CA942 – 米国の学術図書館におけるCD−ROMの導入状況 / 森田倫子

カレントアウェアネス
No.177 1994.05.20


CA942

米国の学術図書館におけるCD-ROMの導入状況

世界のCD-ROMのタイトル数は,現在約9500以上にのぼり,そのうちの約63%が米国で作成されているという。また米国では,日本や欧州に比して,CD-ROMタイトルのうちデータベース系の占める割合が高いといわれている。CD-ROMで他国にさきがけている米国では,具体的にはどのようなタイトルがどの程度,図書館で使用されているのだろうか。

バッドらは,米国の学術図書館180館を対象に,CD-ROMに関するアンケート調査を行った。彼らは調査効率の面から,CD-ROMを導入可能と予想される集団に絞った調査を計画したため,対象館は研究図書館協会(ARL)と大学研究図書館協会(ACRL)のメンバーで総資料購入費が50万ドル以上の米国内の図書館となった。回収率は62.7%(113館)であった。

アンケート結果によると,これらの図書館では平均19.1タイトルのCD-ROMを購読し,平均14.1台のワークステーションを保有していた。

抄録・索引系のCD-ROMでは,104タイトルが購読されていた。購読が多いのは,Psych Lit(主題:心理学,購読: 96館),ERIC (教育,92館),ABI/Inform (ビジネス・法律等,74館),MLA Bibliography (言語・言語学,62館),GPO's File (米国政府・議会刊行物情報,56館),Medline (医学,56館),Dissertation Abstracts Ondisc (博士・修士論文,46館),Sociofile (社会科学・社会政策,45館)等であった。これらの購読費用は逐次刊行物費で賄われることが最も多く(74館),次いでレファレンス費であった(28館)。支出の平均は年約3万7千ドル,使用回数については回答した館が少ないが1989-90年の間に平均1万6千回であった。

抄録・索引系以外で購入されたCD-ROMは,136タイトルで,共通して保有するものが少ない傾向があった。最多のCompact Disclosure (主題:企業情報,購読: 43館)の他,Books in Print P1us等の刊行物情報,辞書,事典の購読が比較的多かった。

また,バッドらは, CD-ROMの導入の結果,オンラインサービスによる検索件数,検索費ともに減少傾向にあることも示唆している。遡及検索にCD-ROM,最新情報の検索にオンラインという使い分けの結果と解釈できよう。

ところでこのアンケートの後半では,関連する質問として,オンラインデータベースやCD-ROMの導入によって,相当する冊子体の購入を中止したか尋ねている。この質問に回答した107館のうち34館が,オンラインデータベースの導入によって,のべ73誌(タイトル数では44誌)の購読を中止していた。ただし複本の購読中止が多かったという。最も多く中止されたのはChemical Abstracts(7件)であった。CD-ROM 版の導入によって購読が中止されたのは,のべ104誌(タイトル数では50誌)で,最も多く中止されたのはDissertation Abstracts(7件)であった。冊子購読中止に積極的な館とそうでない館があることをうかがわせる結果だが,本誌CA700で紹介したウォール(Wal1)らに比べ,バッドらは,オンラインデータベースやCD-ROMが冊子体の購読に与える影響をより積極的に評価しており,切り替えに積極的な図書館の例を紹介している。

各々の図書館は,館の性格や予算の規模によって,費用対効果の大きいメディアを選ぶために今後も注意が必要かもしれない。

森田倫子(もりたのりこ)

Ref: 世界CD-ROM総覧 Vol.7, 1994
寺村謙一 CD-ROM :流通の現状と問題点 情報管理 35 (11) 933-942, 1993
Budd, John M. and Williams, Karen A. CD-ROMs in academic libraries: a survey. Coll Res Libr 54 (6) 529-535, 1993
Wall, C. et al. Hard copy versus online services: result of a survey . Coll Res Libr 51 (3) 267-276, 1990