CA740 – オンライン探索におけるコスト比較 / 北川知子

カレントアウェアネス
No.141 1991.05.20


CA740

オンライン探索におけるコスト比較

Data-Star,Dialog,ESA-IRS,STNの4つのシステムでオンライン検索を行う場合,そのコストに違いはあるのだろうか。1990年春、フィンランドにおいて,この4つのシステムで共通に検索できる6つのデータベース−BIOSIS,Chemical Abstracts,COMPENDEX,FSTA,INSPEC,NTIS−を用いての比較研究が行われた。

オンライン検索におけるコストは,通常,検索に要した時間に応じてかかる部分と,結果を出力する段階で表示の形式に応じてかかる部分とからなる。(たとえば,Dialogでは一般的にフォーマット1でDialog受入番号,2で抄録を除く全レコード,3で書誌事項,5で全レコード,6で表題と受入番号,7で書誌事項と抄録,8で表題と索引事項を出力することができ,この出力形式ごとに異った料金が課される。)これに通信回線を使用することからくる通信コストが加わる。フィンランドでは,Dialog,ESA-IRSが自社の通信ネットワークを持つが,Data-Star,STNはDATAPAKというネットワークを利用する。DATAPAKの使用にあたっては,接続時間と伝送される文字の数が問題となる。

1989年,ESA-IRSは従来とは全く違った,新しい料金システムを打ち出した。検索のためにあるファイルを選んだ段階で料金を支払い,以後一定期間はそのファイルに無料で接続できるというものである。従って,接続時間に対するコストはほとんど問題にならない。

そこでまず,これら4つのシステムで検索に要した時間−検索用語を入力してサンプル・レコードをいくつか表示するまで−にかかるコストを比較すると,当然のことながら,接続時間に比例した料金体系の占める部分が少ないESA-IRSが最も経済的である。しかし,5分以内の検索では他のシステムとの差はなくなる。

次に,出力の段階では,フル・レコードで出力を行う場合には,ESA-IRSのコストが最も高く,Data-Starでは低い。

さらに探索時間と出力するレコードの数を組み合わせ,1200baudと2400baudの両方のスピードで比較を行うと,1200baudではESA-IRSは検索時間が長く,しかも出力するレコードの数が少ないとき,CAを除くすべてのデータベースに対して最も経済的である。検索時間が短く,出力するレコードの量が小さい場合には4つのシステムでその経済性に大きな差はない。2400baudでは,ESA-IRSの経済性は認められない。しかし,今回の研究では,どのデータベースに対してもコストの低い経済的なシステムを選び出すことはできなかった。また,同じデータベースの検索でもその検索時間,出力する情報の量に応じてコストは異なってくる。

新しく導入されたESA-IRSの料金システムは,検索における「時間」の拘束からわれわれを自由にしてくれる。時間を気にすることがなければ,ふさわしい結果を得るまで何度も繰り返し検索を続けることができる。検索に慣れない初心者にとっても,ESA-IRSの方式は有効である。あらかじめ,コストを見積もることもできる。従来のシステム,たとえばDialogでは,利用者は接続時間と出力されたレコードの数の両方を考慮しなければならなかった。したがって,検索に要するコストを低くするため,接続時間を出来るだけ短くし,結果を選択的に出力するなどの方法がとられてきた。ESA-IRSではコストを小さくする方法は,検索の技術と戦略を高め,的確な結果を得ることにしかない。不必要なものを極力出力しないことである。

もしこの方式が他のシステムでも導入されるならば,利用者は検索時間に拘束されることなく,オンライン検索をもっと有効に行うことができるようになるだろう。

北川知子(きたがわともこ)

Ref: Eskola, P. Cost comparison of online searching in four hosts. Online Review l4 (5) 303-316, 1990. 10