CA608 – ソ連の非公開資料群の公開――図書館のグラスノスチ―― / 兎内勇津流

カレントアウェアネス
No.119 1989.07.20


CA608

ソ連の非公開資料群の公開−図書館のグラスノスチ

「図書館員」誌の昨年12月号は,レニングラードにあるソビエト第二の図書館サルティコフ−シチェドリン公共図書館の175周年を特集したが,そのスペツフラン(特別保存)即ち非公開資料群についてその管理責任者自身によるレポートは,興味深いものであった。

ソビエトの図書館には相当数の非公開資料が存在することは,以前から言われてきたことではあるが,その具体的な姿を示す材料をわれわれはほとんど持たなかったと言ってよかろう。

S.ワルラーモワ女史の言うところによると,サルティコフ−シチェドリン図書館のこの資料群は,1930年代から存在する。その対象となったのは「社会主義体制の本当の敵の著作だけではなく,中傷を被ったあらゆる党人,文化人,芸術家の刊行物」であり,それらの人物への言及があるためにそれに入れられたものもある。

1956年の第20回党大会以後,スペツフランは何度か縮小されたが,一方,主として亡命者の著作が加わり続けた。

見直し前には約26万冊あったスペツフランだが,現在,その90%はすでに公開された。選択の基準も変更され,新たにここに加えられる資料は大幅に減少した。とはいうものの,新たに公開された資料の目録作成が終わるまでには,最低5年かかるだろう。また,複本が少ないためマイクロ化すべきものが多い。

最近モスクワでスペツフランの取扱についての講習会をしたが,全国から60館の代表が集まった。しかし,こうした文献を保存してこなかった館も有る。バシキール自治共和国立及び,ゴーリキー,ペルミ,トムスク,イルクーツクの州立図書館のスペツフランは,その量と内容において際立っている。

こうしたいわば禁書を保存し続けてきた図書館が60館もあるとは,なかなかのことではないか。

兎内勇津流

Варламова С. 《Спецхран》 без тайн. Библиотекарь. 1988(12) 24-25.