CA894 – 図書館におけるビデオ資料サービスをめぐって:米国におけるセミナー報告 / 奥山裕之

カレントアウェアネス
No.168 1993.08.20


CA894

図書館におけるビデオ資料サービスをめぐって
−米国におけるセミナー報告−

ビデオをはじめとする視聴覚資料を図書館のサービスに組み込むことの重要性については,日本でも既に多くの議論がなされている。しかし具体的なサービスの方法論は,米国においても必ずしも確立しているとは言えないようだ。1992年6月フロリダ州タラハッシーで,ビデオ資料の収集と利用に関するセミナーが開かれた。このセミナーは,米国図書館協会(ALA)がスタートさせ,その後マッカーサー,ロックフェラー両財団に引き継がれたプロジェクト「図書館員へのビデオ教育」の一環として開催されたものである。プロジェクトではそのパイロット・プログラムとして「ビデオ資料−90年代に向けて」と題する連続セミナーを企画した。今回のセミナーはこの第1回であり,75名が参加した。

コーディネーターであるサリー・メイソンによれば,このセミナーでは現在図書館がビデオに関して直面している諸問題,今後留意すべき点として下記のことが指摘された。

(1)まずビデオ資料購入予算については,レファレンス資料及び利用者が自分で入手不能な特殊なものの購入に充てるべきとする。

(2)選択に当たっては,明確な評価,収集の指針を設けることが必要であり,そのためにはビデオの内容とメディア自体の両方の側面についての専門知識を必要とする。

(3)内容に関して言うと,ゴルフ,料理等のハウツーものや,現代史の記録,演劇,オペラ,バレエ等,ビデオという形態に適したものは特に重点を置いて収集すべきである。

(4)整理については,ビデオ資料も図書館全体の所蔵目録に組み込むべきであり,分類・件名も付与する必要がある。これは,ビデオ資料を図書資料と同様の情報源として位置づけることを意味する。

(5)料金の問題については,かつてはビデオ資料が高価であったため,利用料金を徴収すべき正当な理由があった。しかし,ビデオが安価になり,図書が高価になってきたこと,またビデオ資料の提供を図書館の基本的なサービスと捉えるならば,料金の徴収は不可能であろう。

(6)また,貸出しについては従来一夜貸しであったが,ノンフィクション作品等については貸出し期間の延長が望まれている。予約制,図書館間貸出しも考慮されるべきであろう。

(7)さらに利用については,アメリカ映画協会が個々の作品に指定している年齢制限を図書館が考慮するか否かという問題がある。ALAはこの点について,『図書館権利章典』のなかに「図書館は年齢により差別を行わない」という明確な規定を持っている。また「視聴の自由」声明の採択等,検討すべき課題も多い。

(8)ビデオの利用をめぐる著作権の問題もまた複雑である。ビデオ資料の多くは製作者に上映権があり,使用料を支払うことなしに図書館での上映会に利用できないこと,個人用の視聴ブースでの利用についても著作権上の疑義が出されていることを指摘し,図書館におけるビデオ利用に対する法規定の必要性を述べる。

セミナーでは,ビデオ資料サービスの運営法をめぐる討議のほかに,映画芸術の手法やドキュメンタリーの歴史,またビデオ資料の評価法や収集のためのトゥール等に関する検討も行われた。資料評価については,個々の作品を上映するなど,特に詳しく議論がなされたという。一本一本のビデオ資料について図書館員の眼で細かく評価を加えていくこと,その地道な作業が,望ましいサービスの提供のために,全体的な運営法の確立に劣らず必要とされているのだろう。今後映像文化はますます生活に浸透し,図書館による利用提供への要求が増すことが予想される。それに対する対応は,図書館にとって新たな課題と言えよう。

奥山裕之(おくやまひろゆき)

Ref: Mason, Sally. Video verite. Library Journal 117 (19) 32-35, 1992
図書館におけるビデオ資料サービス 図書館雑誌 42 (10) 623-630, 1989. 10
富江伸治 図書館と映画・テレビ・ビデオテープ イン USA みんなの図書館 (160) 68-75, 1990. 5