CA610 – テレマティークサービス近未来予測―報告書紹介― / 田中久徳

カレントアウェアネス
No.119 1989.07.20


CA610

テレマティークサービス近未来予測−報告書紹介

郵政省の文字・画像情報の電子流通に関する調査研究会は,5〜10年後の近未来におけるテレマティークサービス(公衆回線を通じて文字・画像・音声等の情報をやりとりするサービス)の動向予測を検討し,このほど報告を行なった。

調査テーマは,テレマティーク関連技術の現状と将来予測,テレマティークサービスの利用現状・問題点と将来の新サービスの提案,普及の課題などにわたっている。

1995年での予測される関連技術の状況として,1) 入力面では,文字認識と画像入力が進展して印刷物や手書き漢字入力が可能となるが,音声入力は実用化に到らない,2) 出力面では,高精細・薄型ディスプレイ,カラープリンタが普及,3) 蓄積技術としては16Mビットチップの実用化,低コストICカードの出現など,4) ネットワーク技術では,1.5M bps広帯域ISDNの普及,移動無線技術の開発,5) データベースは,ハイパーメディア型,マルチメディア型,分散データベースが発展,6) ソフトウェア面では,自然言語プログラミングが実用可能となり,パッケージソフトとしては,デスクトップパブリッシング対応のワープロ,ODA(Office Document Architecture)処理可能なDB,CD-ROMなどパッケージDB利用ソフトが普及するものとみられている。

また,技術面では標準化が重要な課題となるが,CCITTによるG4ファクシミリ,テレテックス,電子メール等の標準化が普及,文書記述言語とフォントの標準化も進み,マーク付け言語(SGML),組版指示言語(DSSSL),ページ記述言語(SPDL)が確立する。国内では,和文フォントに対する属性の標準化が期待される。

このような関連技術の進展とコストダウンによって5年後には次のようなテレマティーク端末が実現可能となるものと予想される。個人用としては,1) ノート型複合端末(キャリコン)(携帯用ディスプレイとキーボード分離可能電子ノート),2) 書斎用複合機能端末(デスコン)(パソコン・ワープロ機能+電話,パソコン通信,ファクシミリ機能),家庭用端末としては,3) 簡易端末(ママコン)(キーボードレス,マニュアルレスの簡易インターフェース端末),4) ハイビジョン端末(ホームシアター)(ハイビジョン使用端末) 企業用としては,5) 簡易ワークステーション,6) 高度ワークステーションなどである。

提供されるサービスとしては,1) 携帯用サービス(電子新聞・週刊誌,携帯学習講座,タウン情報・マップガイドサービス,電子掲示版,ハイパー化辞書・百科事典),2) 電子図書館サービス(遠隔検索・遠隔閲覧,マルチメディア図書館,翻訳・朗読などメディア変換サービス),3) 家庭用総合電話サービス(手書き入力付きTV電話,テレビショッピング,ホームバンキング,各種案内サービス,通信教育サービス),4) ハイビジョン情報サービス(高精細テレビショッピング,観光情報サービス,ネットワーク利用ゲームサービス),5) 電子化事務サービス(電子秘書,文字画像内線電話),6) グローバル企業ネットワークサービス(TV会議,技術データベースへのアクセス,経営戦略支援)などが想定されている。

最後に,テレマティークサービス発展のための課題としては,技術的問題(魅力あるソフトの開発や情報セキュリティの確保など),著作権の保護,標準化,テレマティークサービス事業の公的支援,法制度の整備などが指摘されている。

田中久徳

Ref. 郵政省通信政策局 文字・画像情報の電子流通に関する調査研究会 文字・画像情報の電子流通に関する調査報告書 1989. 137p.