E281 – 子どもたちに世界を−絵本を用いた国際理解教育の試み <文献紹介>

カレントアウェアネス-E

No.50 2004.12.15

 

 E281

子どもたちに世界を−絵本を用いた国際理解教育の試み <文献紹介>

 

Ernst, Shirley et al. If children can’t go out into the world, bring the world to them through children’s books. Bookbird. 42(3), 2004, 19-27.

 2億9千万人の米国民のうち,自分の住む地域の半径80km内から一度も離れたことがなく,また外国人や他国の文化に接することなく一生を過ごす地方在住者は少なくないという。当記事は,そのような米国の子どもたちに,世界を見つめる広い視野を持ってほしいと考えたある小学校教員と大学教授(児童文学専門)による,絵本を用いた教育の試みの記録である。

 彼らは試みの中で,各国の様子が具体的にわかるものを中心に,詩やフィクションを織り交ぜた50冊以上の絵本を選んだ。それらの本は,自由読書の時間に子どもたちが思い思いに見るほか,クラスメイトの一人が外国に行った時など子どもたちに身近なトピックとうまく関連づけて,授業の中で用いられた。また,教室の後方には大きな世界地図が掲示され,子どもたちに話題となった場所を把握させるのに大いに役立った。

 このように,外国で出版された本や外国について書かれた本を用い,子どもたちに広い世界を知ってもらおうという取り組みや,そういった本のリストはすでにいくつか存在するが,当記事は実際に授業に取り組んだ子どもたち,またその家族の生の反応を報告したものであり,興味深い。文末には,実際に授業で使用された絵本等の詳細なリストが掲載されている。

 彼らがまさにこの試みに取り組み始めた新学期,あの9・11事件が起きたのだが,そうした世界情勢のなかで,ますますこの課題の重要性と必要性を感じた,と記事は強調している。

(国際子ども図書館:星野絵里子)