CA1017 – 利用者ガイダンスに関する2つのレポートを刊行:調査研究プロジェクト活動報告(9) / 田村俊作

カレントアウェアネス
No.191 1995.07.20


CA1017

利用者ガイダンスに関する2つのレポートを刊行
−調査研究プロジェクト活動報告9)−

国立国会図書館図書館研究所の調査研究プロジェクト「不特定多数を対象とする図書館における利用者ガイダンスのあり方」では,『利用者ガイダンスの実施状況−公共図書館10館の実態調査−』(ILIS Report no. 7)と『図書館における資料探索行動−浦安市立中央図書館での実験−』(ILIS Report no. 8)を刊行した。

前者は,都内近郊の公共図書館10館(浦安市立中央図書館,東京都立中央図書館,世田谷区立中央図書館,浦和市立図書館,朝霞市立図書館,杉並区立中央図書館,日野市立中央図書館,藤沢市総合市民図書館,厚木市立中央図書館,町田市立中央図書館)において利用者ガイダンスの実態を調査し,報告をとりまとめたものである。この報告書では,各館のPRや館外サインなど来館を促す方策,館内サイン,書架とその配列などのファシリティ,利用案内などの配布物,人的援助の5点を中心に,利用を援助する仕組みと組織,書架配列と検索システムの2つの視点から分析を行った。調査結果からは各館それぞれの工夫ぶりが窺われて興味深かった。また,そのような工夫が効果をあげている点も明らかになった。一方,さまざまな仕組みを相互に組合せることや,変化に対応して維持してゆくための館内組織の点では,問題があるように思われた。なお,本調査の補足として,ブックセンターリブロにも聞き取り調査を行った。

後者は,浦安市立中央図書館において利用者の資料探索行動を調査し,報告をとりまとめたものである。この報告書では,利用者の資料探索行動を調べることによって,利用者がどのように資料を探し,その際に図書館側のどのような仕掛けを利用しているのか,また,どんな困難に直面しているのかについて理解を深め,利用者の行動に即した利用者ガイダンスの方策を考えてみた。大学生を調査対象に,課題を与えて資料探索を実際に行ってもらった。調査結果からは,書架配列,特に別置の効果と問題点,案内図や書架見出し,配布物,OPAC等のあり方などについて,貴重な知見を得ることができた。

田村俊作(たむらしゅんさく)