CA661 – 図書館サービスの課金の是非―西ドイツの場合― / 金子縁

カレントアウェアネス
No.128 1990.04.20


CA661

図書館サービスの課金の是非−西ドイツの場合−

図書館サービスに料金を課すことの是非が西ドイツでも問題になっている。西ドイツでは,無料奉仕の原則は法律で定められてはいないものの,そうあるべきとして1973年の図書館計画などでうたわれていた。しかし1988年,ドイツ図書館研究所(DBI)は国内の現状と料金制導入が与えうる影響について研究報告を行い,それに基いて同年10月Kronbergにて関係者の会議がもたれた。以下,ドイツの現状を概観し,DBIの報告書とこの会議での論点を,日本での状況に参考となる点について,概要を紹介する。

現在,地域ごとに図書館ネットワークがあるが,メンバー図書館は通常無料でサービスを受けている。他の州の図書館や国立の機関がこのネットワークを使用する場合は,実費以下ではあるが,料金がかかる。国立機関のデータベースは有料だが,基本料金はない。この他の商用データベースは有料で使用されている。これらのコストの受益者負担の割合は,図書館によって様々だが,学生には優遇措置をとる場合もある。

図書館間貸借はもとより,20ページ以内のコピーも無料である。特に中央主題図書館に依頼したい場合は,有料(1回12マルク)で,コピーは16ページまで無料である。

DBIの報告書には次のような問題点があげられている。データの提供・使用を自動化することはコストアップをもたらすことにはならず,この点は課金の理由とはならない。図書館間のデータ交換に課金すると,管理コストが上がり人員増をもたらす。図書館間サービスに経費全負担を課すと,個々の加盟図書館は当初と異なる料金を負担しなければならなくなる可能性もある。ネットワークによるデータ提供,使用に経費全負担を求めると,ネットワーク加盟の可能性がその図書館の経済状態に左右される。受益者負担については,オンライン検索により利用者にとってのコストは低くなり,図書館にとってのコストは高くなる。利用者がオンライン使用により,以前に費やした労力等を省くことができるなら,それは経費を一部負担させる理由となりうる。これはCD-ROMやOPACを利用者自らが使用するようになれば消滅する。報告書では上記以外に,規制手段としての課金に関しても検討されている。

この後に開催された会議では,図書館間のデータ交換を無料にすることで意見が一致した。図書館間貸借の無料の原則も再確認された。なお,参加者の過半数は,図書館間貸借のオンライン発注に対する課金を廃止すること,利用者に対する情報提供サービスには,高額すぎぬ程度に一率料金を課すことに賛成であった。

金子 縁

Ref. (1): Polden, Andrea. Charges in libraries: a view from the German Democratic Republic. J. Librarianship 21 (4) 270-278, 1989.
(2): Lux, Claudia.Entgelte in Bibliotheken. Bericht uber eine Tagung in Kronberg. Bibliotheksdienst 22 (12) 1209-13, 1988