CA1014 – 北京図書館の電子閲覧室 / 岡村志嘉子

カレントアウェアネス
No.191 1995.07.20


CA1014

北京図書館の電子閲覧室

北京図書館に今年,電子閲覧室が開設された。リソースシェアリングを進めるために電子情報システムを構築する,という1989年以来の懸案が実現の運びとなったものである。

現在,電子閲覧室には,コンピュータ端末20数台とCD-ROM用端末80台が設置されている。購入費用はすべて,北京図書館が厳しい条件の中で自ら工面した。電話回線を通じて国内はもとより国際的なリソースシェアリングを実現する構想も固まっている。ところが,ここに至って,北京図書館はこれ以上の費用捻出ができず,計画が頓挫してしまった。現段階では,北京にあるいくつかの機関でオンラインによるアクセスができる以外は,直接北京図書館に出向いて検索するしか方法がない。

出版物の激増,出版形態の多様化,価格の上昇,書庫スペースの逼迫,あるいは利用者の要求の高度化など,図書館を取り巻く環境は変化している。図書館が生き残っていくには,情報発信や情報ネットワークという機能を重視することが不可欠だ。北京図書館の電子閲覧室は,中国に全国図書館情報ネットワークを構築しリソースシェアリングを推進するための第一歩だった。

「問題は資金なのです。国は資料購入費や図書館運営費を保証するために,毎年かなりの予算を計上してくれています。しかし,北京図書館は公共サービス機関として,コンピュータ化を進めなければならないところが多く,国家予算のみに頼るのは現実的ではありません。もし北京図書館の全国情報ネットワーク構築事業に資金を提供して下さる企業があれば嬉しいのですが。これは国全体の利益になることですから」と,北京図書館の孫承鑑副館長は語る。

現在北京図書館は40タイトル300枚のCD-ROMを所蔵している。生物学,医学,コンピュータサイエンス,商業貿易,社会科学など分野は広く,情報量も1億件近い。

孫副館長によれば,中国の55の政府機関も,それぞれ独自にデータベースを導入しているが,全く相互利用ができない状態で,大きな無駄が生じている。情報ネットワーク構築は国の政策の柱のひとつである。その際,全国に3,000以上ある図書館を媒介としたネットワークというものを有効に活用すべきではないか,と図書館関係者は考えている。

岡村志嘉子(おかむらしがこ)

Ref: 光明日報 1995. 6. 2