CA1391 - 図書館コレクションとしてのポスター / 網野礼子

カレントアウェアネス
No.261 2001.05.20


CA1391

図書館コレクションとしてのポスター

約31,198枚。国立国会図書館特別資料課が所蔵する2000(平成12)年9月現在のポスターの数量である。残念ながらほとんど未整理状態である。これまで,整理と保管をどうすればよいかを検討するために関連機関へ見学等に出かけた報告書などが残されている。今のところ,保管のために3種類の大きさに分け,50枚ずつ袋詰めしているが,大きな資料を扱うのは,時間とスペースを使うというのが実感である。特に主題を決めて収集しているわけではないので,整理の方法も難しい。仮に整理ができたとして,図書や雑誌のようにポスターを見たいというリクエストがあったら資料を傷めず効率的に提供できるか。難問である。

世間はどうしているのかと見わたせば,インターネット上では,いくつかの大学や民間会社が,ポスターの「電子展示会」を開催している。大きさや色合いを正確にとらえられないという点では本物の作品を目にすることとは比較にならないが,いつでも気の向くまま手軽に見られる。提供する側は資料の傷みを気にしないですむ。誰にでも見てもらえるということは,宣伝効果も計りしれない。なかには実際に購入できるものもある。商売がなりたつところからデジタル化が始まっているということだろう。国立国会図書館ではデジタル化は貴重書を中心に進められており,現在ポスターはデジタル化の対象資料にはなっていない。

そもそも視覚に訴えるものを客観的に記述することは難しい。目録がとりにくいというのも,これまでポスターの整理が進んでこなかった一因であるが,電子化は「整理」「利用」「保存」を同時進行させることができる有効な一つの方法である。

さて,英国では,1996年にポスターコレクションに関する全国実態調査が行われた。調査報告には,調査に協力した23館のコレクションの内容と利用案内が添付されている。それによると,古くは1600年代のものからあるが,現在まで収集を続けているのは,23館のうち半分ぐらいである。分野は芸術,商業,政治をはじめさまざまであるが,英国図書館が分野として「シェイクスピア生誕300年祭(1864年)」と「競馬」を挙げているのは,お国柄が出ていて興味深い。気になる利用方法については,調査研究目的に限定しているところが圧倒的で,利用にあたって予約を必要としている場合が多く,展示会への貸出に応じているところがいくつかあるといった程度である。

調査にあたったウォーウィック大学のアスキュー(Liz Askew)氏らは,「どこがどんなポスターコレクションを持っているか確認したかった。同時にこの調査がポスターコレクションの重要さを認識してもらうきっかけになればいい」と述べている。また,「調査が発展してヨーロッパのポスターコレクションが広くデジタル化され,提供されることを期待する」と結んでいる。

短命ではあるが,多くの人が同時に目にすることがある媒体。大部な文章より作成者のメッセージが伝わってくることもある。報告書の中の言葉を引用すれば「ポスターというものは,世界中の2万箇所に掲示され,120万人もの人々が同時に目にすることがある」。調査者の願いが実を結ぶことを願っている。

最後に国立国会図書館のコレクションから特色のあるポスターを紹介したい。

岡田ポスターコレクション:1982(昭和57)年に国立国会図書館が寄贈を受けたもの。東京大学史料編纂所教授岡田章雄氏の収集による,54種,175枚。約8割が日華事変当時の公債募集に関するもので,昭和財政政策史の一面を物語る貴重な資料である。利用は,複製物(白黒の手札版写真)による。オリジナルは2000年の「議会開設110年記念議会政治展示会」に出品された。

蘆原英了コレクション:286枚(重複を含む)。シャンソン,バレエ,サーカス等に関するもので,木下サーカスのポスターが散見される。バレエコンクールのポスターのように,関係者のサインが入ったものもある。中には211×104cmのような大型サイズも。現在,同コレクション中の絵画,パンフレットとともに整理中。国立国会図書館特別資料室の一角には,展示コーナーを設けており,蘆原英了氏の自筆原稿のほか,絵画や楽譜の一部を紹介しているが,ポスターも2点入っている。

網野 礼子(あみのれいこ)

Ref: Askew, L. et al. Poster collections in the UK. Collect Build 19 (4) 151―162, 2000