CA646 – 学術情報センター(NACSIS)の国際共同研究に関する講演会 / 島村隆夫

カレントアウェアネス
No.125 1990.01.20


CA646

< 報告 > 
学術情報センター(NACSIS)の国際共同研究に関する講演会

NACSISが文部省の科学研究費補助金を受けて,NACSIS内外の研究者及び韓国,中国の専門家と協力して進めている国際共同研究「東アジア文字データベースの国際交換に関する実証研究」の第1回公開講演会が昨年12月12日国立国会図書館研修室で行われた。

I.国立中央図書館が推進する国家文献情報体制

李千洙氏(大韓民国国立中央図書館長)

大韓民国国立中央図書館(以下中央図書館という)は,今や韓国内図書館の中心的地位にあり,国際交流の拠点として,情報化時代に対処するための国家基幹組織である。

現在,法令により国家レベルで推進している「教育電算網基本計画」があるが,この計画の主要部分である「図書館網」事業に中央図書館の電算化計画が全面的に受け入れられている。また,文献情報システム化の国策的な意図も,すでに改正された現行の図書館法の中に反映されており,中央図書館の責務に図書館情報協力網の「中央館」としての地位と,国家文献情報体制の「総括」が規定されている。1987年にまとめた「国立中央図書館電算化総合計画」は次のとおりである。

1988年からの10年間を3段階に分け,その第1段階は,中央図書館のトータルシステム(CENTLAS)を完成して,中央図書館のデータベース(KOR-MARC)を構築する。第2段階では国内主要図書館のデータベースの構築と全国図書館のオンラインネットワーク(KOLI-NET)の初期の段階を形成する。第3段階ではこのKOLI-NETを成熟,拡張する。1989年は計画の第2次年度に当るが,第1段階の中央図書館のトータルシステムの開発は順調に進み,全工程の80%を終了している。

II.東アジア文字データの国際交換に向けて

山田尚勇氏(NACSIS研究開発部長)

まず,NACSISの現況にふれ,1986年に設立し,ネットワークシステムがすでに稼働している。国際的なサービスも1989年1月にはNSFを通じて米国との結合が実現し,1990年には英国図書館などへも接続される。

最近は全文データベースが構築され,また,著者自身が電子ファイルによって投稿できる。CD-ROMにはイメージ情報で20〜25万頁入るところから図書館での利用が高まっている。つい最近ではVD-Iの実用化も始まった。1枚に数千頁〜1万頁入る光カードも普及しつつあり,用途によってはCD-ROMと光カードを使い分けるのも一案である。また,将来の情報サービスとして,比較的需要の大きいものはこれらの媒体で,即時性を要求されるものはNACSISなどの通信回線を使用する2分極化方式も考えられる。また,今のうちに国際的な標準を検討しておく必要があるが,表音文字と表記文字を一諸に処理するための標準化は非常にむつかしい。東アジアにおける学術情報は漢字処理なしにはサービスは成り立たず,処理上文字コードの単位が問題になる。

将来の学術情報サービスを予測すると,CD-ROMなどが普及し,電子映像技術が増々進展するだろう。そして,パターン思考が人間に適しているところからイメージ情報の利用が躍進し,図書館は電子図書館と化して,研究者や学生はオフィスや家庭から通信回線を通じて自由自在に情報が利用できるようになるだろう。

今回の講演は,司会の井上如NACSIS研究主幹が冒頭に述べられた「CJKのショックを如何に受け止めるかということかと思う」という言を物語る内容であったといえる。

島村隆夫