CA932 – 電話レファレンス・サービスの実態調査 / 中村規子

カレントアウェアネス
No.175 1994.03.20


CA932

電話レファレンス・サービスの実態調査

テネシー大学ノックスビル校ジョン・C・ホッジズ図書館では,'92年6月に電話レファレンスについての調査を行った。この図書館は学生,教授等,約3万人を利用者とするほか,地域からの寄付を受け,住民にも公開している。レファレンス部門は,レファレンス・デスク4,電話専用デスク1,CD-ROMデスク1,ドキュメント及びマイクロフォーム・カウンター1から成り,専門職17人,補助職6人,学生アルバイト多数がローテーション制により配置されている。

レファレンス用電話は5台設置され,特に電話専用デスクに回線がつながるようにしており,その周囲は仕切られている。しかし電話の多い時間帯には,他の4つのデスクも同様に電話を受けている。電話帳には,図書館への問合せ先としてレファレンス部門の電話番号が記載されているため,開館時間の問合せや職員への通話など,本来のレファレンス以外の電話が多い。

この調査を行う動機となったのは,一つには,このようなレファレンス以外の電話が本来のレファレンス・サービスの妨げになっているという認識であった。さらに,'80年代に行ったサービス・ポイントの拡大や電話の増設等の結果,'90年代に入っても利用者の要求は増大する一方であるのに対し,予算の削減によりサービスの縮少あるいは変容を余儀なくされている,という事情もあった。

調査目的は次のようなものであった。 1. どのくらいの電話をレファレンス部門から本館の適当な番号に回せるのか。2.補助職や学生アルバイトは,専門職の助けなしに,どの程度,レファレンスの質問,およびレファレンス以外の質問に回答できるのか。3. 1日単位あるいは週単位で見たときに,利用のピークはいつ頃なのか。日や時間による変動はどの程度か。

調査は,期間を1週間ずつにして2回行うこととし,最初は学期の半ばに,2回目は次の学期の初めに設定した。調査結果の記録票と調査の手引きは,職員のグループ・ミーティングにより作成した。

調査の結果,2つの調査期間における差異は見られず,合計1,630件の電話があり,その33.5%がレファレンスの質問,残りの66.5%のうち,9.6%が所蔵調査とCD-ROM利用の予約であった。その他の56.9%はレファレンス部門以外で処理できる内容であり,うち35.5%は他部門に転送したものや,利用時間,図書館の方針についての質問であった。

また,専門職がレファレンス質問について同僚の助けを必要としたのは9.6%,レファレンス質問以外の質問については1.1%であった。補助職,学生アルバイトの場合は,レファレンスでは,各々11.1%,28.6%,レファレンス以外では,0.6%,5.7%が助けを必要とした。この結果は,レファレンス以外の質問は本館の受付等に任せることがだいたい可能だということを示している。

利用のピークは週日の午前と午後(夕方前)である。レファレンス質問に限ると,午前については週日は週末の2.5倍,午後で2倍,夕方は1.6倍利用が多い。さらに,待ち行列の理論等を用いて,設置すべき電話の適正台数は2台くらいと算定している。

以上の結果より,次のような提言をしている。1.電話帳に載せる図書館の問合せ先の番号を変えること。レファレンス・デスクなどよりスタッフがじっとしているところの番号にするとよい。レファレンス部門も含め,各部門の内線番号を従来通り記載しておくのは,かまわないだろう。 2.専用電話を除く回線を4本から2本に減らすこと。これまでは,来館利用者は電話に妨げられ,電話利用者は回線がつながる前,そしてつながっだ後も待たされてきた。スタッフは,来館,電話の両方の利用者の応対で混乱している。すなわち,電話に対する必要な人員を欠いたまま,4台の電話を置く必要はない。回線を2本にすると,ピーク時は11%の電話利用者が話し中の音を聞くと算定される。しかし,利用時間等のレファレンス以外の質問については自動的なアナウンスの機器で対応しうるであろう。3.留守番電話のような機械的に応答するシステムを研究すること。4.夕方や週末は専門職があまりいない。そして電話もあまりかかってこないが,こうした時間帯には,よく訓練された学生アルバイトを活用すること。

以上,ホッジズ図書館における電話レファレンスの調査を紹介したが,実は米国においても電話レファレンスについての文献は少なく,図書館学教育のカリキュラムにも無かったようである。日本においては,電話レファレンスに関する文献は殆んど無いといってよいだろう。だがYatesによれば,電話は騒音の源であるにもかかわらず図書館内に市民権を得ている。しかも,電話レファレンスがトラブルの原因になることはしばしばである。今後,調査対象にする必要があろう。

中村規子(なかむらのりこ)

Ref: Allen, Frank R., et al. A survey of telephone inquiries: case study and operational impact in an academic library reference department. RQ 32(3) 382-39l, 1993
Yates,Rochelle. A Librarian's Guide to Telephone Reference Service. Library Professional Publications, 1986. 136p.
Riechel, Rosemarie. Improving Telephone Information and Reference Service in Public Libraries. Library Professional Publications, 1987. 123p.