CA935 – OPACにおける主題アクセス:英国における調査 / 谷口純子

カレントアウェアネス
No.176 1994.04.20


CA935

OPACにおける主題アクセス−英国における調査−

目録作業の機械化に伴い,多くの図書館では,OPACの導入もしくはその計画が進められている。クロフォード(Crawford)らは,OPACの主題アクセスに注目し,イギリスの大学図書館を対象としてアンケート調査を行った。この調査の目的は,主題アクセスの方針を計画していく上で役立つ情報を集めることにあった。調査対象としたのは大学やポリテクニック(当時)等の高等教育機関の図書館104館で,うち86館から回答があった。

調査した大学図書館では,主題アクセスを可能にするために,大きく分けて2つの方法をとっていた。出版された書誌レコードのデータをそのまま利用する方法と,書誌レコードに自分達で索引語を付与していく方法である。後者で用いられている索引語には,LCSH,MeSHなどの標準シソーラス,自館作成の索引などがある。用いられている索引法は,手作業時代の分類目録の影響を受けている。この傾向は,分類目録で多く見られた索引であるチェーンインデックスが,OPACでも一般的な索引法であることからもうかがえる。約3分の2の図書館は,現在の主題アクセスシステムに満足しておらず,その変更か改良を予定している。改善計画を持つ図書館が注目しているのは,それぞれの図書館独自の方法とLCSHである。

約半数のOPACは,件名標目による検索を提供し,また,90%のOPACは,分類記号検索を提供している。記号による主題検索からアルファベットを用いた主題検索への移行は思ったほど進んでいないようである。検索法としては,OPACに登載された索引語一覧のブラウジングができるものと,以前と同様に,印刷リスト等のツールを調べなければならないものがある。

主題アクセスの問題点として,情報量の増大ということがあげられる。これは,オンライン目録データベースが成長すると,主題検索に適合する書誌レコードも増加するため,利用者の評価すべき情報の量が多くなりすぎるという問題である。オンライン目録の出現により,複数のフィールドを同時に検索することが可能になったが,そのことがこの問題を引き起こす一因になっているのも事実である。統制語を利用して,検索されるべきフィールドを減らすという方法により,この問題はある程度解決できるかもしれない。

上記のことからもわかるように,統制語を活用するという戦略は,主題アクセスの手段として追求する価値がある。用いられる語が厳選され,厳格に典拠コントロールされていれば,関連性の高い検索結果をもたらすことが可能だからである。現在の統制語は不完全なものではあるが,全てのOPACに搭載できる様な典拠シソーラスを開発することは無意味である。というのも,図書館によって索引法や索引語の選択にかなりの多様性が見られるからである。むしろ,現在ある統制語をそれぞれの図書館の必要性に応じて調整していく方がより適切であると言える。具体的な統制語の選択肢として,LCSH,PRECIS,自館作成索引があげられる。用語上の不足を補うために同義語辞書やを見よ参照,をも見よ参照を構築したり,自動的にスペル訂正ができるようにするためのソフトウェアを開発したりすることで,統制語戦略をより充実させていくことが可能であろう。

これまで述べてきた方針以外に,主題アクセスにはコストがかかり,また使われている方法が煩雑で古いものであるという理由から,それをやめてしまうという選択肢もある。主題検索に代わる手段としては,目次,注,巻末索引を利用することにより書誌レコードの質を高めた上でのキーワード検索がある。しかしながら,この方法では,先にもあげた情報量の増大の問題が起こることが予想され,検索能力を高めるためのソフトウェアを開発する必要性が増してくるであろう。いずれにしても,OPACの発達に合わせて主題アクセスをどのように改良していくかということは,これから取り組むべき重要な課題である。

谷口純子(たにぐちじゅんこ)

Ref: Crawford, John C. et al. A survey of subject access to academic library catalogues in Great Britain. J Librariansh Inf Sci 25 (2) 85-93, 1993