CA1341 – コソボの図書館,復興への道 / 軽部運代

カレントアウェアネス
No.252 2000.08.20


CA1341

コソボの図書館,復興への道

旧ユーゴスラビアの内戦により,図書館も甚大な被害を受けた。ボスニア・ヘルツェゴビナの図書館に対するユネスコや各国の財政援助,書誌作成等の支援活動は以前紹介されたとおりであるが(CA1200参照),最近,セルビア共和国コソボ自治州においても復興に向けた取組みが始まっている。

欧州協議会および欧州委員会は,コソボの文化遺産の損害と破壊に関して詳しい調査をするため,ハーバード大学図書館員のリードルマイヤー(Andras Riedlmayer)を長とする専門家グループを派遣した。1999年10月の3週間にわたる調査の結果,援助が必要であるとの報告を行った。

同年12月に出された中間報告を受け,IFLAは直ちにプリスチナ大学(University of Pristina)教授でコソボ国立・大学図書館(National and University Library of Kosovo:以下「国立図書館」)貴重書部長のクラスニキ(Nehat Krasniqi)の活動を支援するための基金を確保した。彼は失職していた1990年代,古書や手稿を求めて地方をしらみつぶしに探し回り,そこで見つけた200冊以上が,国立図書館の貴重書コレクションに加えられている。「小さな町や田舎の家々に所蔵されている古い手稿を緊急に収集したい。コソボでは500以上の村が焼かれ,人々は村を捨てプリスチナヘ移動し,その人口はすでに戦前の倍になっている。戦火と民族浄化を生き延びた手稿は打ち捨てられたままなのだ」と彼は言う。IFLAからの基金は彼のもとへ直接届けられた。

さらに,ユネスコ,欧州協議会およびIFLAは共同で,2000年2月25日から3月7日にかけて,コソボ図書館使節団(Kosova Libraries Mission)を派遣し,図書館の被害に関するより詳細な調査を実施した。その報告書によれば,コソボの図書館は荒廃しており,資料も危機に瀕している。国立図書館の貴重なコレクションは,1990年代の間にほとんど消失・破損してしまった。都市部にあった大学図書館や専門図書館は建物こそ残ったものの,コレクションは爆撃などで破壊されたまま放置されている。公共図書館および学校図書館は多くが焼失しており,被害の少ないところでも,蔵書は持ち去られているか破損しており,残っているものは古く,住民のニーズに合わない。また,実務や教育から長期間遠ざかっていた職員に対する再教育も必要である。住民の多数を占めるアルバニア人の図書館員と,セルビア人居住地内の図書館員の間には,協力関係が全く存在しない。

以上のような状況を打破して図書館サービスの建て直しをはかるため,使節団は”Kosova Library Project 2000+”と称する3〜4年間の行動計画を策定した。この計画では,法律・行政体制,移動図書館サービス,図書館施設・設備,IT,専門教育・研修などの11のプログラムが提示されている。計画の具体的な展開については,国内外の人・組織からなる暫定的な機構「コソボ図書館コンソーシアム(Kosova Library Consortium)」を設立し,そこで行うことが提案されている。

ボスニア・ヘルツェゴビナにおける活動は順調に続いているようだ。コソボの図書館からの明るいニュースが待ちたい。

軽部 運代(かるべかずよ)

Ref: Missions to Kosovo.IFLA J 26(2) 147-148, 2000
Frederiksen, Carsten et alLibraries in Kosova/Kosovo: Kosova Library Mission:IFLA/FAIFE report / April 2000.
Faife.dk
(last access 2000.7.19)
From rubble to reconstruction:rebuilding Bosnian libraries.Am Libr 31(2) 22,2000