CA1347 – 歓楽書香列車行動図書館−台湾大地震被災地における移動図書館サービス− / 安藤一博

カレントアウェアネス
No.254 2000.10.20


CA1347

歓楽書香列車 行動図書館
―台湾大地震被災地における移動図書館サービス―

1999年9月21日,台湾中部でマグニチュード7.7の大地震が発生した。死者および行方不明者は2,506人(1999年12月30日時点),全壊した建物は5万戸を超えた。特に震源に近い台湾中部に被害が集中した。

これらの地域では,図書館も大きな被害を受けた。国立台中図書館によると,公立図書館は,1999年11月2日時点で,ほとんどがすでに開館しているか,業務の再開のめどがついていた。しかし,開館のめどが立たないと答えた図書館も,調査が行われた時点で台湾中部に15館以上存在していた。一方,学校図書館は,1999年10月中頃までに大部分がなんとか業務を再開した。しかし,再開のめどの立たない学校図書館も,調査時点で台中県,南投県に50校以上存在した。

以上のように,震災によって図書館サービスを享受できる地域とできない地域が生まれている。この空白を埋めるために,1999年12月19日から移動図書館「歓楽書香列車 行動図書館」(以下「行動図書館」)による図書館業務が開始された。被害の集中した台湾中部の学校や仮設住宅地区をサービスの対象としている。

「行動図書館」は,台湾政府の行政院文化建設委員会が中心になって推進している活動である。しかし,政府だけではなく,10以上の出版社など,民間の企業や団体も資金や労力を提供している。出版社の寄贈による2万冊と出版社から低価格で購入した2万冊,合わせて4万冊の,児童書から実用書まで幅広い分野の図書や雑誌が集められた。また,10個の大型貨物コンテナが図書館用に改装され,中には照明はもちろん,冷暖房が装備され,図書館としての役割を果たすための設備を備えている。

利用者は,身分証を提示し,貸出証をつくることで,図書の貸出サービスを受けることができる。「行動図書館」の活動期間は1年であるが,より多くの人が利用できるように,3か月ごとにサービスを提供する場所を変更している。

サービスは「定点方式」と「巡回専用車方式」の2つの方式を併用することにより,提供される。定点方式とは,学校を「定点」として,その学校の生徒や近くの住民に図書館サービスを提供するものである。改装したコンテナを学校の校庭に運び,3か月間,その学校で図書館業務を行う。管理は,その学校の先生と生徒によって共同で行われる。「定点」は3か月ごとに変更されていく。一方,巡回専用車方式とは,仮設住宅地区など,学校以外の場所を対象としている。自動車にコンテナを接続し,決められた時間に予定された場所を巡回する。文化建設委員会のホームページに掲載された巡回予定によると,巡回専用車は1週間に1回出動している。2つのコースを1週間ごとに交代で回っているので,一地域の住民が利用できるのは,2週間に1回のペースとなる。定点方式と同じく,巡回専用車方式も,3か月ごとに巡回コースを変更している。

地震などの災害により,図書館サービスの提供が不可能になることがある。そのような状況になったとき,移動図書館が業務再開までのサービスの空白を埋める役割を果せることを示してくれる一例である。

安藤 一博(あんどうかずひろ)

Ref:聯合報 1999.11.24;1999.12.17
中央日報(台北) 1999.11.24;1999.12.17
行政院文化建設委員会 [http://www.cyberstage.com.tw/activities/921/] (last access 2000.7.31)
國立臺中圖書館 921地震各災國中,國小區圖館災情調査彙整表[http://public1.ptl.edu.tw/quake/library3.htm] (last access 2000.7.31)
921地震各災區公共圖書館災情調査彙整表[http://public1.ptl.edu.tw/quake/library1.htm] (last access 2000.7.31)