CA1023 – 米国議会図書館:1994年のトピックスから / 小島和規

カレントアウェアネス
No.193 1995.09.20


CA1023

米国議会図書館−1994年のトピックスから−

米国議会図書館(LC)にとって,1994年という年は,2年続いての職員の削減と厳しい財政上の制約という状況にも関わらず,多くの主要な分野において,大きな進展をみた年だったといえる。例えば,先端技術を用いて議会と国民に対するサービスを向上させたこと,新たに200万件もの未整理資料を処理したこと,新しい第2書庫の建設用地を,メリーランド州フォートミードとすることで陸軍省と合意したこと,黒人雇用者による集団代理訴訟(クック訴訟)で仮の和解に達したこと,新副館長の任命(CA962参照),会員制の隔月刊誌の創刊(CA963参照),ナショナル・ディジタル・ライブラリーに向けて,1,300万ドルの資金でスタートを切ったこと(CA1001参照),などがあげられる。

以下,これらのうちの幾つかを紹介する。

サービスの提供方法への新技術の導入

LCでは,サービスの提供に新しいテクノロジーを導入してきている。

議会に対しては,議会調査局(CRS)が短報のファックス配信サービスを始めた。議会の事務部局や各種委員会から,CRSのファックス・サーバーに直接電話し,電話機のキーを使って短報の番号を入力すれば,手元のファックスにコピーが送られてくるようになった。

また,議員とそのスタッフに利用は限定されているが,LC MARVEL(CA936参照)上でCRSの報告書とイシュー・ブリーフとをフルテキストで提供している。

国民に向けては,ワールド・ワイド・ウェブ(WWW)サービスを開始した。これによって,インターネットからオンラインでアクセス出来る情報が格段に増加した。すなわち,LCについての情報や書誌情報以外にも,アメリカン・メモリー・コレクション(CA851参照),著作権台帳,国内外の法律の要旨などにアクセスでき,また,そこで提供されている資料も文字だけでなく音声や映像資料を含んでいる。

一般利用者向けの検索システムであるACCESSも拡充され,大衆誌の記事索引や逐次刊行物の目録情報といったファイルが加わり,図書や逐次刊行物をオンラインで請求できる機能などが追加された。

94年の10月,LCは電子図書館見学者センターを開設した。そこでは,14台のワークステーションを使ってACCESS,WWW,LCMARVEL,アメリカン・メモリー,コピーライト・イメージング・システム(画像を用いた著作権登録・検索システム),身体障害者を支援するための特別機能等を展示していく。今のところ予約制で対象者も議員やLC職員等に限っているが,95年には一般にも公開する予定である。

以上の他に現在試行段階にあるものに,著作権管理のための電子的システム(ECMS),CIPを電子的に行う計画,世界規模での法律情報ネットワーク(GLIN)計画などがある。

ECMSは,著作権登録の自動化,作品の電子的保管,著作権者等の検索や複写許可の申請や認可,著作権の所有権の異動の記録等のためのシステムであり,高等研究計画局(ARPA)と著作権局が提唱し,CNRI(全国的な電子情報基盤整備の推進を目的とする非営利団体)の協力のもと計画を進めている。94年度には,ソフトウェアプログラムの開発が始まった。

電子的なCIP計画は,インターネットを使っての,目録作成に必要なデータの転送の実用性を実証するプロジェクトであり,94年度中には,6つの出版社(そのうちの5つは大学出版)が実験に参加することとなった。

GLINは,法律情報の国際的ネットワークを形成し,各国が自国の法律情報や,英語の抄録等をLCの法律図書館のデータベースに入力していこうというものである。現在,参加国は,メキシコとブラジルの2か国であるが,11の国が関心を示しているという。

滞貨の解消

LCは,94会計年度において新たに200万件の未整理の滞貨資料を解消した。これにより,計画当初からみて合計で36%滞貨が減ったことになる。コピー・カタロギングの利用の拡大,全国規模での作業の分業化の推進等で生産性が向上し,処理時間の短縮したことが大きい。

この解消計画は1995-2000年においても続けられる予定である。(CA849参照)

蔵書の管理

*第2書庫の建設

滞貨解消計画と関連して第2書庫の建設をLCではすすめている。これは,今ある整理済の資料を保存し,また,将来の(21世紀の初頭までの)蔵書の増加に備えるものである。建設地には陸軍省で所有するメリーランド州フォードミードの100エーカーの土地をあてることに,LC,陸軍省,首都建設局(AOC)の3者間で合意した。

LCとAOCは第1次書庫建設計画を策定中である。LC内では資料の移送にむけての全館的な検討がなされ,検索システムの開発にも着手した。96会計年度初めには移送資料を選定,蔵書管理システムに登録され,同年度末の移送に備えることになる。

*蔵書の安全管理

LCでは,蔵書の安全管理の強化計画を継続して実施し,電子式書庫内立ち入り管理システムの導入を進め,閲覧室の出口に盗難防止用ゲートを設置する準備を始めている。

*蔵書構築

LCは,コンピュータによる新収集システムACQUIREを本格的に稼働させ,効率的な資料の収集を一層推し進めている。

小島和規(こじまかずのり)

Ref: The gains and pains of 1994. LC Inf Bull 54 (1) 5-12, 1995
Annual Report of the Librarian of Congress 1993. Library of Congress, 1994. 83p