CA626 – ソ連の自費出版法の手直し / 兎内勇津流

カレントアウェアネス
No.122 1989.10.20


CA626

ソ連の自費出版法の手直し

昨年,ソ連において自費出版に関する法令が制定されたことは,すでに知られているとおりであるが,今年になってからその手直しが行われた。2月24日付の「図書評論」(Knizhnoe obozrenie)紙は,改正されたその法文を全文掲載すると共に,施行後8ヶ月を経ての自費出版の状況について報じている。

それによると,昨年この制度によって出版された図書は50点を越え,その80%以上は文学作品であった。このうちモスクワで出版されたのは19点に過ぎない。ロシア語以外の各民族語のものは7点だった。図書輸出入公団(Mezhdunarodnaia Knigaメジュクニーガ)は,著者たちに,その一定部数を外国に販売する契約を結ぶことを提案している。

新しい法令は,2月の初めに開催されたソ連国家出版委員会参事会の決定によっている。

旧法と対照してみたところでは,部数の制限が「3000部を越えてはならない」から「通例3000〜5000部を越えるべきではない」と改められた。また,図書だけではなく,新たにパンフレットや画・写真集,絵はがき,楽譜もその対象に加えられた。自費出版を扱うことのできる機関の範囲も広げられ,出版所だけではなく,雑誌編集部なども含められることとなった。旧法にあった新人優先の条項が除かれたことは,自費出版を,緊急避難行為としてではなく,出版ルートの一つとして位置づけ直したことを意味しよう。

ソ連の出版点数から考えれば,年間50点や100点は微々たるものともいえるかもしれない。また,著者印税が認められないなどの事情から,出版形態の主流となることはないであろうが,今後の動向には注目したい。

兎内勇津流

Ref. Knizhnone obozrenie. 1988.4.16.
Knizhnoe obozrenie. 1989.2.24.