CA1412 – チリにおける大学図書館の協力体制 / 藤代亜紀

カレントアウェアネス
No.264 2001.08.20


CA1412

チリにおける大学図書館の協力体制

1993年,チリ国内の研究者・大学生・専門家に最新情報を提供する民間団体「アレルタ・アル・コノスィミエント(Alerta al Conocimiento:スペイン語で「カレントアウェアネス」というような意味)」が創設された。チリの9大学が設置した,逐次刊行物に関するリソースシェアリングのためのコンソーシアムである。9人の職員で構成されるコンソーシアムのセンターが全体を管理するほか,理事会や図書館長委員会が設けられている。提携9大学にある計32の図書館が次のようなサービスを行う窓口となっている。

逐次刊行物共同収集サービスは,世界で出版されている雑誌の共同収集や予約購読契約に関する交渉を共同で行うサービスである。提携大学に加え,37の大学図書館と国内の団体や企業によって,チリでは前例のない4,000誌を超える購読が行われている(購読費は年間約400万米ドルに上る)。前述の「センター」によって支払いスケジュールが管理されており,1998年には通常の購読費の5%(約18.4万米ドル)を節約できた。また,購読の4割以上を占める米国の出版物の受け取りに要する日数を90日から1か月以内へと減らす工夫がなされ,このサービスの参加機関数は17(1995年)から46(1998年)に増えた。アレルタ・アル・コノスィミエントは,逐次刊行物購読者としてはチリ国内市場の9割を占め,ラテンアメリカにおける四大購読者のうちの一つに数えられるようになった。

また,アンドリュー・メロン財団からの支援を得て,雑誌目録に収録されている雑誌(1998年の時点では3,551誌)の書誌情報を検索できる「バーチャル逐次刊行物資料室」がインターネット上に開設されている。協定を結んでいる大学(1994年の時点では提携の6大学とコンソーシアムに属さない3大学)のスタッフは,そこから1996年以降に出版されたスペイン語雑誌や,2000年以降に出版された英語雑誌等の目次情報データをダウンロードしたり,希望する雑誌の目次情報を電子メールやファクス,郵便により無料で入手したりすることもできる。1995〜98年の目次情報配布数は約23万件で,1998年には利用者1人につき48件の目次情報(平均1.8ページ)が配布されている。

さらに,協定に参加している大学の教員は目録収録雑誌のうち2,300誌の中から10誌まで選んで登録し,その雑誌の論文や抄録をファクスや郵便によって優待料金で入手できる(論文は2.80〜4.70米ドル,抄録は0.98米ドル)。工学部や医学部,教育学部の教員の登録が多く,登録者数は増加を続けている。提携9大学間での論文・抄録配布総数は約1万7千件で,協定に参加している6大学間の配布数がそのうちの8割を占める。請求された論文・抄録の約7割は各図書館によって2日以内に発送され,約9割が4日以内に利用者へ届けられている。

なお,目次情報の配布サービスに含まれていない雑誌の論文は「遡及論文サービス」によって利用者へ提供されている。このサービスの利用は1997〜98年の間に4割も増えている。

将来的には,利用者の関心分野の雑誌の最新書誌情報を配布することや,コンソーシアムを通しても利用できない雑誌の目次情報をサービス対象にすることなどを目標にしている。

以上のような有効なサービスを展開している一方で,近年の国際金融危機の波を受けて大学の購買力が低下したり,出版社が年間予約購読誌の欠号分の料金返済を渋ったりするため,共同収集への参加を取り止めてしまう図書館も出ている。こうした問題を克服し,このコンソーシアムがさらに発展していくことを期待したい。

藤代 亜紀(ふじしろあき)

Ref: Arenas, M. L. et al. Four years of academic library co-operation in Chile “Alerta al Conocimiento”. Interlend Doc Supply 28 (4) 163-168, 2000
Alerta al Conocimiento [http://www.alerta.cl] (last access 2001. 3. 27)