CA677 – LIPとインフォメーション・ノース―図書館計画の新形態― / 田村俊作

カレントアウェアネス
No.131 1990.07.20


CA677

LIPとインフォメーション・ノース−図書館計画の新形態−

図書館・情報計画(Library and Information Plans: LIPs)は,英国図書館・情報サービス評議会(Library and Information Service Council: LISC。1964年図書館法により設置された大臣の助言機関)が図書館・情報サービスの今後の発展方向に関する報告書において提唱したアイデアである。これは図書館行政体(library authorities)などの機関が策定する五か年計画で,公共図書館をはじめ,大学図書館,専門情報機関など,対象地域の図書館・情報サービス全体の協力を得て,地域内情報資源の活用体制の整備をめざすものである。最初ケンブリッジシャーで予備調査が行われたのち,英国図書館研究開発部(BLR & DD)の助成金を得て,10前後の図書館行政体,行政体の連合体,地域図書館システム(regional library system。公共図書館の地域ブロックごとの協力組織)においてLIPsが策定されようとしている。

計画の細部はもちろん策定機関に委ねられているが,大筋の策定手順はほぼ決っていて,次のようなものである。

  1. 地域の情報資源の現状調査
  2. 1.に基づく,情報資源の充実している点や手薄な点の査定
  3. 計画目標の設定ないし改善点の勧告

すでに計画策定を終えたところが出している最終報告などから判断する限り,計画は出しっ放しという印象で,目標や勧告を実現するための具体的戦略に欠けたり,勧告内容も改善点を並べるばかりで,優先順位をつけていないものも多い,とホワイトは述べている(p.55)。LIPsの結果具体的に実施されたり実施が予定されているものの中で最も多いのは,1.の調査結果を利用して,地域内情報機関のディレクトリを作成したり,クリアリングハウスを設置したりすることである。

LIPsのほとんどがカウンティや都市圏ディストリクトなど,図書館行政体を単位に策定されている中で,イングランド北部地域図書館システム(Northern Regional Library System)が,地域内の3図書館行政体と共同でLIPを策定し,その結果に基づいて,インフォメーション・ノース(Information North)と呼ばれる計画実施のための新しい機関を設置し,システムをこの機関に発展的に統合すると決めたことは,大いに注目される。

インフォメーション・ノースの目的は,地域内の情報サービスを調整し,また計画することにより,地域の経済発展を支援し,地域内の情報セクターにおける技術革新を促進し,さまざまな図書館・情報サービスから得られる金銭的利益を増大させ,サービスのマーケティング活動を強化することである。具体的には,次のような活動が計画されている。

  1. 地域の情報資源と利用者とを結ぶレフェラル・サービス
  2. 地域情報資源のデータベースの作成。データベースから切り出したさまざまなディレクトリの作成
  3. 情報専門家の登録。それに基づく就職の斡旋
  4. 有料のコンサルタント業務
  5. 有料の情報サービス
  6. 住民による自主学習の援助
  7. 新しい情報マーケットの開拓
  8. 情報サービスの利用促進
  9. LIPsの推進
  10. 国の情報計画等との協力
  11. 情報資源に対する一般の認識の深化
  12. 地域内の情報サービスの標準策定

この他に,いくつかの特別プロジェクトが計画されている。また,最近,LIPsの効果をモニターする調査を受託した。

田村俊作

Ref. White, Brenda. Library and Information Plans: a review of literature. J. Librarianship 21 (1) 49-59, 1989.
Brewer, Stuart et al. Information North: Library and Information Plans and the transformation of a Regional Library System. Libr. Ass. Rec. 90 (7) 392-5, 1988. Cablis 15, 3, 1990.