E2099 - 出版の未来を拓く非営利のニュースメディア

カレントアウェアネス-E

No.362 2019.01.31

 

 E2099

出版の未来を拓く非営利のニュースメディア

 

 筆者が理事長をつとめているNPO法人日本独立作家同盟は2018年10月1日,ニュースメディア「HON.jp News Blog」をリニューアルスタートした。このメディアは,もとは「hon.jp DayWatch」という名称だった。株式会社hon.jp(当時)が運営していた事業の1つで,2004年から電子出版専門でニュースを配信してきた。

   電子出版関連はそれなりに動きが激しく,チャレンジしている企業や個人も多い。筆者にとっては,とても興味深い領域である。「Kindleストア」などが相次いでオープンした2012年ごろには,電子出版専門のニュースメディアはいくつも存在していた。そして筆者もライターとして,あちこち取材へ行ったり,寄稿したりしていた。

   ところが,電子出版市場は急成長し続けているにも関わらず,電子出版専門のニュースメディアは次々と姿を消していった。また,国際電子出版EXPOは2015年を最後に開催されなくなり,東京国際ブックフェアも2016年の開催が最後となった。電子出版関連の情報を入手できる場は,どんどん減っていった。

   そのため「hon.jp DayWatch」は,国内外の電子出版事情を伝える貴重な存在になっていた。ところが2017年10月1日,同社の代表取締役社長・塩崎泰三氏が急逝する。事業の継続が困難となり,すべてのサービスを終了するというお知らせが流れた。

   電子出版の未来にはまだ大きな可能性があるはずなのに,このままこのニュースメディアを消滅させてしまうのは,社会的損失であると考えた。とはいえ,真面目な専門メディアという存在は,営利企業が次々と手を引いている状況下で,恐らく儲かることはないだろうという確信もあった。

   ただ,筆者が2013年9月に始めた日本独立作家同盟という団体も,そこで刊行していたインディーズの電子雑誌『月刊群雛』(2016年8月に休刊)も,初めから儲けるつもりなどなかった。「どうせ儲からないなら,儲けることを目的としなければいい」と,2015年5月には任意団体から特定非営利活動法人に改組しているほどだ。

   他の役員と相談し,儲からなくても社会的意義は高いニュースメディアだけでも継承しよう,ということになった。hon.jpの会社清算を手伝っていた前社長・落合早苗氏にお声がけし,塩崎氏のご遺族に相談,快諾いただいた。こうして,非営利団体が運営するニュースメディアが誕生することとなった。

   日本語の「出版」は紙の印刷物である書物や雑誌のイメージが強いが,英語のpublishはpublicすなわち,情報を「公開する」こと全般を内包している。デジタル化やネットワーク化の進展により,いまや「出版」の定義は拡張・再定義が求められていると言っていい。

   だからリニューアルした「HON.jp News Blog」では,電子出版だけに限らず,出版全般の未来を拓くようなイノベーティブな動きを追いかけていきたいと考えている。いまはまだ海外・国内のストレートニュースが中心だが,もう少し財務基盤を強化できたら,識者のオピニオンや取材記事なども増やしていきたい。

   課題はその財務基盤である。営利目的ではないとはいえ,事業の運営にはどうしてもお金がかかる。非営利のニュースメディアという志に共感・賛同いただける企業や個人からの協賛・寄付・会費などによって運営費を賄っていこうと考えているが,道のりは険しいだろう。

   折しも「HON.jp News Blog」としてリニューアルした直後,75年もの歴史を持つ『出版ニュース』が休刊するという知らせが飛び込んできた。なにか運命的なものを感じる。歴史ある媒体の遺志を継承,と言うのはおこがましいが,1日でも長く続けられるよう頑張っていきたい。

HON.jp News Blog・鷹野凌

Ref:
https://hon.jp/news/

 

 

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