CA1386 – Z39.50の行く末 / 飯倉忍

カレントアウェアネス
No.260 2001.04.20


CA1386

Z39.50の行く末

Z39.50がANSI(米国規格協会)の規格として承認されたのは1988年のことであるが,そもそもは1980年代,LC,OCLC,RLIN(Research Libraries Information Network),WLN(Western Library Network)などによる,複数の目録データベースをあたかも一つのデータベースであるかのように検索できないか,ということからはじまった。他方,ISOもまた同様のプロトコルとしてISO10162/10163の制定を進めていたことを受け,1992年にはその内容を包含する第2版が決められ,さらに1995年には第3版へとZ39.50は進化していった。その後,1998年にはISO23950として正式に国際規格へと「出世」,わが国においてもJIS X0806-1999として正式な規格となった(CA1266参照)。

このようにZ39.50が登場して10年以上経つが,この間に情報を取り巻く環境は大きく変化した。その最たるものがインターネットの普及であろう。1990年代の初めに開発されたWorld ‐Wide Webは,その後瞬く間に世界中に広まっていき,現在ではいくつものサーチエンジンが提供され,世界中のインターネット上の情報源を検索できるようになっている。

しかし残念なことに,インターネットには数多くの規格類が関係しているにもかかわらず,その中でZ39.50という規格が重要な地位を占めているとはいいがたい。この規格があまりに複雑なものとなり,誰もが容易に利用することが困難となったという理由もあるだろうが,あくまで図書館界中心に発展してきたものであるため,インターネットの進展を支えるW3CやIETF(用語解説T31,T32参照)といった団体からはあまり重要視されてこなかったこともあるかもしれない。実際にこの規格に合致したソフトウェアを提供しているベンダーは,図書館や博物館を相手にしているところに限られているし,Z39.50に対応したデータベースシステムも多いとはいえない。

では,Z39.50はこのまま図書館界の中で生き残るだけのものとなってしまうのだろうか,というと実はそうではない。最近になり,今までとは異なる動きが見られるようになっている。その動きの一例を挙げるならば,ZIG(Z39.50 Implementors Group: Z39.50実装者グループ)のメンバーらがW3Cの中のXQL(XML Query Language,用語解説T33参照)ワーキンググループに加わることとなった。そこでの検討が順調に進めば,Z39.50で用いられているクエリー(検索式)が,近いうちインターネット上でもXQLにおけるそれと同等に扱われるようになるかもしれない。

結局,Z39.50はどうなるのだろうか。少なくとも欧米の図書館界では一つの標準として確固たる地位を築いているため,いつか消えてしまうことにはならないと思われるが,このままで独自に存在し続けるということでもなかろう。上で述べたZIGの活動など図書館側からの働きかけにより,インターネットを支える数多くの基盤技術の一部となりつつ進化を遂げていくことになるのではないだろうか。

飯倉 忍(いいくらしのぶ)

Ref: The Internet, interoperability, and standards:filling the gaps. Inf Stand Q 12(3) 1-14, 2000
Needleman, Mark. Z39.50:a review, analysis and some thoughts on the future. Libr Hi Tech 18(2) 158-165, 2000
Z39.50 International Standard Maintenance Agency [http://lcweb.loc.gov/z3950/agency/] (last access 2001. 3. 13)
NISO Z39.50 resource page. [http://www.niso.org/z3950.html] (last access 2001. 3. 13)