CA1267 – LCの2000年度予算案 / 山田邦夫

カレントアウェアネス
No.240 1999.08.20


CA1267

LCの2000年度予算案

米国議会図書館(LC)のビリントン館長は2月10日,連邦議会下院立法府歳出予算小委員会に対し,本年10月1日から始まる2000年度の予算案趣旨説明書を提出した。

周知のとおり,米国議会における次年度予算案の審議の開始は日本とほぼ同じ時期だが,可決に至るまでには半年以上もかかる。そして実際,予算審議の過程で修正が加えられていく。

今回,LCは2000年度予算として3億,8370万ドルを要求した。これは前年度予算額に比べ約2,000万ドル(5.5%)の増額である。また,目録販売,著作権登録料等からの収入金充当分として3,310万ドルが計上されている。

LCの月報LC Information Bulletin 3月号には,議会に提出された要求趣旨説明が掲載されている。米国議会における予算要求説明とは,かくも具体的な内容にまで立ち入るのかと思わせるものがあり,以下に概要を紹介するとおり,予算という側面から見たLCの諸政策を窺い知ることができる。ビリントン館長が強調するのは,「電子的未来への道筋を描く」使命と戦略計画を支える予算ということである。

1.業務の情報システム化関係

  1. 統合図書館システム(ILS):収集,整理,閲覧・貸出という基本的な業務を効率的に運用するため,97年より開発してきたシステム。2000年度稼動開始に伴い120万ドル減額。
  2. 電子資料情報計画:新規で96万ドル。電子出版物の収集・提供体制の整備に着手(3年計画)。
  3. 世界法律情報ネットワーク(GLIN)(CA1059参照):対象国拡大のため40万ドル増額。
  4. 著作権局電子登録・記録・納本システム(CORDS)(CA1133参照):デジタル資料の申請への対応等で14万ドル増額(収入金充当)。
  5. システム機器等の整備:通信機器の増強,サーバの拡充,システムのセキュリティ対策等のため325万ドルの増額。2000年問題については本年9月末までに解決する。

2.後継者プログラム

司書,調査部門ともに,数年後までには相当数のスタッフが退職する見込みなので,新しい人材の雇用と昇進機会の提供のため,157万ドルを計上。

3.職員,資料,施設のセキュリティ対策

98年より実施のセキュリティ・プランの継続。全閲覧室における利用者登録実施に47万ドル。蔵書表示とタグ付けの対象拡大に48万ドルの増額。また,現在は写本室と大閲覧室にセキュリティ・モニターを外注で導入しているが,これを貴重書・特別資料室等5閲覧室にも導入すべく37万ドルの増額。

4.その他のLC予算要求

法律図書館の諸業務に75万ドル,著作権局には作業工程の見直しと職員増強のため収入金から69万ドル,視覚・身体障害者サービスのために121万ドルの増額。LC所蔵のフィルム等の保存・利用のためヴァージニア州カルペパーに準備中の国立視聴覚資料保存センター(CA1184参照)に29万ドル。また,マディソン・ビルにおける備品・機器更新の5カ年計画に着手すべく,153万ドル,等。

5.施設費

LCの予算とは別だが,議院営繕局(AOC)予算にLC要求分として624万ドルが計上された。うち400万ドルは,メリーランド州フォート・ミードに書庫を増設するためのものである。

予算案説明は,2000年度に行う創立200周年行事(CA1190参照)のアピールで締めくくられている。一連の行事はほとんど民間からの資金でまかなわれる。

LCの予算を語る上で外せないのは,このように自ら行う資金集めである。ビリントン現館長が就任した87年以来その活動は積極的で,最近は寄付金等が年間2,000万ドル規模にのぼる。本年度もAT&T財団が350万ドルの寄付を行っている。これらが電子図書館事業(NDL)(CA1001,CA1163参照)などLCの諸活動の有力な財源となっている。

山田 邦夫(やまだくにお)

Ref: Library presents budget to House: spending plans for FY2000 detailed. LC Inf Bull 58 (3) 52―61, 1999