CA1201 – 著作権使用料を伴う複写サービス(国立国会図書館) / 神繁司

カレントアウェアネス
No.227 1998.07.20


CA1201

著作権使用料を伴う複写サービス(国立国会図書館)

1997年12月1日から,当館の電子メディア室では,洋雑誌本文及び索引等のCD-ROM版からのプリントアウト(複写)サービスを開始した(注)。このうち,本文のプリントアウトサービスでは,申込者は,1枚(原文の1ページ相当)あたり15円の著作権使用料等を複写料金に加えて支払うことになる。

制度上,当館における従来の複写サービスとこのサービスはどのように異なるのか。

第1は,著作権法第31条(以下「法31条」)によらないで,CD-ROM使用許諾契約に基づき,著作権者の許諾済みの資料の複写物を提供する点である。第2は,著作権使用料等に相当する金額を利用者に転嫁する点である。

まず,第1の点について。

著作権が存在する著作物については,当館は,これまで法31条により,同条の要件のもとで,著作権者の許諾を得ることや著作権使用料の支払を行うことなく複写物を提供してきた。今回のCD-ROM利用は,その複写を含めての利用について,ユーザーとしての当館が著作権使用料に相当する金額をCD-ROMの供給者であるUMI社に支払うという契約がなされている。法31条は,図書館等に権利制限を伴う複写の権限を付与したにとどまり,著作権に関する許諾契約が締結されている場合には,当該契約が法律関係を律する。今回の場合,著作権者からの使用許諾は,当館ではなく第三者であるUMI社が得ているが,さらに進んで,多数の著作権者からの委託を受けて複写等の著作物利用の許諾と著作権使用料の徴収を行う地位にある団体との間で契約を結ぶことは,例えば英国図書館文献供給センター(BLDSC)と英国のコピーライト・ライセンシング・エージェンシー(CLA)との間の協定(CA1116参照)のように既に実例がある。

第2の点について。

著作権使用料等に相当する金額は,複写サービスの利用者が複写枚数に応じて負担することとした。

図書館サービスのコストを利用者に転嫁できるか,できるとしてどの程度かは,米国で公共図書館がオンラインサービスを有料で提供しはじめたときに大いに議論され,現在わが国でも議論されている問題であり,法律的・財政的な観点,公共図書館の役割等論点は多方面にわたる。当館に関しては,国立国会図書館法は,目録類の有償頒布に関する規定(第21条第3号)をおくが,その他のサービスについては触れていないことから,政策判断に委ねられている(もちろん,法規の根拠なしにできるものではない)と解される。

複写サービスの有償提供について,異論はないであろう(複写物の所有権移転があるためであろうか)。著作権使用料は,法31条外の複写に直接必要な経費で,受益との関連が直接的であるため,利用者に転嫁することとしたものである。

なお,今回のサービスでは一律の使用料相当金額の設定となっているが,著作物により著作権使用料が異なる場合に個別の金額を負担させることが,煩瑣ではあるが公平であり,前述のBLDSCでは,現にこのような方法を採用している。

神 繁司(じんしげじ)

(注) 1998年6月末現在,当館で提供している洋雑誌等CD-ROMは以下の通り。本稿で紹介した著作権使用料が加算されるものは,*印を付した資料の本文部分である。[ ]内は順に対象分野,収録範囲,書誌・索引情報集録誌数。

雑誌記事索引(国立国会図書館作成)[総合・一般,1985-1998.2,約5,500誌]
*ABI/INFORM[経済・経営・ビジネス,1992-1998.4,約1,000誌,本文約350誌]
Arts & Humanities Citation Index[芸術・人文科学引用文献索引,1975-1997.12,約8,100誌]
Dissertation Abstracts[北米及び欧州等の大学等の博士論文抄録,1861-1997.9]
*Periodical Abstracts[総合・一般,1992-1998.4,約1,600誌,本文約360誌]
Science Citation Index[科学技術引用文献索引,1991-1997.12,約3,500誌]
Social Sciences Citation Index[社会科学引用文献索引,1991-1997.12,約7,400誌]
*Social Sciences Index[社会科学一般,1989-1998.4,約350誌,本文約220誌]