CA680 – 図書館員と情報専門職の社会的評価の確立をめざして / 古屋勝仁

カレントアウェアネス
No.131 1990.07.20


CA680

図書館員と情報専門職の社会的評価の確立をめざして

IFLAでは,1992年のIFLAデリー大会を目標に,図書館員と情報専門職の社会的評価の向上のための計画を進めている。調査チームは,資料の収集および研究を進めているが,その中で以下のような問題点が明らかにされている。

現在,図書館職は,大きな変革の時を迎えている。コンピューターや通信など科学技術の進歩により,図書館の役割が分岐点にさしかかっている中で,このような変革を,技術の変化に自らを適応させる方途が見つからないという危機的状況と考えるか,それとも,技術の進歩は図書館や情報産業を健全に発達させると考えるかは,今後の図書館職の在り方を考える上で重要である。

これまでの図書館職の歴史の中で,能力の高い職員が,専門的な知識を必要としない低い仕事におかれ,低賃金で長時間の労働を余儀なくされる状況もあったが,現在では,取り巻く状況の変化と共に,図書館職はより専門的で柔軟性のある職業,より高度な図書館情報サービスを行うものと期待されている。

図書館職は,その専門化を深める一方で,他の職種との融合も続いている。今後,図書館職が専門職として確立していくためには,つぎのような条件を満たしていかねばならない。それは,専門的訓練が行われること,図書館職に関しての倫理面も含めた規則が,図書館員自身により守られること,図書館職の利益が,共通の組織により守られること,図書館職の組織的な発展について調査されることなどである。

今回の調査において,図書館職の問題で最も難しいと考えられたものは教育と訓練に関する問題である。その中で最も問題とされたことは,理論的な面と実際的な訓練のどちらを重視するかという点である。また,図書館職の資格も,専門職としての社会的な評価を確立する上で必要である。

エレクトロニクスの進歩により情報が容易に利用できるようになると,プライバシー保護の必要性という倫理的な問題が出現する。

以上のような問題は,図書館員の職業上の身分や社会的な評価に強い影響を及ぼす。また,図書館職に対する社会的な評価は,個々の図書館員に対する評価に基づいている。図書館員がその社会的な評価を得るためには,社会が図書館職に求めている事柄を把握すること,職業の学問的な裏づけを確立すること,図書館員としての義務と職分を自覚し,その能力を満たしていくことが不可欠である。

さらに,今後,図書館職を職業として改善していくために,次のような提言がなされている。

  1. 全ての要因を考慮した,専門職の心理学的な再評価
  2. 経営管理手法を用いて指導方法や方針を変更すること
  3. 増大する要求に応える,より広範囲な訓練
  4. 図書館における情報サービスの質の改善
  5. 本提言の試行

古屋勝仁

Ref. Billedi, Ibolya. The status and social prestige of the library and information profession: an international survey. IFLA Journal 15 (4) 324-329, 1989