CA682 – CatTutor―ハイパーテキストによるカタロガー教育― / 森田倫子

カレントアウェアネス
No.132 1990.08.20


CA682

CatTutor−ハイパーテキストによるカタロガー教育−

米国国立農業図書館(National Agricultural Library)は,ピッツバーグ大学,ウィスコンシン大学マジソン校と協力して,カタロガーの教育をコンピュータで行ういわゆるCAIシステムを開発中である(現在約30%完成)。資金面ではアップル社の補助金と図書館振興財団の援助を受けている。

カタロガーの育成には,通常,熟練者による長期間の指導が必要である。そこで,ハイパーテキストによるシミュレーションを通じて,初心者に基礎教育をし,この点の解消を図ったのが,このCatTutor(初期画面に猫の絵が出てくるところを見ると,猫にねずみの取り方を教える家庭教師といった意か)である。将来的には,これで育ったカタロガーがより標準化されたオリジナル・カタロギングを行えるようになり,その結果,書誌ユーティリティにおけるレコードが均質化されることによってコピーカタロギングの比率が高くなることも期待している。

今回のプロトタイプではコンピュータファイルの記述目録作業を対象としている。この分野には熟練したカタロガーが少ないので役立つのではないかということと,文章の量が少ないので取り扱いが容易で試験的開発に適す等の理由からである。

CatTutorは,1)英米目録規則第2版−用語集,2)英米目録規則第2版−記述法,3)USMARC−コンピュータファイル,4)Help,5)Tutorialの5つの部分から成る。1)は英米目録規則の付録D(用語解説)にコンピュータファイルに関する用語を加えたものである。2)は英米目録規則のうち関連する部分,3)はオンラインシステム・コンピュータファイル・フォーマット(USMARCの書誌データ用フォーマットをコンピュータファイルに適するようにOCLCが直したもの)である。5)のTutorialは実際の教育を行う部分である。いずれもカード(アップル社のハイパーテキスト「Hyper Card」の用語で,情報管理の単位)化され,スタック(同種のカードの集合)としてまとめられている。スタックは互いにリンクしている。またTutorialスタック中の例題は,他のスタックの関連部分とリンクしているため,例題を解く際に必要な箇所を呼び出せる。

Tutorialではまずコンピュータファイルという資料タイプと目録レコードを構成するエリアについて教えられる。その後,あるエリアに集中して訓練を進めるか,ひとつのレコードを完成させるやり方で進めるか決定して,実際の教育が始まる。例題として画面に資料の外観や文字が表示され,その目録データをシミュレーションのMARCに入力すると,正しければ次へ進み,間違いならば訂正されてもう一度やるよう指示される。最後に復習テストを受け終了する。

著者らは,今後CatTutorのデモンストレーションとテストを行い,1991年1月には米国国立農業図書館から最終報告が出る予定という。

森田倫子

Ref. Thomas, Sarah E., et. al.: CatTutor for catalogers at the National Agricultural Library. Agricultural Libraries Information Notes 16 (2) 1-5, 1990.