CA789 – イエローページにも著作権はない / 清水隆雄

カレントアウェアネス
No.150 1992.02.20


CA789

イエローページにも著作権はない

CA774で報告したように,アメリカ合衆国連邦最高裁判所は,電話帳のホワイトページ(日本の個人別電話帳に相当する)におけるアルファベット順の名前と住所のリストは,連邦著作権法の保護の対象とならず,その中に掲載されている事実は,罰せられることなくコピーできる,という趣旨の判決を下したが,この程,職業別のディレクトリ(いわゆるイエローページ)についても,ニューヨーク市の第2巡回区連邦控訴裁判所において,同趣旨の判決が下された。

原告はキー出版社で,同社は260の分野見出しの下に約9,000の人名や団体名を掲載した『中国人ビジネスガイド・ディレクトリ』(以後『ビジネスガイド』と言う)を発行している。一方,被告はチャイナタウン現代出版社で,同社は28の分野見出しの下に約2,000の人名や団体名を掲載した『1990年中国系アメリカ人生活ガイド』(以後『生活ガイド』と言う)を発行した。しかし,『生活ガイド』が掲載した2,000の人名や団体名のうち,1,500は『ビジネスガイド』が掲載した260分野のうちの3つの分野からデータをコピーしたものだった。このためキー出版社が著作権を侵害されたとして提訴していた。

これに対し,連邦控訴裁判所は「『ビジネスガイド』からコピーした個人情報自体には著作権はない。……この二つのディレクトリが,その表現及び選択において全く異なるということは,利用者にはすぐわかる」「問題は,二つの出版物に重複があるかとか複写された部分があるかということではなく,両者の選択・編集方針が,実質的に類似しているかどうかというところにある」と判示し,著作権の侵害を否定した。

著作権に関するこうした一連の判決から,次のようなことが推測できる。

第一に,「配列」が行われておらず,事実を単に集積しただけのデータベースの著作権は限定されたものになるだろう。

第二に,データベースの著作権が限定されたものになるからと言って,全てのデータベースを自由にコピーできる訳ではない。たとえ一時使用のためであったとしても,データベースの大部分をコピー又はダウンロードするような行為は正当化されないだろう。

第三に,以前に比べて,データベース作成者に対する著作権法の保護が薄くなって来ているのは確かであろうが,こうした事態は,もし適切な契約が締結され,慣行が実施されるならば,トレードシークレットを保護するという目的で改善することが可能である。

清水隆雄(しみずたかお)

Ref: NFAIS News. 33 (11) 145, 148, 1991; 33 (12) 149-150, 1991
Adv. Technol. Libr. 20 (11) 7, 1991.11