E300 – オリエント図書館の資料保存とデジタル化 <文献紹介>

カレントアウェアネス-E

No.53 2005.02.16

 

 E300

オリエント図書館の資料保存とデジタル化 <文献紹介>

 

Semaan Seigneurie, May et al. La Bibliotheque Orientale: histoire, conservation et numerisation. International Preservation News. (33), 2004, 16-19. (online), available from < http://www.ifla.org/VI/4/news/ipnn33.pdf >, (accessed 2005-01-31).

 レバノンの首都ベイルートにあるオリエント図書館は,イエズス会が所有し,セント・ジョゼフ大学が運営する研究図書館で,一般に公開されている。先史から現代までの中東に関する図書20万タイトル,逐次刊行物2,000タイトルのほか,アラブキリスト教徒の手稿,航空考古学の先駆者であるアントワーヌ・ポワドバール(Antoine Poidebard)の写真資料,レバノンやベイルートの古地図など貴重なコレクションが所蔵されている。

 資料保存プロジェクトは2000年から始まった。記事では,特に手稿の資料保存,デジタル化が具体的に紹介されている。資料保存の一連の作業は,燻蒸や保存箱への収納,さらには目録の整備にも及ぶものとなった。手稿の燻蒸は書架全体を覆い,二酸化炭素を送りこむという,資料を動かさない方法がとられた。またアラビア語,古典シリア語,ラテン語,ギリシア語,トルコ語,ペルシャ語,アルメニア語,コプト語,ヘブライ語で書かれた3,500タイトルの手稿のうち,約1,200タイトルが目録化されないまま所蔵されていたが,最も数が多いアラビア語資料のデータベース構築も行われた。さらに,資料へのアクセスを容易にし,原本を保存するためにデジタル化が行われ,カラー画像によるDVDが作成されている。

 欧米の各機関とも協力して行われた資料保存対策について,参考になるとともに,日本ではあまりなじみのない,オリエント図書館を知るきっかけにもなる記事である。

Ref:
http://www.usj.edu.lb/pdf/reglbo.pdf
http://www.usj.edu.lb/poidebard/