E1052 – 英国の図書館協会,プライバシーに関するガイドラインを公表

カレントアウェアネス-E

No.171 2010.05.19

 

 E1052

英国の図書館協会,プライバシーに関するガイドラインを公表

 

  英国の図書館・情報専門家協会(CILIP)の倫理委員会は,2010年3月に,図書館利用者のプライバシーに関するガイドライン文書“User Privacy in Libraries”をウェブサイトで公開した。情報アクセスの自由と個人のプライバシーとの関係への懸念が高まっているため,図書館職員や情報専門家の理解を深めるために作成された。プライバシー,利用者への周知,データ開示要求への対応,の3つが主な内容で,これらの項目について,留意点やチェック項目とともに,関連する法律や他のガイドライン等の参考資料,良い取組み事例等が紹介されている。

 プライバシーに関する章では,まず,個人データの定義を「氏名,住所,連絡先,職業,年齢,性別,貸出記録,インターネット使用記録,図書館相互貸借の申込情報を始めとする,個人に関するデータ」としている。そして,データ保護法(Data Protection Act 1998)に規定されている個人データの使用に関する原則等が紹介された後,チェック項目として,収集する個人データは必要最小限か,貸出等の記録と個人を関連付ける情報を保持するのは業務に必要な期間のみか,個人データにアクセスする職員は限定されているか,等が挙げられている。

 プライバシー保護に関する具体的な行動としては,誰もが見られる場所に個人データを出すような慣行をやめる,作業に必要な情報のみを画面に表示する,図書館相互貸借の申込情報から利用者の名前を分離する,等が挙げられている。あわせて,資料返却時に利用記録から個人のデータが自動で取り除かれるようにする,サーバーの古いログを削除する,等の技術的な対応策も示されている。ただ,より個人に対応したサービスを行うために記録を活用したいと考える図書館もありうるとして,その場合には,記録を使用することによる影響も十分考慮したうえで,公式に決定を下すことが重要であるとしている。

 その他の論点として,この章では,データの共有,子どものプライバシー,インターネット端末の使用記録,監視カメラ,図書館内での撮影等に言及されている。

 利用者への周知に関する章では,プライバシーや個人データ保護に関する方針を図書館の建物内とウェブサイトに明示するとともに,利用者に対し,自身のデータ管理についての意識を高めるよう働きかけるべきであるとしている。利用者に知らせるべき事項としては,どのようなものが個人データとして扱われるのか,どのくらいの期間保持されるのか,どのように利用されるのか,が挙げられている。また,データ開示要求への対応に関する章では,要求者が一般市民の場合,関連機関の場合,警察等の場合に分けて,基本的な考え方が示されている。

Ref:
http://www.cilip.org.uk/get-involved/advocacy/information-society/Privacy/Pages/privacy-guidelines.aspx
http://www.cilip.org.uk/filedownloadslibrary/policy%20and%20advocacy/privacy_web.pdf