジン等を用いてWorldCat内のレコードの検索が可能となっている(7)。たとえば、GoogleやYahoo!では「詳細検索」において、検索サイトを“worldcatlibraries.org”に制限するだけでOpen WorldCatを検索することができる。Open WorldCatの提供レコードは2004年秋には、WorldCatの全レコードまで拡張された(8)。さらに、2005年10月にはWorldCatレコードにWikiのように自由にコメントを追加できる仕組みも追加されている。

 4) FirstSearch

 FirstSearchは、参加館の図書館員および利用者が誰でも利用できることを目的に作られたオンライン情報検索サービスである(9)。Webべースのインタフェースのほか、Z39.50インタフェースも用意されている。近刊雑誌の記事情報を検索できる“OCLC ArticleFirst”、会議録の目次情報が検索できる“OCLC ProceedngsFirst”、“OCLC PapersFirst”といったOCLCが作成したデータベースのほか、“Educational Resources Information Center”が収集した教育関係資料を収録したデータベースERICなど70以上のデータベースにアクセスできる(10)。また、ECO(Electronic Collections Online)と呼ばれる約70社の主要な学術雑誌出版社が発行する5,300誌以上の電子ジャーナルコレクションも収録データベースのひとつとして使用することができる(11)

 5) NetLibrary eBook

 学術系の120,000タイトル以上を含む電子図書のコレクションを提供するサービスで、欧米を中心に多数の出版社(400以上)が参加している(12)。図書館が電子図書を購入することで、その利用者が電子図書を読むことができるようになる。利用者への電子図書の提供は、OPACから直接電子図書を見られるようにする方法や、自館のWebサイトにリンクを設けて提供する方法など多様な方法が可能となっている。いずれの場合においても、利用者はWebブラウザで閲覧でき、専用デバイスやリーダーは必要ない(13)

 6) WebJunction

 WebJunctionは、図書館職員向けオンライン学習コミュニティである(14)。2006年12月には、E-ラーニングの研修プログラムを専門とするInSync Training社の協力を得て、同期型ラーニングの専門家を育成する研修プログラムの提供を開始した。このプログラムでは、ライブ型のオンライントレーニングを設計したり、手助けしたりする技能を学ぶことができる(15)

 7) その他のサービス

 アメリカ議会図書館と協同で開発、運用するレファレンス支援システム“QuestionPoint”がある。QuestionPointは、図書館に寄せられたレファレンス質問を効果的に管理する機能のほか、自館で解決できない質問について他のQuestionPoint参加館に回答を依頼するなどネットワークで接続された図書館が協力して効果的なレファレンスを行う環境を構築することができる(16)。また、QuestionPointは、近年カリフォルニアの“24/7”(twenty four by seven)と統合された(17)

(3) OCLCの最近の動向

 OCLCの業務に関する最近の動向としては、「統合」と「オープン化」という2つをキーワードとしてあげることができる。

1) サービス、データベースなどの統合

 かつて“CORC”と呼ばれたWeb上の情報源に対する目録作成サービス、CJK(Chinese, Japanese, Korean)のような多言語サービス、Webブラウザでアクセス可能な目録サービスなどは、開発過程を経て正式なサービス体系の中に組み込まれている(18)。その結果として、2005年に提供が開始されたOCLC Connexionでは、Web上からのアクセスが可能となり、また、多言語対応のシステムとなっている。

 このようなOCLC内のサービスを統合してサービスの質の高めるほか、他の機関で作成された目録とデータベースを統合して収録レコードの内容を広げる活動も行われている。たとえば、2004年にイリノイ州でWorldCatと州内のローカルなOPACを統合したイリノイ州オンライン総合目録“SILC”が作成されるなど、いくつかの地域図書館システムの目録との統合が行われている(19)。また、2006年7月にはRLG(Research Library Group)の資産をすべて買収する形でデータベースの統合を行っている。このRLGの買収によってRLG傘下の各図書館の蔵書データがWorldCatデータベースに統合されたほか(2007年第3四半期を目途に現在統合中)、RLGの研究部門もOCLCの研究グループの傘下にはいることとなった。

2) オープン化

 従来、WorldCatデータベースは、OCLCの参加館のみからしかアクセスすることができなかった。しかし、2003年からOCLCはWorldCatデータベースをWebから一般の人々も検索できるように開放している。これは、検索エンジンなどを通してWorldCatデータベースに収録された所蔵情報などの内容を表示することで、図書館の利用を増やそうとする戦略でもある。

 Open WorldCatサービスは、当初はデータを静的なWebページとして公開することでGoogleやYahoo!のような検索エンジンのみからアクセスできるものとして提供されていたが、現在では利用者により使いやすい提供形態を目指して“worldcat.org”が開設され、きめ細かなサービスの提供を目指している(現在、β版がサービスされている)。

3) その他

 その他、OCLCの新しいサービスとして、コーネル大学図書館と一緒に開発している受発注システム“ITSO CUL”や、“WorldCat Selection”が予定されており、現在開発中である。

 (4) OCLCが図書館界に果たしている役割

 近年、学術研究の国際化、インターネット技術の普及、図書や雑誌の価格高騰、電子メディアの増加、Web検索エンジンの発達など、図書館を取り巻く環境は大きく変化してきている。これにともなって、多くの図書館をネットワークで接続し、情報資源を共同化していくことの必要性、重要性はますます高まってきている。

 OCLCは設立以来、このような情報資源の共有を地球規模で推し進めてきており、従来の図書館サービスの問題点として指摘されてきた目録業務を中心に、図書館の生産性向上とコスト削減に大きな役割を果たしてきた。

 また、近年の環境の変化にも対応するために、最新の情報技術を駆使した図書館に関わる新しい技術の開発も行い続けている。特にOCLCの目録データの協同作成だけではなく、作成された目録データベースを利用してのILLサービスや、Web上のデータのメタデータ作成、電子ジャーナルや電子図書の提供をはじめとしたデジタルコンテンツに関わるサービスなどが開発され、その利用も急速に増加してきている。

 また、標準化に関してもDublin Coreをはじめとする各種の標準化活動がOCLCを中心に行われており、その意味でも大きな貢献をしているといえるだろう。



(1) OCLC. “About OCLC”. http://www.oclc.org/about/default.htm, (accessed 2007-02-17).

(2) OCLC. “History of OCLC”. http://www.oclc.org/about/history/default.htm, (accessed 2007-02-17).

(3) 紀伊國屋書店. “OCLCとは”. http://www.kinokuniya.co.jp/03f/oclc/aboutoclc.htm, (参照 2007-02-17).

(4) OCLC. “Connexion”. http://www.oclc.org/connexion/, (accessed 2007-02-17).

(5) OCLC. “WorldCat”. http://www.oclc.org/worldcat/default.htm, (accessed 2007-02-17).

(6) OCLC. “ILLiad”. http://www.oclc.org/illiad/, (accessed 2007-02-17).

(7) Open WorldCat program. “Open WorldCat: WorldCat on the Web”. OCLC. http://www.oclc.org/worldcat/open/, (accessed 2007-02-17).

(8) Quint, Barbara. All of OCLC's WorldCat Heading Toword the Open Web. Information Today. 2004-10-11. http://newsbreaks.infotoday.com/nbreader.asp?ArticleID=16353, (accessed 2007-02-17).

(9) 紀伊國屋書店. “OCLC FirstSearchとは”. http://www.kinokuniya.co.jp/03f/oclc/aboutfs.htm, (参照 2007-02-17).

(10) OCLC. “FirstSearh”. http://www.oclc.org/firstsearch/, (accessed 2007-02-17).

(11) 紀伊國屋書店. “OCLC ECO(Electronic Collections Online)”. http://www.kinokuniya.co.jp/03f/oclc/eco.htm, (参照 2007-02-17).

(12) 紀伊國屋書店. “NetLibrary eBook”. http://www.kinokuniya.co.jp/03f/oclc/netlibrary.htm, (参照 2007-02-17).

(13) 紀伊國屋書店. “NetLibrary eBook FAQ”. http://www.kinokuniya.co.jp/03f/oclc/netlibrary_faq.htm, (参照 2007-02-17).

(14) OCLC. “WebJunction”. http://www.oclc.org/webjunction/default.htm, (accessed 2007-02-17).

(15) WebJunction、同期型Eラーニングの専門家を育成する研修プログラムの提供開始. カレントアウェアネス-R. 2718, 2006-12-15. http://www.dap.ndl.go.jp/ca/modules/car/index.php?p=2718, (参照 2007-02-17).

(16) 林賢紀, 松山龍彦, 新元公寛. QuestionPoint:導入事例と今後の予定. 情報の科学と技術. 2006, 56(3), p.96-102.

(17) “QuestionPoint: 24/7 reference services”. OCLC. http://www.questionpoint.org/, (accessed 2007-02-17).

(18) 峯環. 2005年度海外派遣研修報告書. 2006. http://www.jaspul.org/kokusai-cilc/haken_report2005.pdf, (参照 2007-02-17).

(19) OCLC. “ArchivedProject”. http://www.oclc.org/research/projects/archive/default.htm, (accessed 2007-02-17).

Ref:

“OCLC”. Wikipedia. http://en.wikipedia.org/wiki/OCLC, (accessed 2007-02-17).

OCLC. OCLC Annianl Report 2005/2006. http://www.oclc.org/news/publications/annualreports/2006/2006.pdf, (accessed 2007-02-17).

紀伊國屋書店. “OCLC関連情報トップページ”. http://www.kinokuniya.co.jp/03f/oclc/oclctop.htm, (参照 2007-02-17).