CA792 – IEEE/IEE逐次刊行物全文CD-ROMとCD-ROMジューク・ボックス / 西尾初紀

カレントアウェアネス
No.150 1992.02.20


CA792

IEEE/IEE逐次刊行物全文CD-ROMとCD-ROMジューク・ボックス

ニューヨークに本部を置き,世界的規模を誇る電気電子学会(IEEE)と,ロンドンに本部を置く電気技術者協会(IEE)は,共に膨大な量の工学関係文献を刊行してきているが,現在ユニバーシティ・マイクロフイルムズ・インターナショナル(UMI)社との共同で両機関刊行の逐次刊行物の全文画像CD-ROM,IPO(IEEE/IEE Periodicals Ondisc)を開発中で,既に米国内10箇所,英国内2箇所の施設において実地試験の段階に入っている。

両機関の刊行する逐次刊行物(雑誌,会議録,規格を含む)に掲載される文献数は年間3万件に達し,その全文をCD-ROMに収録すると毎月2枚分に相当する。さらに文献検索用として,IEEのINSPECデータベースよりデータ抽出したCD-ROMが毎月1枚提供される。

このCD-ROMを使用するにあたって必要となる環境は,他のCD-ROMの場合と同様,パソコン,CD-ROMドライバ,レーザー・プリンタの三点セットであるが,1988年分より収録を開始したこのCD-ROMは現在までに総数60枚にも達し,これをドライバへ出し入れするだけでも大変な作業となってしまう。そこで今回,CD-ROMジューク・ボックスとも言えるイメージ・プリント・サーバ(IPS)も同時に開発することになった。

このIPSには240枚のCD-ROMが収納でき,IPOのみならずUMI社のBPO(Business Periodicals Ondisc)やGPO(General Periodicals Ondisc)などのCD-ROMにも使用可能で,BPOを用いた試験では5台まで連結可能との結果が得られている。

実地試験の結果は,利用に際して予約制を取らねばならないほど好評で,これによりIEEE/IEE文献の利用率が高まり,特に学生にとってはIEEE/IEE文献に接するよい機会になったと言う。

以上のように,このプランは技術面においては満足のゆく水準にまで達しており,さらなる可能性をも示したと言える。しかし,実際の運用面においては,著作権に関わる打ち出し枚数の制限,トータルなシステムへの適合性など,クリアしなければならない問題がまだ残されている。価格については試験結果を見たうえで決定されるが,利用回数に関係しない一定価格が設定され,印刷体文献の定期購入者には割引がなされる予定である。このCD-ROMの場合もコスト面での評価がその普及度を左右するものと考えられるが,今回開発されたジューク・ボックスの存在は大きな魅力の一つとして影響を与えよう。

西尾初紀(にしおはつき)

Ref: Ashling, J. IEEE/IEE Periodicals Ondisc. NFAIS News. 33 (11) 137, 139, 1991
Flanders, B. Evolution, not revolution marks automation exhibits. Am. Libr. 22 (9) 852-856, 1991