CA612 – 逐次刊行物保存に関するIFLA・LC国際シンポジウム / 星健一

カレントアウェアネス
No.120 1989.08.20


CA612

逐次刊行物保存に関するIFLA・LC国際シンポジウム

IFLAおよびLCが共催する“MANAGING THE PRESERVATION OF SERIAL LITERATURE: An International Symposium”が1989年5月24日から26日に開催された。IFLAは傘下の4つの部会の代表を企画委員として派遣した。

本シンポジウムに出席する機会が得られたので,その概要を報告する。

会議の出席者・報告者名簿に掲載された正式登録者132名の他,主題に応じてLCの関係部局の職員が随時傍聴者として参加した。正式登録者を国別,所属機関別にみると次のとおりである。

アメリカ103名,カナダ6名,イギリス4名,フランス,ベルギー,スペイン(順不同)各2名,ブラジル,オーストリア,ノルウェー,南ア共和国,西インド諸島,日本,イスラエル,インド,スウェーデン,オーストラリア,ナイジェリア,ハンガリー,ベネズエラ,西ドイツ(名簿に未記載)(順不同)各1名。

館種別では大学図書館60名,国立図書館30名,研究機関・専門図書館19名,公共図書館9名,中央官庁の図書館4名。出版・製本会社4名,その他・不明6名。

会議の冒頭にウィリアム・J・ウェルシュ(William J.Welsh)LC名誉副館長が「保存に責任を持つのは誰か?」と題する基調演説を行った。氏は自から保存のための国際会議を主宰してきた経験を踏まえて,図書館資料保存のために国内的,国際的協力がいまや不可欠となっている状況を強調し,このシンポジウムでそのための有効な論議が行なわれるよう期待している旨を述べた。

会議には「逐次刊行物業務における保存方針の決定」,「原形態での保存」,「二次形態での保存」,「逐次刊行物保存業務に関する情報の必要性」,「地域的,全国的,国際的な逐次刊行物に関する書誌計画−現在の状況と将来の計画−」,「国際協力による逐次刊行物の保存」の6つのセッションが設けられ,全員参加方式がとられた。各セッションにはそれぞれ3〜10のペーパーが提出された。

筆者にとって特に印象に残ったのは二次形態での保存措置がとられた後の原資料の扱いをめぐる論議であった。いかなる場合にも原資料を併せて保存することが理想であることに異論はないのであるが,現実の問題としてはそれは極めて困難で,本会議でも原則廃棄論,原則保存論,その中間的考えと議論が分かれ今後の課題となった。また,会議の最後に決議案が提出されたが,逐次刊行物の保存に関して先進国が発展途上国に対して行うべき協力・援助をめぐって白熱した論議が交わされ,それに関して新たに一項が加えられたことも印象深かった。更に,早稲田大学による明治期刊行図書のマイクロフィルム化事業を,保存に対する国際協力のすぐれた一例としてコメントされていた。

会議で採択された決議が3日間にわたるシンポジウムを集約的に表現していると思われるのでその全文を仮訳して掲げる。

1989年5月22日〜24日,逐次刊行物の保存運営に関する会議決議

  1. すべての国が逐次刊行物を中核とする文化遺産を保存するよう勧告する。本会議は,逐次刊行物はそれぞれの国によって,またそれぞれの国のために保護される必要があると認めた。
  2. すべての機関は逐次刊行物に関する成文の保存政策を作成すべきである。
  3. 世界のすべての文化遺産の保存を保証するために,先進国は発展途上国に協力すべきであることを本会議は明確に認めた。
  4. 基本的活動に不可欠な,保存に関する情報の国内的・国際的システムの促進,発展に対する要求を,本会議は強力に支援する。
  5. 逐次刊行物の保存政策は,当該機関の収集・蔵書構成・収蔵政策と調和させるべきである。
  6. 種々の段階(収集,整理,保存)の費用問題は長期の予算期間に組み込むべきである。
  7. 保存のための計画,実施細目,予算割当は,逐次刊行物の保存を保証する方策の一つでなければならない。
  8. 逐次刊行物のマイクロ形態事業に対する国内的,国際的協力を支援,拡大するために,本会議は次のとおり勧告する。
    文書マイクロ撮影に関する現行の技術規格をすべての事業に適用すること。
    書誌コントロール,所蔵情報のために引続き規格を改善すること。
    この事業を円滑にするため,各国においてマイクロフォーム資料のマスターの登録を促進すること。
  9. 本会議は,逐次刊行物へのアクセスを助ける抄録,索引の保存の必要性にも留意した。
  10. 本会議は下記の点につき更に考慮が必要であると考える。
    a. 書誌,所蔵情報の詳細な目録
    b. 自己所蔵資料のフィルム化を決定する前に,既存のフィルムを確認する経済的視点
    c. 低費用で大量処理されてきた資料を記録する必要性
    d. 保存教育を支えるトゥール
    e. 国立図書館長会議による逐次刊行物収蔵政策の公表。特に可能な限り長期間収蔵する必要がある国家的印刷物の範囲について。
    f. 将来解散する可能性のある営利,非営利の団体によって作製された,適正な規格のマイクロフォーム・マスターの長期的収蔵

星 健一