CA601 – 韓国の図書館統計―公共図書館の絶対数が不足 / 三満照敏

カレントアウェアネス
No.118 1989.06.20


CA601

韓国の図書館統計−公共図書館の絶対数不足

第25回図書館週間(4.12〜4.18)を前に,韓国図書館協会が「韓国図書館統計」(88年4月現在)を発表した。この統計によって,韓国の図書館の現況を見ると以下のようになる。

まず,韓国の図書館総数は6,756館で,この中,大学図書館をはじめとする学校図書館が6,329館(93.6%)を占めている。公共図書館はわずか175館にすぎない。学校図書館が特定人にのみ開放されるのに比べて,公共図書館はすべての人に開放されるという性格に照してみる時,こうした現状の改善が焦眉の課題だとする指摘は多い。蔵書数の面でも,学校図書館が459万9000冊を所蔵しているのに比べて,公共図書館は410万3000冊(国立中央図書館と国会図書館は除く)にすぎない。1館当りの人口数は24万81名,1座席当りの人口数が474名,1人当りの冊数は0.098冊にとどまっている。

一方,他の国の公共図書館の現状を見ると,米国が8456館,4億3948万6000冊,イギリスが2295館,9511万8000冊を保有している(85年,ユネスコ統計)。1館当りの人口数では,米国2万6928人,イギリス2万4377人,日本8万1058人となり,1人当りの蔵書数も,米国1.93冊,イギリス2.34冊,日本0.8冊となっている。

これらの諸国に比べて韓国の図書館が立ち遅れている理由として,制度面での不備が最も強く指摘されている。勿論,87年には図書館法が改正されたし(国立国会図書館調査局刊『外国の立法』28巻1号または日図協刊『現代の図書館』26巻4号を参照),同法の施行令も88年に改正された。その意味では,法制上はある程度の整備が行われたといえる。しかし,同法に規定された“図書館発展委員会”の構成や“図書館振興基金”の拡大が,今日にいたるまで実現していない等の問題点をかかえたままである。米国では大統領の諮問機関として“図書館と情報科学に関する全国委員会”が置かれ,イギリス,フランス,デンマーク等では図書館行政を専門に担当する図書館局が常設されている。この点でも韓国では,文教部(省)の社会教育制度課の一部職員が図書館行政を担当しているのが実情である(日本も同様であるが)。また予算面でも,89年度文教部予算4兆2000億ウォンの中,公共図書館の建設費は55億ウォン(0.0013%)で極めて冷遇されている状態である。こうした実情の中で,韓国の図書館がその本来の機能を果してゆくためには イ)図書館専門職(司書)公務員の待遇改善 ロ)中央官庁に図書館行政の専門担当部局設置 ハ)“図書館振興基金”の助成拡大や“図書館発展委員会”の構成などが最優先して実現されねばならない,という指摘が多く出されている。

三満照敏

Ref. 「韓国経済新聞」〔89.3.31〕ほか